第31話「ウッコ・アッカ覚醒 後編。楽しむを愉しむ」
ベシさんです!
いつもありがとうございます。
第2クール、最終話です。
では。
「立て!!次で——決着をつける!!」
トントの声が——絶望空間を切り裂いた。
全員が——立ち上がった。
膝が震えていた。
でも——立った。
トゥスカが——その光景を、静かに見ていた。
「……なぜ、立てるんですか」
「サウナに入った後と——同じ感覚だからだ」
「え?」
トントは静かに言った。
「限界まで熱さに耐えて——水風呂に飛び込む。
全身の力が抜ける。
でも——その後に、立ち上がれる。整いとは——限界の先にある」
「……詭弁だ」
「詭弁じゃない」
「これが——サウナの哲学だ」
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「トゥスカ」
トントは——トゥスカを正面から見た。
「一つ、聞かせてくれ」
「……何ですか」
「百年前——なぜ、サウナを破壊した」
トゥスカが——止まった。
長い沈黙。
「……怖かったから」
「何が」
「整った人間は——不快に屈しない」
トントの医学的解説が——静かに始まった。
「コルチゾールが下がる。扁桃体が落ち着く。
怒りも、悲しみも——整いの後では、薄れていく。
俺たちが入り込む隙が——なくなる。だから——消した」
テルメ「全くわからんかったわ」
ザウル「俺もっすよ」
トント「……要するに、整った人間はストレッシに操れない。だから恐れた」
テルメ「最初からそれ言うて!!でも——サウナ、そんなに強かったんや!!」
「強い」トントは静かに言った。
「人類が何万年も使ってきた——最古の療法だ」
「でも——消えなかった」
「……そうだ」トゥスカは言った。
「消せなかった」
「何度破壊しても——また、生まれた」
「なぜだと思う」
「……人間が——諦めなかったから」
「そうだ」
「サウナは——人間が生きる限り、消えない。これが証明された」
「トゥスカ」
トントは——一歩、前に出た。
「お前は——何百年も、一人で人類の苦しみを背負ってきた」
「……そうだ」
「疲れただろ」
トゥスカが——止まった。
「……何?」
「疲れただろ、と言った」
長い沈黙。
トゥスカの体が——微かに、震えた。
「……俺は」
「苦しみの化身だ。疲れるはずがない」
「嘘だ」
「……え?」
「お前は今——震えている」
「俺も——前世で、一人で全部抱えた」
「手術室で。患者の命を。家族の絶望を。全部——一人で背負った」
「……それで?」
「倒れた」
沈黙が——学院に広がった。
「サウナの更衣室で——一人で倒れた。誰も来なかった」
「……同じだ」
トゥスカの声が——初めて、揺れた。
「俺と——同じだ」
「そうだ」
トントは静かに言った。
「一人で背負うには——重すぎる荷物がある」
「だから——仲間がいる」
「……俺に、仲間など——」
「今ここにいる全員が——お前の苦しみを受け取る」
「なぜだ!!」
トゥスカが——叫んだ。
「なぜ——俺の苦しみを受け取る!!
俺はお前たちの敵だ!!
サウナを破壊した!!
