第43話「勇者ヴァンハ・テラ。衝撃の出会い。」
皆様
いつもありがとうございます。ベシです。
勇者。
色々背負ってますね~
では。
蒸気の中に、人影があった。
目を閉じ、微動だにしない。ただ、静かに——ロウリュを続けている。
百年間。
ひとりで。
この場所で。
俺は一歩、踏み出した。
「勇者。封印を解きに来ました」
声が、白い蒸気に吸い込まれていく。
返答はなかった。
しかし——
(封印を解く。その後、どうなるかわかるのか。この世界を守ることが——できるのか)
心の中に、直接響いた。
圧力のある声だった。百年分の重さを持った、問いかけだった。
俺は、少し考えた。
脳外科医として、俺は常に「確率」で物事を考えてきた。
手術の成功率。
患者の生存率。
リスクとベネフィット。
だが今、俺の手元に数字はなかった。
「……守れるかどうかは、わからない」
正直に言った。
「でも、やるしかない。それだけです」
沈黙。
蒸気が揺れた。
ゆっくりと——人影が目を開いた。
百年ぶりに開かれた目は、静かで、深く、どこか懐かしい色をしていた。
「……また、転生者が来たか」
今度は、声だった。
低く、落ち着いた声。しかしその奥に、確かな温度があった。
俺は息を呑んだ。
「あなたも——転生者ですか」
「そうだ」
人影がゆっくりと立ち上がった。
長い黒髪。細い体。しかし、
その立ち姿には——侍の、気骨があった。
「友枝国和。明治初期に生きた人間だ。
この世界では、ヴァンハ・テラと呼ばれている」
「……明治」
俺より、はるか昔の転生者だ。
「お前は?」
「三杉整。脳外科医をしていました。この世界では——トントと呼ばれています」
ヴァンハ・テラは、かすかに目を細めた。
「医者か。それは——皮肉だな」
「皮肉?」
「後で話す」
——————————————————————————
ヴァンハ・テラは、石のベンチに腰を下ろした。
一行も、思わずその場に座り込んだ。蒸気が体を包み、じわりと体の芯が温まっていく。
「百年前——この世界に、ストレッシが現れた」
静かな語り口だった。
「最初は小さな不快だった。
眠れない者が増え、怒りが収まらない者が増え、やがて
——生きる気力を失う者が出始めた」
「ストレスの病だ」
俺は呟いた。
「そうだ。ストレッシの力は、人の心の隙間に入り込む。そして、不快を増幅させる」
テルメが静かに聞いていた。珍しく、関西弁も出なかった。
「その頃——東の方から、治療薬が流通し始めた」
ヴァンハ・テラの声が、わずかに変わった。
「最初は効いた。飲むと楽になる。眠れる。穏やかになる。しかし——」
「依存する」
俺の口から、自然に言葉が出た。
ヴァンハ・テラが、俺を見た。
「医者だな、確かに」
「その薬——成分は何でしたか」
「詳しくは分からん、ディカ・デリという国でとれる植物
が原材料のはずだが、飲み続けると、薬なしでは生きられなくなる。
そして、ストレッシの魔力が強まるにつれ、薬の需要も増えていった」
俺の頭の中で、何かが繋がり始めた。
「その薬を作っていたのは——」
「東の商人だ。当時から、老獪な男だった。名は知らん。しかし」
ヴァンハ・テラは立ち上がり、壁の方を向いた。
「この施設を作ったのは——私ではない」
俺は、はっとした。
見取り図の右端に刻まれたサイン。
楽:K・S
「……まさか」
「ここはもともと、転生者が作った癒しの施設だ。
サウナの力で、ストレッシの不快を浄化しようとした。
しかし——その転生者は、途中で姿を消した」
「なぜ???」
「ストレッシと、手を組んだからだ」
蒸気の中に、沈黙が落ちた。
俺の中で、全てが繋がった。
K・S。
カワセ・ソウ。
東の商業国、ズマルア国。
治療薬に偽装した麻薬。
ストレッシが発するストレスで病む人々を顧客にして——莫大な利益を得ている男。
「……同じ転生者が」
俺は、拳を握った。
同じ日本人として転生した人間が。同じ医療の知識を持った人間が。
人を救うためではなく——人を依存させるために、その知識を使っていた。
「許せない」
気づいたら、声に出ていた。
テルメが、静かに俺の横に立った。
「トントはん」
「ストレッシを倒すだけじゃ、足りない」
俺は顔を上げた。
「背後にいる者まで——断たなければ、この世界は変わらない」
ヴァンハ・テラが、俺を見つめた。
長い沈黙の後——かすかに、頷いた。
「……その決意、確かに受け取った」
そして。
「だが」
ヴァンハ・テラが、静かに立ち上がった。
「決意だけでは、封印は解けない」
一行全員が、息を呑んだ。
「お前たちに——試練を与える」
ロウリュストーブの炎が、ゆらりと揺れた。
「整う覚悟が——あるか」
——————————————————————————
つづく
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
登場人物が増えてきたので、一覧表をどこかで投稿いたします。
皆様にお願いがあります。
ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!
皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!
夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




