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第28話「光で照らせ。メランの闇」

どーもベシです!

今日の話は——少し、重いです。

でも、サウナが好きな人には

きっと刺さると思います。

「……お久しぶりですね、皆さん」


静かな声が——学院全体に響いた。


全員が——固まった。


校舎の屋根の上に——黒いローブの女が立っていた。


無表情。冷たい目。


「……誰だ」トントが言った。


「昇級試験の時以来。ですね。」


「あっ!!」テルメが叫んだ。


「あんたかいな!!」


「はい。スパイとして——皆さんのことをよく観察させていただきました」


「リリさんの——父への想い」


「エーアイさんの——過去の孤独」


「レン様の——感情の揺れ」


「トントさんの——過去への後悔」


「そして——」


メランの目が、テルメに止まった。

「テルメさん。前世のこと、山田勝だった頃の話。——全部、知っています」


テルメの体が——強張った。


「グルームシェード——暗黒結界、展開」


黒い霧が——学院全体を包んだ。




一瞬で、全てが変わった。


空が——黒くなった。


校舎の壁が——灰色になった。


花壇の花が——枯れた。


廊下を歩く生徒たちの顔から——笑顔が消えた。


「……勉強する意味、あるのかな」

「……先生なんて、信用できない」

「……どうせ、誰も助けてくれない」


トントが分析した。

「……セロトニンが強制的に枯渇させられている。

 脳内の神経伝達物質のバランスが崩れると——思考が悲観的になる。

 全てのことが——意味のないことに見えてくる」


テルメ「全くわからんかったわ」


ザウル「俺もっすよ——あれ、俺も少しふらふらするっすよ」


トント「……要するに、脳が強制的に絶望モードに入れられている」


テルメ「最初からそれ言うて!!でもヤバすぎるやん!!なんでウチは元気なんやろ」


ザウルが言った。


「テルメさんのエネルギーが——規格外なんっすよ」


「褒めてる?」


「……どちらとも言えないっすよ」


「どっちやねん!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


メランの声が——テルメの耳に直接響いた。


「山田勝さん。覚えていますか。深夜の大阪。タクシーの車内」


テルメの頭の中に——記憶が流れ込んできた。


「おい、なんで違う道通るんや!!」

「申し訳ございません、この時間帯は——」

「黙れ!!お客様は神様やろが!!」


胸ぐらを掴まれた。


運転席を足蹴にされた。


料金を踏み倒された。


ドアを叩きつけて——去っていった。


テルメは一人、深夜の車内に残された。


窓の外には、誰もいなかった。


「……ウチは、何のために働いてるんやろ」


「お客様は神様?」


「そんなことはない」


「人間に、上も下もないはずや」


「なのに——なぜ、こんなに踏みにじられなあかんのや」


涙が——ハンドルに落ちた。


「……テルメさん!!」ザウルが叫んだ。


「ザウル——」

ハッと、テルメは我に返った。


「聞こえてますか!!俺いるっすよ!!」


「……聞こえてるで」


ヴァロが——テルメの肩で、弱く揺れていた。


グルームの霧に——押しつぶされそうになっていた。


メランが静かに言った。


「その怒りは正しい。その悲しみは正しい。

でも——この世界は変わらない。

仲間だと思っている彼女たちも——いつか、あなたを裏切る」


テルメが——膝をついた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー



その時。


テルメの頭の中に——別の記憶が、流れ込んできた。


サウナの記憶だった。


あの夜と——同じ夜だった。


タクシーを降りて、一人でサウナに入った。


熱い。汗が出る。


隣に座っているのは——知らないおじさんだった。


社長なのか、ホームレスなのか、わからない。


でも——サウナの中では、関係なかった。


みんな、同じ格好だった。


みんな、同じように汗をかいていた。


「おう、兄ちゃん、よう見る顔やなあ。なんや、元気ないやんか?」



「はぁ。今日も嫌な事あったんすわ。 もう、客商売、かないませんわ...。」


「ははは、ワシも色んな仕事してきたけど、何やろなぁ、一つ言えるのは

 明日はほっといても、必ず来る。やな!」


サウナでよく見る、このサウナのヌシ。のような初老の爺さんが言った。


「はぁ?? 明日は来ますわね。寝たら、来ますわ...。」


*このオッサン何言っとんのや?みんなに来るやろが、毎日*


「テルメが「それがどうしたんですか」と聞いた時——


ヌシが笑いながら言う。


「明日が来るってことはな——今日を乗り越えたってことや。

 それだけで——十分やないか」

「……十分?」

 

「今日、踏みにじられた。明日も、踏みにじられるかもしれん。

 でも——明日もサウナに来い。

 汗かいたら——全部、流れていく。ワシはそうしてきた」


「……おっちゃん、何の仕事してはったんですか」


「色々や。でもな——」


ヌシは湯気の中で笑った。


「サウナの中では——そんなこと、どうでもよくなるやろ?」


テルメが——思わず笑った。


「……確かに」


「それが——答えやで、兄ちゃん」


誰も——偉くなかった。

誰も——惨めじゃなかった。


そうや。

サウナの中は——皆平等や。


差別も、マウントも、上下も——サウナの熱の前では全部溶ける。


あの場所が——ウチは好きやった。


だから——異世界でも、サウナを守りたかった。


仲間と一緒に、整いたかった。


テルメは——立ち上がった。


「……メラン」


「……まだ立てるんですか」


「立てる」


テルメはヴァロを見た。


弱く揺れていた。


「ヴァロ——ウチな、お前に頼みたいことがある」


ヴァロが——テルメを見た。


「この結界の中を——サウナにしたい」


メランが眉をひそめた。


「……何を言っているんですか」


「サウナの中は——皆平等や!!

