第35話「ノースランドへ。イースシップと氷のイルカ」
皆様
ベシさんです。
ノースランド。寒い国で、トトノイます。
では
第35話「ノースランドへ——イースシップと氷のイルカ」
馬車が——北へ向かっていた。
窓の外。
針葉樹の森が——白くなっていく。
空気が——変わっていく。
冷たい。
とても綺麗な冷たさだ。
タイカ先生が——右腕を静かに押さえていた。
「先生——腕、大丈夫っすか?」
ザウルが言った。
「そうじゃないんですよね〜。まだ少し——痛むんですよ。わかります?」
「今回の旅——来てよかったんっすか」
タイカが——静かに言った。
「来なければならない理由が——あるんですよね〜」
「なんですか」
「騎士団長として——見ておきたいものがある」
「……誰かを騎士団に入れたいんっすか」
「まだ言えないんですよね〜。
でも——この旅で、
北の国に、向かうことになりそうなんですよね〜。
わかります?」
ザウルが小声でトントに言った。
「……タイカ先生、なんか企んでるっすよ」
「……聞こえてますよ〜」
「それにしても、ノースランドにサウナってあるんかいな???」
「……行けばわかる。かもな。」
「楽しみやわ!!」
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トントは静かに目を閉じた。
……トゥリ王国を出る前夜。
トゥリボリが、俺を呼び止めた。
松明の灯りの中で——
トゥリボリが静かに言った。
「トント——一つ頼みがある」
「なんだ」
「レンとキックルを——
ノースランドに連れて行ってほしい。
キックルには——まだ覚醒していない力がある。
あの方だけが——それを引き出せる」
「……あの方? なぜお前が知っている?」
「炎と氷は——対だ。
昔から、互いを知っている。
父王が若い頃——
アールブ女王と共に、ストレッシと戦った ことがある」
トゥリボリが——封蝋で封じた手紙を差し出した。
「これを女王に渡してくれ。
トゥリ王家の紋章——炎の印だ。
これがあれば、女王は必ず会ってくれる」
……炎と氷は対だ。
サウナと水風呂のように。
この世界は——対になっているものが多い。
「トントさん、また考え込んでますよ」
ザウルが言った。
「……少し、な」
「何を考えてたっすか」
「……サウナと水風呂のことだ」
「そればっかですね。」
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ラップーランドからノースランドへと繋がる
浜辺に辿り着いた時——
見たことのない服装をした
どこか高貴な感じの騎士が近づいてきた。
白い装束。
銀色に輝く薄手の鎧を身につけている。
銀色の髪。
目が——氷のように澄んでいた。
「レン姫——アールブ女王からの招待です。ノースランドへ、お越しください」
「招待された!ナイスタイミングやん!」
「女王直々のご招待ですよ、すごい!」
ザウルが言った。
トントが——封蝋の手紙を取り出した。
「……トゥリボリの手紙がよひよせたかな。」
使者に手紙を渡した。
使者が——封蝋を確認した。
「これは。 ……トゥリ王家の紋章。承りました」
「浜辺へ——どうぞ」
タイカ先生が——静かに右腕を押さえながら言った。
「そうじゃないんですよね〜。
炎の紋章が——氷の国への扉を開ける。面白いですよね〜。わかります?」
「先生——何か、意味ありげですよね。」
ザウルが言った。
「……全てに意味がある。かもですよね〜」
---
浜辺に辿り着いた瞬間——全員が、息を飲んだ。
白かった。
海が——全部、白かった。
空と海の境目が——
わからないくらい、白かった。
「……ノースオーシャンだ」トントが静かに言った。
「冬は全面凍結する。
氷の厚さは——
場所によって二メートルを超える」
「あかん——」テルメが呟いた。
「スケール感が壊れてるわ、
で、どうやってこの海渡るん?」
「……そうだな」
トントは騎士の方を見た。
その時。
沖合の——巨大な氷河が、動き始めた。
ゆっくりと。
そして——確実に。
まるで生き物のように——形が変わっていく。
「……あれ」リリが指差した。
氷河が——船の形に、なっていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴコ。
氷がぶるかる音が響きわたる。
まるで氷が生き物の様に。擦れ合いながら
形を創り出している。
マストが聳え立つ。
薄い氷の帆が生まれ、風を孕む
甲板が生まれた。
舳先が——北を向いた。
「……氷河が、船になってるやん!!」
テルメが叫んだ。
「マジっすか。初めて見たっすよ」
ザウルが言った。
トントが静かに言った。
「氷の結晶構造が——魔力によって再編成されている。
水分子の配列が変わる。
密度が変わらないまま——形だけが変わっていく。
氷の記憶を——書き換えているんだ」
テルメ「なんて??全くわからんかったわ」
ザウル「氷に記憶ってあるんすか?」
トント「……要するに、氷が生きている」
テルメ「ホンマかいな!!