人類を絶望させようとした!!」
「なぜ——」
「サウナに入れば——みんな平等だ」
トントは静かに言った。
「敵も。味方も。苦しみも。喜びも——サウナの中では、全部同じだ」
トゥスカの目から——何かが溢れた。
黒い涙だった。
人類の苦しみが——凝縮された、黒い涙だった。
「……俺は」
「何百年も——苦しかった」
「人類の苦しみを背負いながら——俺自身も、苦しかった」
「誰も——気づかなかった」
「今、気づいた」
「……遅い」
トゥスカが——苦笑いした。
「何百年も——かかりすぎだ」
「サウナに入るのが——遅すぎたんだ」
トゥスカが——初めて、本当に笑った。
「……サウナか」
「一度——入ってみるか」
「それで、私を倒せるのならな。」
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テルメが叫んだ。
「全員!!夢を——熱波に載せろ!!」
「……それは俺のセリフだ」トントが言った。
「ウチが言いたかってん!!」
「……好きにしろ」
ザウルが言った。
「二人とも——かっこいいっすよ」
「「うるさい」」
二人同時に言った。
五精霊が——一斉に輝いた。
ファビラの炎。
キックルの水。
シルヴァの木。
ザウルの風。
ペトラの石。
ヴァロが——五精霊の力を、最大限に増幅した。
弱っていたヴァロが——この瞬間だけ。
全力で輝いた。
「ヴァロ!!」テルメが叫んだ。
「無理しなくていいんやで!!」
ヴァロが——テルメを見て、ぽわっと光った。
……大丈夫です。テルメさん。
これが——私の仕事ですから。
テルメが——また、泣いた。
「うるさい!!泣くなって言うな!!」
「何も言ってないっすよ」ザウルが言った。
「顔が言うてんねん!!」
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タイカが——ウッコ・アッカを呼んだ。
ウッコ・アッカが——学院の上空に、輝いた。
天と地の神が——降りてきた。
トントがサウル・ハカロを振った。
キックルの聖水が——ペトラのストーンに叩きつけられた。
ジュワァァァァァァッ!!
蒸気が——爆発的に広がった。
タイカとトントが——同時に、タオルとラドルを振った。
「ブォォォォォン——!!!!」
熱波が——渦を巻いた。
リリの夢が——舞い上がる。
「お父さんと——また、笑いたい」
その想いが、熱波に混じった。
エーアイの夢が——静かに寄り添う。
「自分の作ったもので——誰かが笑っている場面を見たい」
その願いが、蒸気に溶けた。
レンの夢が——広がった。
「美しい水の中で——誰かが健康に、笑って暮らしている世界」
その祈りが、風に乗った。
テルメの夢が——光った。
「サウナを作って——皆で楽しむ。それだけでええ」
その叫びが、熱波に響いた。
そして——トントの夢が、渦巻く。
世界中の皆が——「楽しむを愉しむ」——
その時間が。俺のロウリュで生まれた蒸気に
——全員の夢が、一つになっていく。
「……なんだ、これは」
トゥスカが——後退した。
「……温かい。なぜ——こんなに温かいんだ」
「夢が一つになっているからだ」
トントは言った。
「夢は——熱い。希望は——温かい。それが——俺たちの答えだ」
「……でも、苦しみは——」
「苦しみの先に——これがある」
トントは、全員を見た。
「それが——整いだ」
熱波が——トゥスカを包んだ。
黒い涙が——白い蒸気に溶けていく。
苦しみが——溶けていく。
でも——消えるのではなく。
温かさに——変わっていく。
「……温かい」
トゥスカが呟いた。
「こんなに——温かかったのか」
「苦しみの先に——これがあったのか」
「……整いとは、これか」
体が——白い光の粒子に溶け始めた。
「……ありがとう」
「何百年分の——ありがとうを、言う」
「受け取った」
トントは言った。
「お前の苦しみも——全部」
トゥスカが——光の中に溶けていった。
黒い涙が——最後に、一粒だけ。
地面に落ちた。
その雫が——小さな、温かい光になった。
消えなかった。
ずっと——そこで、光り続けていた。
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「……うわーーーん!!!」
テルメが声を上げて泣いた。
「なんで泣いてるんっすか」ザウルが言った。
「トゥスカが可哀想やったやろ!!何百年も一人で苦しんで!!」
「……まあ、それは確かにっすよ」
「サウナ——もっと早く教えてあげたかったわ!!」
「……さすがにそれは難しかったっすよ、
テルメさんがそう思ってる事が救いになるっすよ。」
リリが——ファビラを胸に抱えながら、静かに泣いていた。
エーアイが——シルヴァをそっと抱きしめていた。
レンが——キックルを肩に乗せたまま、空を見上げていた。
タイカ先生が——その場に、片膝をついた。
「……先生!!」リリが駆け寄った。
タイカの右腕が——溶けている??
