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第29話「始祖の石と、最低な災厄。タイカ・パラス、覚醒前夜」

皆様。

どーもベシさんです。

いつもありがとうございます!


いよいよ、強敵!!現れる!!


さーて、では!



メランが——白い光の中に消えた。


静寂が戻った。


本物の静寂が。


テルメがヴァロを胸に抱いて、小声で言った。


「……早よ元気になりや」


ヴァロが——かすかに、光った。


「テルメさん——」ザウルが静かに言った。


「うるさい」


「……かっこいいっすよ」


テルメが——また、泣いた。


「うるさいって言うてるやろ!!」


その時。


ザウルが——突然、激しく揺れた。

「……っ!!」


トントは空を見た。


「全員——下がれ!!」


空が——割れた。


音もなく。


光もなく。


ただ——空間そのものが、断ち切られた。


そこから——影が、降りてきた。


人の形をしていた。


でも——人ではなかった。


巨大だった。重く。冷たい。


その存在が——空気を変えた。



息ができない。


立っていられない。


膝をついた生徒が続出した。


花壇の花が——枯れた。

噴水の水が——黒くなった。

空の色が——灰色になった。


「……な、なんや……」


テルメが、ヴァロを抱えたまま膝をついた。


「……これは」エーアイが壁に手をついた。


リリが、ファビラを庇いながら言った。


「……空気が、重い」


トントは——立っていた。


ザウルが全力で風の盾を張っていた。


でも——膝が、震えていた。


……ストレッシじゃない。


もっと——古い。もっと——根源的な何かだ。

魔王よりも、五不快よりも——もっと深いところから来ている。

こういう存在は——前世でも、いた。


手術室で経験した。


どうにもならない命が——目の前にある時の、あの重さだ。


影が——口を開いた。


「……久しいな、タイカ・パラス」


低い声だった。


時間が凝縮されたような声だった。


人類の歴史の重さを——全部詰め込んだような声だった。


「トゥスカ」


タイカが——いつの間にか、全員の前に立っていた。


サングラス。銀色の髪。細身の体。


でも——今日のタイカは、違った。


お気楽な雰囲気が——完全に消えていた。


サングラスの奥の目が——鋭かった。


「……そうじゃないんですよね〜」


タイカは静かに言った。


「あなたが直接来るとは——思ってなかったんで」


「五不快が全員、消えた」


トゥスカは静かに言った。


「メランまでも。ならば——私が来るしかない」


「わかります?——俺もそう思ってましたよ〜」




「トゥスカ——何者だ」



トントが前に出た。

トゥスカが——トントを見た。


「……面白い目をしている。異世界から来た者か」


「答えろ」

トントが再び聞く。


「答えましょう」


トゥスカは静かに言った。

「私は——人類が生まれてから、しばらくして誕生した。

 人の思念の闇が——積み重なって、形になったものです」


「思念の闇?」


「人間が生きる限り——闇は生まれる。

 絶望。憎しみ。嫉妬。恐怖。孤独。怒り。燃え尽き。

その全てが積み重なって——私になった」


「五不快は——私の分身です。人類の闇から生まれた私の欠片」


全員が——黙った。


トントが医学的に分析した。


「……カール・ユングが提唱した

 『集合的無意識』の闇の部分が——実体化した存在だ。

 個人の悪意ではない。全人類の苦しみの総体だ。

 だから——個人で対抗することが、極めて難しい」


テルメ「全くわからんかったわ」


ザウル「俺もっすよ」


トント「……要するに、人類全員の不快が合わさった存在だ」


テルメ「最初からそれ言うて!!でも——どうやって整わせるんや!!」


「……それが問題だ」


テルメが叫んだ。


「方法ないんかいな??そんなん!!サウナ、何億個いるんや!!」


ザウル「テルメさん、億単位で考えてるっすよ」


「多分数と違うけど、それぐらいの気持ちやねん!」




「なぜ——世界を不快にする」


トントが言った。


「不快にしているのではない」


トゥスカは静かに言った。


「救っているんですよ」


「……救う?」


「光があるから——闇が生まれる。

 希望があるから——絶望が生まれる。

 愛があるから——憎しみが生まれる。

 ならば——全てを闇で覆えば、苦しみはなくなる」


「……それは」


トントは言った。


「生きていない、ということだ」


「苦しみのない世界。絶望のない世界。

 全てが均一な——完全な闇の世界。それが、私の理想です」


テルメが——叫んだ。

「そんなん、生きてる意味ないやろ!!」


「生きる意味——そんなものが、苦しみの源です」

トゥスカは静かに答えた。


「意味を求めるから——苦しむ。意味がなければ——苦しまない」


「……っ!!」

テルメが——拳を握った。


「意味があるから——サウナが気持ちいいんやろ!!