でも——めちゃくちゃロマンあるやん!!」
タイカ先生が——静かに言った。
「そうじゃないんですよね〜。
氷というのは——魔力を宿すと、
全く別のものになるんですよ。
わかります?」
「先生——なんか意味深です!」ザウルが言った。
「……団長です〜」
タイカはザウルに向かってウインクした。
—————
イースシップが——岸に静かに近づいてきた。
透明に近い青白い船体が——朝の光を受けて、輝いていた。
全員で乗り込む。
氷の甲板。
氷の手すり。
でも——不思議と、冷たくなかった。
タイカ先生が——右腕で手すりを触った。
「……氷とブラックシリカが混ざっている。氷の温もりを封じ込めていますね。」
エーアイが静かに言った。
「……さすが先生。私も同じことを感じました」
「ふふ。いい目をしていますよ、エーアイさん」
タイカが——エーアイを見た。
騎士団に入れたい人間。
この旅で、はっきりする。
今は——まだ言えない。
---
イースシップが動き出した。
風もないのに。
——北へ。
その瞬間。
氷の海から——何かが現れた。
一つ。二つ。三つ。
無数に——現れた。
透明な体。
青白く光っている。
イルカだった。
氷のイルカだ。
「……きれい」
エーアイが静かに呟いた。
光を透過して——七色に輝いている。
まるで——海の中に、星が生まれたようだった。
「かわいい!!」
リリが叫んだ。
船を囲んで——泳ぎ始めた。
まるで——守るように。
祝福するように。
キックルが——手を伸ばした。
イルカが——キックルに寄り添った。
「……キックル、知り合いなのか?」
レンが聞いた。
「……いいえ。
会ったことはないけど——
仲間ですよ皆んな」
「どんな海も——繋がっています」
レンが——静かに、北の海を見た。
「……ラハティの湖も、この海に繋がっているのね」
「そうです、レン様」
タイカが——静かに海を見た。
「……キックルが反応している。
この海には——何かがあるんですよね〜」
「何だと思いますか、先生」
「……それは、ここに来て初めてわかることですよ〜。わかります?」
テルメが叫んだ。「ウチも触りたい!!」
テルメが手を伸ばした瞬間
イルカが——一斉に逃げた。
「……なんでやねん!!」
ザウル「テルメさん、嫌われてますよ」
テルメ「なんで??
ウチ、そんなに怖い??」
ザウル「……エネルギーが、強すぎるんじゃないっすかね」
タイカが静かに言った。
「わかります〜?
