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第30話「ウッコ・アッカ覚醒 前編。始祖の炎」

第二クール 最終話。 前編です。


では!



サングラスが——砕け散った夜。


アルカナ魔法学校の中庭に——光が満ちていた。


ペトラが天に向かって、光を放ち続けていた。


地面が揺れていた。


学院全体が揺れていた。


トゥスカが——その光を見て、初めて後退していた。


「……タイカ・パラス。あなたは——」


「わかります?」

タイカは静かに言った。


「始祖の精霊・ペトラは——今は熱を失っている。

 でも——誕生時は、命の源だった。今から——その力を取り戻します」


「どうやって」

タイカはトントを見た。


「わかります?——サウナですよ〜」


トントは——全員を見渡した。


「エーアイ!!」


「はい!!」


「シルヴァと一緒に——最高の薪を生成しろ!!」


エーアイが目を閉じた。

シルヴァが——根を伸ばした。

針葉樹の薪が——次々と生成された。

完璧な密度。完璧な乾燥度。


「リリ!!」


「はい!!」


「ファビラで——その薪に火をつけろ!!」


「ファビラ——行くよ!!」

ファビラが——金色の炎を放った。

薪が——燃え上がった。


「ザウル!!」


ザウルが——風を巻いた。

炎が——嵐のように大きくなった。

天に届くほどの——巨大な炎の柱が、夜空を染めた。


「キックル!!」


「はい!!」


キックルが——ラハティの聖水を放った。


トントがサウル・ハカロで受け取った。


炎の柱に向かって——叩きつけた。


ジュワァァァァッ!!


聖なる蒸気が——天に噴き上がった。


ペトラが——その蒸気の中に、沈んでいった。


「……熱い」

ペトラが——初めて、声を発した。


低い。重い。地球の奥底から来るような声だった。


「……百年ぶりだ。この熱さが——」


「ペトラ!!もっと熱くなれ!!」

タイカが叫んだ。


ペトラが——赤く。真っ赤に。溶岩のように——輝き始めた。


地面が——また、揺れた。


今度は学院だけじゃなかった。


王都全体が——揺れていた。


「……なんや、これ」

テルメが、ヴァロを抱えたまま空を見上げた。


「空が——変わってる」


夜空に——白い光の柱が、立っていた。


「……きれい」エーアイが静かに呟いた。


「きれいどころじゃないっすよ!!」ザウルが叫んだ。


「あれが——ペトラの本来の姿っすよ!!」


その光の柱の中から——何かが、生まれた。


巨大だった。


人の形ではなかった。


炎と水と風と石と木が——一つになった、原初の存在。


輝いていた。温かかった。


圧倒的だった。


「……ウッコ・アッカ」


タイカが呟いた。


フィンランドの神話では——ウッコは天空の神。アッカは大地の女神。


天と地の力が——一つになった、始祖の神だった。


「……これが」


トゥスカが——大きく後退した。


「始祖の精霊の——本来の姿か」


「そうです〜」タイカは言った。


「ペトラは今——命の源に戻った。わかります?」


テルメが——目を輝かせた。


「……なんや、これ。めちゃくちゃかっこいいやん!!」


ザウルが言った。


「テルメさん、今——震えてますよ」


「震えるわ!!当然やろ!!」


「テルメさんが素直に震えるの——初めて見たっすよ」


「うるさい!!」




「……トント」

タイカが振り返った。


「はい」


「アウフグース——一緒にやりますよ〜。わかります?」


「わかった」


タイカが——ペトラの石をサウナストーンとして展開した。


灼熱の石が、中庭に並んだ。


ウッコ・アッカの力を宿した——命の石だった。


「ロウリュ——今だ」


二人が同時に——キックルの聖水をストーンに叩きつけた。



ジュワァァァァッ!!



蒸気が——爆発的に広がった。


タイカがタオルを振った。


トントがサウル・ハカロのラドルを振った。


二人の動きが——舞のように重なった。


「ブォン——!!」


熱波が——渦を巻いた。


タイカの石の力。


トントのロウリュの技。


二つが合わさった熱波が——トゥスカに向かった。


「……熱い!!」

トゥスカが——初めて、叫んだ。


「……この蒸気は——なぜ、こんなに深く届くんだ!!」


「わかります?」


タイカは言った。


「命の源から生まれた蒸気ですから〜。闇には——一番効くんですよ〜」


「もう一回!!」トントが叫んだ。


二人が——また、タオルとラドルを振った。


ブォォォン——!!