 闇も、グルームも——サウナの熱の前では全部同じや!!」


「三杉はん!!みんな!!力を貸して!!ウチだけでは、あかん!!」




トントが——顔を上げた。


「ザウル!!」

ザウルが——強く風を巻いた。


「ファビラ!!」

リリが立ち上がった。ファビラが——金色に燃えた。


「シルヴァ!!」

エーアイが目を開けた。シルヴァが——根を張った。


「キックル!!」

レンが立ち上がった。キックルが——青白く輝いた。


「ペトラ!!」

タイカ先生が——サングラスを外した。


「そうじゃないんですよね〜」

静かに言った。


「サウナというのは——どんな場所でも作れるんですよ。わかります?」


「……フラムも、そう言っていました」


ペトラが——重く、力強く光った。


五精霊の光が——ヴァロに集まった。


ヴァロが——眩しく輝いた。


「ロウリュ——今だ!!」


トントがサウル・ハカロを振った。


ジュワァァァァッ!!


聖なる蒸気が——結界の中に爆発的に広がった。


ヴァロの光が——蒸気に乗って、結界の隅々まで届いた。


黒い霧が——白い蒸気に飲み込まれていく。


「……な!!」メランが後退した。


「闇の結界が——サウナになっている!!」


「当たり前や!!」


テルメが叫んだ。

「サウナは——どんな場所でも作れる!!心があれば——どこでもサウナになる!!」


生徒たちの顔に——光が戻っていく。


「……頭がクリアになってきた」


「……さっきまで、なんであんなに暗かったんだろう」


「……整ってる」


結界が——内側から、崩れ始めた。




「メラン——お前も、整ってみるか?」


テルメが静かに言った。


「……私が、整う?」


「サウナの中は——皆平等や。お前も、ウチも——同じや」


メランが——初めて、表情を揺らした。


「……私は」


「ずっと——闇の中にいた。光が眩しくて——怖かった」


「怖くて当然や」テルメは言った。


「でも——ヴァロの光は、怖くない。温かいだけや」


ヴァロが——メランに向かって、そっと光を送った。


メランの目から——何かが溢れた。


涙じゃなかった。


でも——涙に近いものだった。


「……温かい」


「こんなに——温かかったのか」


体が——光の粒子に溶け始めた。


「……ありがとう、テルメ」


メランが——笑った。


初めて見る、メランの笑顔だった。


白い光の中に——溶けていった。




静寂が——戻った。


テルメは——その場に、立っていた。


「……ヴァロ?」


ヴァロの光が——弱くなっていた。


力を使い果たした。


「ヴァロ!!」


「テルメさん!!」リリが駆け寄った。


ヴァロが——テルメの手の中で、小さく光った。


消えそうに、小さく。


でも——確かに、光っていた。


「……消えへんよな」


テルメは呟いた。


「ヴァロ——消えへんよな」


ヴァロが——最後の力を振り絞って、ぽわっと光った。


それが——答えだった。


テルメが——ヴァロを胸に抱いた。


「……よかった」


トントが——テルメの隣に立った。


何も言わなかった。


でも——肩に、手を置いた。


「……三杉はん」


「なんだ」


「……ヴァロ、また戻ってくるよな」


「戻ってくる」


「…ホンマやんな?」

「約束する」


テルメが——また、泣いた。


ザウルが言った。

「テルメさん——今日、最高でしたよ」


「うるさい!!」


でも——嬉しそうだった。


タイカ先生が言った。

「そうじゃないんですよね〜。開き直った人は——強いんですよ。わかります?」


ザウルが言った。


「先生、今日は全部合ってますよ」


「……当然です」




その時——


上空に、影が現れた。


五不快とは違う。


もっと——重い。もっと——冷たい。


「……トゥスカだ」タイカが静かに言った。


「五不快を——吸収してパワーアップした。苦悩の化身が——本気で来る」


全員が——顔を上げた。


トゥスカが——静かに降りてきた。


美青年。


でも——目が、死んでいた。


「……楽しんでいましたね」


「次は——俺が、直接遊びます」


タイカが——前に出た。


「そうじゃないんですよね〜。これは——俺の仕事なんで」


サングラスを外した。


「わかります?」


ペトラが——真っ赤に輝いた。


「テルメ——よくやりました。ヴァロを休ませてあげてください」


「先生——」


「……フラムに、誓った仕事がある」


タイカが——前に出た。


……次は——俺とトゥスカの話だ。


トントは空を見上げた。

脳外科医の仕事は——まだ終わらない。

でも——今は。

タイカ先生を、信じる。

夜が——静かに更けていった。




第28話 了

◆次話予告/第29話「始祖の石と、最低な災厄——タイカ・パラス、覚醒前夜」

国王直属魔法騎士団長が——初めて、本気を出す。



自分の心と、身近な人の心のストレスが

消えていきますよーに!



最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


皆様にお願いがあります。

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を、どこでも良いのでポチッとしてください!


皆様のポチッ。で、物語は続いてまいります!

夢想の最大のモチベーションになります!


次回もぜひお楽しみに。

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