テルメさんのエネルギーは——規格外なんですよ。」
「褒めてはんの?!」
「……褒めてますよ〜」
テルメは満更でもない顔だ。
---
北へ。北へ。
氷のイルカが——ずっと、船を守りながら泳いでいた。
空の色が—変わってきた。
より青く。より深く。
「……あれ」
リリが空を見上げた。
緑の光が——揺れていた。
「オーロラだ」
「ウチ、初めて見たわ!」
テルメが叫んだ。
「そして—ここのは一味違うっすよ」
ザウルが言った。
「何がちゃうの??」
「……もっと、近い感じがするっすよ。
手が届きそうっすよ」
全員が——空を見上げた。
緑と青と紫が——混ざり合っていた。
まるで——空が、溶けているようだ。
思わず手を伸ばしてしまう。
トントが静かに言った。
「太陽から放出された
荷電粒子が——地球の磁場に引き込まれて、大気中の酸素や窒素と衝突する。
その時に——光を発する」
テルメ「 かでん って、電子レンジとかか??ホンマに全くわからへん」
ザウル「俺もっすよ」
トント「……要するに、太陽と地球が——空でキスしている」
全員が——止まった。
ザウルが言った。
「……トントさん、今——詩人でしたよ」
「……言い過ぎた」
テルメが——泣いていた。
「なんで泣いてるんっすか」
「空でキスって。
そんなん、初めて聞いたわ!!」
タイカ先生が——オーロラを見上げた。
右腕を押さえながら。
でも——その目が、柔らかかった。
「……ウッコ・アッカが——
空から見ている気がしますよね〜」
全員が——静かになった。
「先生」トントが言った。
「腕——本当に大丈夫ですか」
「そうじゃないんですよね〜。
痛みというのは——生きている証拠なんですよ。わかります?」
「……先生らしいですね」
ザウルが言った。
---
氷の港が——見えてきた。
巨大な——城壁だった。
全部、氷でできていた。
その城壁の中央に——巨大な門があった。
その両脇に——トロールが立っていた。
氷山を背負うほどの巨体。
微動だにしない。
「えっ、えっ。デカい!!あれ、なに??!!」
テルメが叫んだ。
「通天閣ぐらいの高さあるやろ!!」
トントが静かに言った。
「……通天閣か。串カツだな」
ザウルが言った。「トントさん、今——関係ないこと考えてましたよね」
「……少しだけ」
「串カツ食べたいっすか」
「……たまに、思い出す」
タイカ先生が言った。
「そうじゃないんですよね〜。
あのサイズは——医学的に見ても、規格外なんですよ。わかります?」
ーーーーーーー
その時。
イースシップが——港に近づいた。
トロールが——動いた。
巨大な手で。重そうな扉を——押した。ゆっくりと。確実に。
地響きのような音が——港全体に響いた。
ゴゴゴゴゴ——。
巨大な氷の扉が——開いていく。
その向こうから——白い光が差し込んできた。
「……認められた者だけが入れる門か」
トントが静かに言った。
「トゥリボリさんの手紙が——効いたんっすよ」
ザウルが言った。
「……そういうことだな」
テルメが——固まっていた。
「……扉、でかすぎひん??」
「……そうだな」
「何が入ってくるんや、あの扉から」
「……この船より大きな船もあるんだろう」
「あかん、スケール感が壊れてるわ!!」
タイカ先生が——静かに言った。
「そうじゃないんですよね〜。
スケールが大きいほど——中身も大きいんですよ。わかります?」
「先生——めちゃくちゃ当たり前のこと言ってますね!」
ザウルが言った。
「……そうなんですよね〜」
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氷の城が——目の前にあった。
全部、氷でできていた。
でも——光を透過して、七色に輝いている。
まるで——宝石の中を歩いているようだった。
タイカ先生が——城を見渡した。
「……ブラックシリカの構造材。
計算された光の屈折。これを設計した者は——相当な魔法使いですよ」
エーアイが静かに言った。
「……先生、私も同じことを感じました」
「ふふ。やっぱり——いい目をしている」
テルメが——一歩踏み出した。
「……床、滑らへんよな??」
ヨチヨチ歩く。
レン「……あなた、本当に魔法使いなのよね?」
テルメ「エーアイちゃん!!ええ靴作ってんか!!」
エーアイがスノーブーツを生成した。
滑り止めがついている。
トント「自分の魔法でなんとかできないのか」
テルメ「魔法と靴は別やねん!!」
ザウル「どういう理屈っすか」
タイカ先生が——笑っていた。声を出さずに。
でも——確かに、笑っていた。
「先生——笑ってますよ」
ザウルが言った。
「……たまには、笑いますよ〜。わかります?」
---
アイスランディックホースが——城の奥から現れた。