 整いがあるから——生きてる実感があるんやろ!!

 意味がなかったら——何が楽しいねん!!」


「……あなたは」


トゥスカが——テルメを見た。


「感情が豊かですね。だからこそ——苦しむ」


「苦しんでええねん!!苦しんで、泣いて、

 整って——また立ち上がるのが——生きるってことやろ!!」


静寂。


ザウルが小声で言った。

「……テルメさん、今——最高っすよ」


「うるさい!!」


でも——誰も笑わなかった。


テルメの言葉が——重かったから。


トントは——トゥスカを見た。


……こいつは、本気でそう思っている。


悪意じゃない。歪んだ善意だ。


だからこそ——厄介だ。


論理的に聞こえる。


でも——聞けば聞くほど、心が侵食される。


「タイカ先生」


トントは振り返った。

「コイツは何とかしないといけない、最悪の腫瘍です」


タイカはサングラスを直した。


「わかります?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……タイカ」


トゥスカが言った。


「私たちは——人類の歴史の中で、何度も相対してきた。

 始祖の精霊・ペトラが生まれた時から——ずっと」


「わかります?——俺も覚えてますよ〜」


タイカは静かに言った。


「この世界では——魔力が高い者は、死んでも記憶が継承されるんで。

 俺とあなたは——何度も、ここで会ってる」


「そして——毎回、決着がつかなかった」


「今回は——つけますよ〜」


タイカが右手を上げた。


ペトラが——タイカの肩で、轟音と共に光を放った。


地面が——揺れた。


巨大な岩盤が、学院の地面から噴き出した。


石の壁が。石の柱が。石の檻が——トゥスカを包囲した。


「石の魔法か」


トゥスカは——石の壁を、片手で砕いた。


音もなく。


簡単に。


まるで——紙を破くように。


「始祖の精霊・ペトラといえど——五不快の力を全て吸収した今の私には通用しない」


トゥスカの体から——五つの色が溢れ出した。


赤。黒。灰。紫。白。


「……五不快の力を——全て吸収した」エーアイが静かに言った。


「そうです」


「ノイズの騒音。

 グルームの絶望。

 ラースの怒り。

 ソリテュードの孤独。

 バーンアウトの虚無——五不快が浄化された時、その力は私に戻ってきた」


「……あいつら」リリが歯を食いしばった。


「最後に——力を渡したのか」


「そうです。彼らは私の分身。浄化されても——力は消えない。私に帰ってくる」


五色の光が——一つになった。


黒く。重く。冷たく。


「今の私は——あの頃より、遥かに強い。

 タイカ・パラス——今回は、決着をつけましょう」


「そうじゃないんですよね〜」


タイカは言った。


「俺もそう思ってたんで。わかります?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦いが始まった。


タイカのペトラが——石の弾丸を連射した。

ドドドドッ!! ドドドドッ!!


トゥスカが——五色のオーラで全て弾いた。


タイカが——石の盾を展開した。


トゥスカが——五不快の力を束ねた一撃で粉砕した。


「……っ!!」


タイカが——初めて、後退した。


「さすが」


タイカは言った。


「五不快を束ねると——これほどか」


「まだです」


トゥスカは静かに言った。

「あなたの心の弱みを——突かせてもらいます」


五色の光が——タイカに向かった。

ノイズが——タイカの思考を乱した。

グルームが——タイカの希望を蝕んだ。

ラースが——タイカの感情を揺さぶった。

ソリテュードが——タイカの孤独を増幅した。

バーンアウトが——タイカの魔力を枯渇させようとした。


「……どうですか」

トゥスカは言った。


「あなたでも、ツライ事はあるでしょう」


「そうじゃないんですよね〜」


タイカは——息を整えながら言った。


「効かないですよ〜。俺、結構——整ってるんで」


ザウルが言った。

「トントさん——タイカ先生、やばいっすよ」



「わかってる」


「助けに行きますか」


「……今は——信じる」


「なぜっすか」


「タイカ先生が——まだ、本気を出していないからだ」


ザウルが——固まった。


「……そうなんっすか」


「サングラスを——外していない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……そのサングラスが——整いの補助をしているんですね」

