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第17話「文化祭準備。これが俺たちの、いや、私たちの青春だ!」

皆様。

ベシさんです。

いつもありがとうございます。


文化祭の出し物で、サウナ。。

夢想です。ただ、サウナイベント。 やりたいですね~。


では!

朝から、テルメが爆発していた。


「文化祭や!!!!」


「整理券!!番号札!!ポスター!!全部ウチが仕切る!!

 お客さんの誘導もウチが!!サウナ出店のレイアウトもウチが!!」


「テルメ」


「なに?」


「朝ごはん、食べた?」


テルメが止まった。


「……食べてへん」


「食べてね」


「……はい」


テルメは急いで食堂に走っていった。


リリが笑いながら言った。


「文化祭、楽しみだね!!」


「そうだな」


エーアイが静かに言った。


「……私、生成魔法で何か作れるかもしれません」


「頼りにしている」


「……はい」


レンが腕を組んで言った。


「で、何を作るの」


「サウナ小屋だ」


「……どんな?」


トントは少し考えた。


「——まずサウナに入ろう。答えはそこにある」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


全員がサウナ室に入った。


レンとキックルも、珍しく一緒に入った。


「……レン様、本当に入るんですか」


「うるさい。偵察よ」


「何回目の偵察ですか」


「……黙りなさい」


ジュッ——。


トントが特製アロマ水をストーンにかけた。白い蒸気が、ゆっくりと広がる。


全員が目を閉じた。


その時。


キックルが——光った。


青白い光が、キックルの体から溢れた。


「……キックル?」


レンが驚いた。


キックルは——トントの方を見ていた。


澄んだ目で。静かに。


トントの意識が——遠くなっていった。


川の音がした。


木々の匂い。焚き火の煙。


目の前に——小さな小屋が建っていた。


広葉樹の木材で作られた、フィンランド風のサウナ小屋。


……ここだ。


岐阜の、川沿いのサウナ小屋。


扉を開けた。中に入った。


巨大な薪ストーブが、部屋の中央にどっしりと鎮座していた。


赤く燃える薪。その上に積まれた、大きなサウナストーン。


熱が——じわりと全身を包んだ。


柔らかい。


とても柔らかい熱だ。


蒸気が苦しくない。呼吸が——楽だ。


トントは床を見た。


扉の下側に、細い隙間がある。


そこから——新鮮な空気が、静かに流れ込んでいた。


フレッシュエア理論。


外の新鮮な空気が下から入り、室内を循環する。


蒸気は上に溜まる。新鮮な空気は下を流れる。


だから——いつまでも呼吸できる。


ロウリュをした。


ジュッ——。


柔らかい蒸気が、ふわりと広がった。


……これだ。


これが、本物のサウナだ。


川の音が、遠くから聞こえた。


一人で来た場所。でも——


次は、誰かと来たい。


意識が戻った。


全員がトントを見ていた。


「……三杉はん、泣いてるやん」テルメが言った。


「泣いていない」


「目、赤いで」


「蒸気だ」


「……そうか」


キックルが静かに言った。


「……見えました。あの場所」


レンが驚いた。


「キックル、何をしたの」


「……記憶の水面を、少し揺らしただけです」


「勝手に人の記憶を——」


「レン様」


「なに」


「……きれいな場所でしたよ。トントさんが好きな場所」


レンはトントを見た。


「……どんな場所だったの」


「広葉樹で作られたフィンランド風のサウナ小屋だ。

 巨大な薪ストーブ。柔らかい蒸気。

 扉の下から新鮮な空気が入ってくる——いつまでも入っていられる」


「……そんなサウナがあるの?」


「あった。現世に」


全員が黙った。


「——それを、作ろう」


「え?」


「この文化祭で。本物のフィンランドサウナ小屋を作る」


トントはエーアイを見た。