長い銀色の鬣が——氷の光の中で、揺れていた。
「お静かに!!これより——アールブ女王がお見えになります!!」
コツコツ。
氷の上を歩く音が——響いた。
玉座の奥から——女王が現れた。
美しかった。
言葉にならないほど——美しかった。
銀色の髪が——氷の光を受けて、輝いていた。
静かな瞳。
落ち着き払った仕草。
歳の頃は——不明だった。
……現世なら。
絶対に話しかけられないやつだ。
「ようこそ——ノースランドへ」
「皆様を歓迎いたします」
「そして——レン姫」
レンが前に出た。
「お招きいただきありがとうございます。でも——なぜ、私に?」
女王が——微笑んだ。
「あなたに——力を授けたいのです」
全員が——息を飲んだ。
テルメが——デカい声で言った。
「女王はん!!あんた——今、いくつやの!!」
トントが思わず言った。
「勝手に話すな!!」
「だって気になるやん!!」
女王が——くすっと笑った。
「……私はエルフです。100年以上——生きております」
「えーーーーっ!!」テルメが叫んだ。
ザウルが言った。
「テルメさん、まだ驚きますか」
「驚くわ!!当然やろ!!」
女王が——会場を見渡した。
その目が——タイカ先生で、止まった。
「……あなたは」
タイカが——静かに頭を下げた。
「国王直属魔法騎士団長——タイカ・パラスです。
腕の療養を兼ねて同行しております」
女王が——右腕を見た。
「……その腕は」
「始祖の精霊・ペトラの代償です。もう少し——時間がかかります」
「そうですか」
女王が——静かに言った。
「この国に——氷の治療師がいます。
明日、紹介しましょう」
タイカが——少し驚いた。
「……ありがとうございます」
「騎士団長が——万全でなければ、皆さんも困るでしょう」
テルメが小声で言った。 「女王はん——ええ人やな」
ザウルが言った。
「テルメさん、聞こえてますよ」
「聞こえててええねん!!」
女王が——テルメを冷たく一瞥した。
「今日は疲れているでしょう。明日——ゆっくり話しましょう」
---
夜。全員が——城の部屋に通された。
机も氷。
ソファも氷。
ベッドも氷。
でも——黒色の布で作られた敷物や、シーツ類で氷の冷たさは遮断されている。
「この布……すごい機能性だ」トントが言った。
「シリカの断熱効果——
完璧に計算されています」
エーアイが静かに言った。
タイカ先生が——右腕を静かに撫でた。
「……この国の——氷の技術は本物ですよ。明日の治療師も、信頼できると思います」
「先生——早く治るといいっすね」
ザウルが言った。
「そうじゃないんですよね〜。
痛みがあるうちは——まだやることがあるんですよ。わかります?」
テルメが——ベッドに倒れ込んだ。
「トント!!ここ——サウナとかないんかな!!私、汗かきたいわ!!」
「……寝ろ」
「寒いと余計に思わへん??あの立髪長いウマに聞いてこよかな……」
ぶつぶつ言いながら——すぐ寝た。
「……話しながら寝たな」トントが言った。
「凄いっすよ、ある意味」ザウルが言った。
タイカ先生が——静かに笑った。
「……テルメさんは——特別ですよね〜。わかります?」
---
レンが——テラスに出た。
空に——オーロラが広がっていた。
緑と青と紫が——城の氷を染めていた。
キックルが肩の上で静かに光った。
「……レン様、ワクワクしてますよね」
「……そうね」
「私も——です」
その時——タイカ先生が、テラスに出てきた。
右腕を押さえながら。
二人で——しばらく、オーロラを見ていた。
「先生——この旅に来た本当の理由を——教えてもらえますか」
タイカが——静かに言った。
「この旅で——騎士団に迎えたい人間を、見極めたい」
「……誰ですか」
「まだ言えないんですよね〜。でも——レン姫は、もう気づいているんじゃないですか。わかります?」
レンが——静かに、空を見た。
「……私ではないですよね」
「それも——まだ言えないんですよね〜」
キックルが——青白く輝いた。
明日、何があるのか。
オーロラが——北の空を、静かに染めていった。
---
第35話 了
◆次話予告
翌朝——女王が謁見の間にいなかった。氷の山で——女王がトロールとバトルしていた。「これが——遊び?!」レンとキックルが——ユールと向き合う。そして——キックルの中に眠っていた力が、目を覚ます。
後編へ続きます!
そして。
皆様にお願いがあります。
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皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!
夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