トゥスカの目が、細くなった。


「始祖の精霊・ペトラとの契約。

 サングラスが壊れた時に——何かが起きる。そういう事ですね」


「そうじゃないんですよね〜」


「壊します」


トゥスカが——全力で動いた。


タイカが——全力で防いだ。


石の壁。石の盾。石の檻。


ペトラが全力で守った。


でも——トゥスカの力は、五不快全ての力だった。


一つ一つが——崩れていく。


「……!!」


タイカが——膝をついた。


「先生!!」リリが叫んだ。


「大丈夫ですよ〜」


タイカは立ち上がった。


「まだ——終わってないんで」


テルメが——ヴァロを胸に抱きながら、震えていた。

「……タイカ先生」


「テルメさん——」ザウルが言った。


「ヴァロに話しかけてた。タイカ先生、かっこいいって」

テルメが——また、泣いた。


「うるさい!!泣いて何が悪いねん!!」


トゥスカが——痛恨の一撃を放った。


黒いオーラの奔流。


タイカが——正面から受け止めた。


ペトラが——最大出力で防いだ。


でも。


パキン。


サングラスに——ひびが入った。


「……あ」


タイカは——サングラスを触った。


「……これは」


ペトラが——激しく揺れた。


「タイカ・パラス」


トゥスカが言った。


「今度こそ——終わりです」


最後の力を放った。


パリン。

サングラスが——砕け散った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


破片が——地面に落ちた。


音が、消えた。


全員が——息を飲んだ。


タイカの目が——露わになった。


銀色の瞳。


静かで。深くて。


でも——その奥に。


何かが宿り始めていた。

「……」


タイカは黙っていた。

「……終わりですよ」


トゥスカが前に出た。

「サングラスが壊れた。もう——補助はない」


「そうじゃないんですよね〜」


タイカは——静かに言った。


「補助じゃないんですよ〜。封印なんで」


「封印?」


「わかります?——俺の力を、封印してたんですよ〜」


タイカの体から——暖かい光が溢れ始めた。


ペトラが——天に向かって、光を放つ。すごい光だ。


地面が——揺れた。


学院全体が——揺れた。


「……これは」


トゥスカが——初めて、後退した。


「……タイカ・パラス。あなたは——」


「わかります?」


タイカは言った。


「始祖の精霊・ペトラは——人類が最初の火を起こした時に、生まれた精霊です。

 石と石を打って——火花を散らした。

 その瞬間に生まれた。

 だから——ペトラは、人類の希望の源でもある」


「希望の——源?」


「人類が最初に火を起こした時——闇を照らした。

 その火花が——俺の中に、ある」


光が——さらに大きくなった。


テルメが——目を見開いた。


「……きれい」


ザウルが言った。

「……これが、タイカ先生の本当の力っすよ」


リリが——ファビラを胸に抱いた。


「……ファビラ、見てる?」


ファビラが——金色に輝いた。


タイカが——トントを見た。


銀色の瞳が——真剣だった。

「……トント」


「はい」


「一緒に——整わせますよ〜。わかります?」


「始祖の石と——サウル・ハカロ」


「その組み合わせが——トゥスカに届く」


トントが——サウル・ハカロを握り直した。


……始祖の騎士団長と、前世の脳外科医。


おかしな組み合わせだ。


でも——これが、俺の仕事だ。


「わかった」


タイカの光が——夜の空を染め上げた。


トゥスカが——その光を見た。


「……まだ、終わっていなかったか」


「そうじゃないんですよね〜」


タイカは静かに言った。


「始まりなんですよ。わかります?」


光が——夜の空を、染め上げていった。


テルメが——ヴァロを見た。


弱く揺れていた。


「……ヴァロ」


テルメは小声で言った。


「見てるか」


「タイカ先生が——かっこいいで」


「早よ元気になって——お前も見てほしいわ」


ヴァロが——かすかに。


でも——確かに。


光った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第29話 了

◆次話予告/第30話 「ウッコ・アッカ覚醒 前編——始祖の炎」

封印が解けた。

始祖の力が——目覚める。

サウル・ハカロとペトラが——一つになる時。

人類の不快の総体が——整わされる。

「トントさん——一緒に、整わせましょう。わかります?」


皆様!

いつもありがとうございます!


ストレス発散も大事!

ストレス溜めないこと、もっと大事!


ですね〜



最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


皆様にお願いがあります。

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!


皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!

夢想の最大のモチベーションになります!


次回もぜひお楽しみに。

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