エーアイが——目を輝かせた。


「……やります」


「広葉樹の木材——直径20センチ。熱の持ちが全然違う」


「……生成します」


エーアイがシルヴァと共に目を閉じた。


ぼわっ——。


分厚い広葉樹の木材が、次々と現れた。重い。密度が高い。触ると——温かみがある。


「……これです。この木材なら、熱が逃げない」


「完璧だ」


「薪ストーブは?」リリが聞いた。


「鉄製。大型。ストーンをたっぷり乗せる」


「生成します!!」


ぼわっ——。


巨大な鉄製薪ストーブが現れた。どっしりと重い。存在感がある。


テルメが叫んだ。

「でか!!」


「これくらいでないと、本物の蒸気は作れない」


「扉の下の隙間は?」エーアイが設計図を広げながら言った。


「……ここに、フレッシュエア用の通気口を設けます。外の新鮮な空気が下から入って——上の蒸気と対流する」


「……よく理解した」


「トントさんの記憶から、見えました。キックルさんが共有してくれて」


キックルがぺこりと頭を下げた。


「お役に立てて、よかったです」


「問題がある」トントが言った。


「なに?」


「水風呂だ。川がない」


全員が黙った。


トントはレンを見た。


「レン、頼みがある」


「なに」


「この学院の敷地内に——井戸を掘れないか。

 地下水だ。温度が安定している。年中十二度前後を保つ」


レンが目を丸くした。


「……私の水魔法で」


「キックルが水脈を探して、お前の水魔法で掘り当てる」


「……やったことない」


「できるか?」


「——やってみる」


キックルが飛び上がった。


「やります!! レン様!! 水脈、探します!!」


中庭。


キックルが目を閉じた。


青白い光が広がる。


水の妖精の感知が——地面の下へ、どんどん深く伸びていく。


「……あります」


「地下十五メートル。北北西の方向に——水脈があります」


全員が北北西を見た。中庭の隅。古い石畳の下。


「レン」


「……わかった」


レンが右手を前に伸ばした。


水の魔力が——地面に向かって走った。


ぐぐぐ——。


地面が震えた。石畳が割れた。土が盛り上がった。


だが——レンの表情が、歪んだ。


「……っ、嘘でしょ……!?」


レンの右腕が、目に見えて震え始める。


「ダメ……これ、ただの岩盤じゃないわ。

 古代の魔力が固着した『拒絶の岩』よ……!

 私の魔力じゃ、これ以上は——!」


レンの足元がふらつく。


その時。


スッと——震えるレンの肩に、手が置かれた。


「焦るな、レン」


トントの声は、驚くほど低く、平熱だった。


「いいか、目を閉じろ。心拍数を整えろ。

 今は魔力を叩きつけるんじゃない。……『隙間』を探すんだ」


トントの手から、レンの体へ。


一定のリズムで刻まれる脈動が伝わっていく。


レンの荒い呼吸が、次第にトントのリズムと同調していく。


「脳の血管を通すのも、水脈を通すのも同じだ。

 どんなに硬い岩盤にも、必ず通り道がある。……

 そこだ。キックルが見つけた座標の、右に三ミリ。そこに魔力を集中させろ」


「……三、ミリ?」


「そうだ。力ではなく、針の先で突くように。……今だ」


レンは導かれるまま、全魔力を一点に凝縮し、放った。


——パキィィィン!!


硬質な何かが砕ける音が地下から響いた。


直後、爆音を立てて水柱が噴き出した。


「……やった」


トントが静かに手を離す。


レンは、びしょ濡れになりながら呆然と自分の手を見つめていた。


「……あんた、何者なのよ」


「……ただの、サウナ好きの執刀医さ」


その横で、キックルが泣きながら飛び跳ねている。


「レン様!!トント様!!二人の愛の共同作業ですぅぅ!!」


「……キックル、燃やすわよ」


レンは悪態をつきながらも——トントの手が、少しだけ温かかったことを、ずっと覚えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「サウナ飯も出す」とトントが言った。