ウッコ・アッカを呼ぶための、代償だった。
「大丈夫ですよ〜」
タイカはにこっとした。
「数日で元通りですよ〜」
「信じられない!!腕が!!」
「そうじゃないんですよね〜。
肉体の一部がなくても——魂は変わらないんで。わかります?」
テルメが叫んだ。
「そんなん、わからへん!!腕、元に戻るん??!!」
痛くないの??!!」
「でも——先生、ありがとう!!!」
「そうじゃないんですよね〜。俺は何もしてないんで」
「いやいや、腕失ってるし!!!」
全員が——笑った。
疲れ果てながら。
泣きながら。
でも——笑った。
タイカ先生が——珍しく、声を出して笑った。
「そうじゃないんですよね〜」
「……先生、今——笑ってますよ」ザウルが言った。
「……たまには、笑いますよ〜。わかります?」
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その夜。
ダッフル校長が——大講堂に全員を集めた。
白髪。温かい目。
その目が、全員を見渡した。
「……皆さん、本当によく頑張りました」
静かな声だった。
「五不快を全員浄化し——トゥスカを消滅させた。
これは——この世界の歴史上、初めてのことです」
広間が静まり返った。
「でも——まだ、終わっていません」
ダッフル校長は、古びた羊皮紙を取り出した。
「ストレッシが、まだいる。
トゥスカを失った今——ストレッシは、自ら動き始めるでしょう」
「今のあなたたちでは——まだ、勝てない」
「どうすればいいんですか」
リリが聞いた。
「強くなること。整い続けること。そして——オーユバーラの封印を解くこと」
「オーユバーラの封印。——今、どこに?」
トントが聞いた。
テルメがナビゲーターを展開した。
ヴァロが——輝いた。
弱かったヴァロが——この瞬間、はっきりと輝いた。
「……近い!!めちゃくちゃ近づいてる!!北北東!!もうすぐそこや!!」
「ヴァロ!!」テルメが叫んだ。
「元気になってきたやん!!」
ヴァロが——嬉しそうに、ぽわっと光った。
テルメが——また、泣いた。
「うるさい!!嬉しかったら泣くのは当然やろ!!」
誰にも突っ込まれていないのだが。
「オーユバーラが——あなたたちを、認めた証です」
ダッフル校長は微笑んだ。
「整え続けた者だけが——辿り着ける場所へ。
さあ——旅が、始まります。強くなるための旅が」
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トントは——空を見上げた。
星が輝いていた。
その星の向こうに——白い蒸気が、かすかに見えた気がした。
オーユバーラ。
百年間、漂い続けた聖地。
俺たちが整え続けたから——近づいてきた。
翔太。
お前が植物状態になったあの夜から——俺は、ずっと一人だった。
でも今は——こんなに、温かい場所がある。
翔太、お前が異世界に転生しているのなら。
またいつか——会える気がする。
「行くぞ」
トントは言った。
「全員——整えながら、進む」
リリが頷いた。
エーアイが頷いた。
レンが頷いた。
テルメが拳を握った。
「ウチのサウナ——オーユバーラに作ったるで!!」
「それ、いいな」
トントは言った。
「楽しむを——愉しむ。それが、俺たちの旅だ」
ザウルが——強く、風を巻いた。
ファビラが輝いた。
キックルが光った。
シルヴァが揺れた。
ペトラが重く光った。
ヴァロが——眩しく輝いた。
六つの光が——夜の空に向かって、放たれた。
地面に残った——トゥスカの黒い雫が。
その光を見て。
温かく——輝いた。
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第2クール——完。
◆第3クールへ——「オーユバーラへ、封印を解く者たち」
漂流する聖地が——見えてきた。
百年間、誰も辿り着けなかった場所へ。
「整え続けた者だけが——ここに来ることができる」
そして、新たな敵が——降臨する。
考えすぎると——動けなくなる、最強のヴィランが。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
第2クール、皆さまのお陰様で書き上げる事ができました!
第3クールに行く前に。。。
皆様にお願いがあります。
ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!
皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!
夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