熱波が、さらに強くなった。


トゥスカが——後退した。


また後退した。

また、後退した。


「……追い詰められている」

トゥスカは静かに言った。


「ならば——これを使います」




トゥスカの体から——五色の光が溢れ出した。


赤(ラース・怒り)。

黒(グルーム・絶望)。

灰(バーンアウト・虚無)。

紫(ソリテュード・孤独)。

白濁(ノイズ・騒音)。


五色が——螺旋状に収束していった。


「……ファイブ・ストレス・ノヴァ」

タイカが静かに言った。


「五不快の力を一点に収束させた——究極の爆発です」


「全員——!!」


トントが叫んだ。

「構えろ!!」


でも——遅かった。


爆発した。


全方向に。圧倒的に。


半径百メートルが——完全な絶望空間になった。


物理的なダメージじゃなかった。


精神への——打撃だった。


「……リリ」

声が聞こえた。

「お父さんは——もう、帰ってこない。あなたの炎は——小さすぎる」

リリが——膝をついた。


「……エーアイ」

声が聞こえた。

「あなたの作るものは——ズレている。誰も喜ばない。誰も幸せにならない」

エーアイが——壁にもたれた。


「……レン」

声が聞こえた。

「美しい水も、清らかな空気も——いつか汚れる。誰かが健康に暮らす世界なんて——幻想だ」

レンが——キックルを抱えたまま、床に手をついた。


「……テルメ」

声が聞こえた。

「サウナを作っても——誰も来ない。あなたは——大阪でも、異世界でも、いつも一人だ」

テルメが——ヴァロを抱えたまま、膝をついた。


「……トント」

声が聞こえた。

「田中翔太を——救えなかった。

 あの夜、あなたは一人でサウナの更衣室で倒れた。誰も来なかった。あなたの夢なんて  ——誰も必要としていない」


トントの膝が——揺れた。


……重い。

前世の記憶が——全部、押し寄せてくる。

田中翔太の手術が失敗した夜。

家族の怒号。

心電図のフラット音。

サウナの更衣室で——一人で倒れた夜。

誰も——いなかった。


トントは——医者として、冷静に分析しようとした。


……これは、ノルアドレナリンの暴走だ。


扁桃体が過活動を起こして——過去の最悪の記憶を引き出している。

コルチゾールが急上昇して——思考が悲観的になっている。

でも——


でも——体が、動かない。


「……いい夢を見ていましたね」

トゥスカが静かに言った。


「でも——夢は夢です。現実には——絶望しかない。

 さあ——全員、闇の中で安らかに眠りなさい」




静寂が——学院を支配した。


全員が——膝をついていた。


タイカでさえ——片膝をついていた。


トゥスカが——ゆっくりと近づいてきた。


「……終わりです」


その瞬間。

「——嫌や!!」

声が響いた。


テルメだった。


膝をついたまま——ヴァロを胸に抱えたまま——叫んでいた。


「ウチの夢は——サウナを作って、皆で楽しむことや!!」


「それの何が——悪いんや!!」

ヴァロが——弱く、光った。


「テルメさん!!」


リリが——顔を上げた。

「……私も!!」


ファビラが——金色に燃えた。

「家族と——また、笑いたい!!お父さんと——もう一度!!」


「……私も」


エーアイが立ち上がった。

「自分の作ったもので——誰かが笑っている場面を見たい。それだけで——私は十分です」

シルヴァが——緑の光を放った。


「……私も」

レンが立ち上がった。

「美しい水の中で——誰かが健康に、笑って暮らしている世界を作る」


キックルが——青白く輝いた。

「……夢を語っても」


トゥスカは言った。

「現実は変わらない」


「変える」

トントが——立ち上がった。


全員が、トントを見た。


トントは——サウル・ハカロを握り直した。


「俺の夢は——テルメのサウナで、世界中の皆が笑っている場面を見ること」

「俺のロウリュで——全員が『楽しむを愉しむ』時間を過ごすこと」

「それが——俺が異世界に来た理由だ」

「脳外科医として——人の命を救うことだけが、俺の仕事だと思っていた」

「でも——違った」

「体だけじゃない。心も。整えることが——俺の仕事だ」


ザウルが——静かに、強く輝いた。

「……トントさん」


「なに」


「今——最高っすよ」


「うるさい」

でも——否定しなかった。


「全員!!」


トントが叫んだ。


「立て!!次の話で——決着をつける!!」




第30話 了

◆次話予告/第31話「ウッコ・アッカ覚醒 後編——楽しむを愉しむ」

夢が——熱波になる。

トゥスカの黒い涙が——地面に落ちる。

「……サウナか。一度——入ってみるか」


後編、そして。。。。


最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


皆様にお願いがあります。

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!


皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!

夢想の最大のモチベーションになります!


次回もぜひお楽しみに。

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