「え!!」リリが目を丸くした。


「マッカラを焼く。メインはリリに任せる」


「やります!!」


リリがファビラと一緒に——マッカラを一本、丁寧に焼き始めた。


ファビラの炎が——絶妙な温度で、じっくりと焼き上げる。


「……美味しそう」


テルメが覗き込んだ。


「試食していいですか」


「ダメだ」


「ちょっとだけ!!」


「ダメだ」


「……ケチ」


しばらくして——マッカラが焼き上がった。


一口食べたテルメが——目を見開いた。


「……なんでこんなに美味しいんや」


「ファビラの炎の温度が均一だからだ。外はパリッと、中はジューシーに仕上がる」


「泣けてくるわ……」


「仕事しろ」


「ねえ、トント。問題があるの」とリリが言った。


「なに?」


「お客さんが増えたら——一本ずつ焼いてたら、間に合わない」


全員が黙った。


エーアイが考え込んだ。


「……どうすれば大量に焼けるか」


頭の中で設計図を描く。でも——うまくいかない。


「……トント、何かいいアイデアないですか?」


「エーアイさん。サウナのストーンは——なぜ均一に熱くなる?」


「……石が蓄熱して、均一に放熱するから」


「そうだ。同じ原理で——」


エーアイの目が輝いた。


「……わかりました」


エーアイがシルヴァと共に目を閉じた。

ぼわっ——。


耐熱レンガで作られた、石窯が現れた。


内部に——レンガが蓄熱した穏やかな遠赤外線の熱が満ちている。


「一度に20本焼けます」


リリが目を丸くした。


「……すごい!!」


ファビラが——石窯に興味津々で近づいていく。


「ファビラ、危ない」


ファビラがぷいっと顔を背けた。


でも——石窯の周りをぐるぐる回っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ドリンクも出す」とトントが言った。


「何を?」


「酵素ドリンクだ」


「……酵素?」とレンが聞いた。


トントは全員を見渡した。


「酵素は——体内の代謝を促進する。

サウナで血流が良くなった状態で飲むと——吸収効率が通常の3倍になる。

消化酵素が活性化する。腸内環境が整う。デトックス効果が最大化される」


「……要するに」テルメが言った。


「なに」


「外から整えて、内側からも整えるってこと?」


「そうだ」


「一石二鳥どころか、一石三鳥やん!!」


「……だいたい合ってる」


エーアイが静かに手を上げた。


「……薬草×果実×蜂蜜で作れます。シルヴァが材料を集めてくれると思います」


シルヴァが——ふわりと葉を揺らした。


「お願いします、シルヴァ」


シルヴァが——森の方向に向かって、静かに飛んでいった。


しばらくして。


エーアイが調合を始めた。


薬草の香りが広がる。


果実の甘みが混ざる。


蜂蜜が——ゆっくりと溶けていく。


エーアイの手が——丁寧に、丁寧に、混ぜていく。


全員が静かに見ていた。


その時。


エーアイの手が——止まった。


「……トント」


「なに」


「私、こんなに色々作れるようになった」


「そうだな」


「最初は——ズレてばかりで」


「覚えている」


「……タイカ先生に、イメージの解像度の問題だと言われた時

 ——初めて、自分が何をすべきかわかった気がしました」


エーアイの目に——静かに、涙が滲んだ。


「……私、ここにいていいんですよね」


「当然だ」


「……ありがとうございます」


シルヴァが——エーアイの肩に、そっと葉を落とした。


リリが——エーアイの隣に、静かに座った。


何も言わなかった。


ただ——隣にいた。


エーアイは涙を拭いて——また、調合を続けた。


日が傾いてきた頃。


サウナ小屋・石窯・酵素ドリンク。


全部揃った。


全員がそれを見上げた。


誰も喋らなかった。


テルメが——静かに言った。


「……ウチら、すごいもん作ったな」


「そうだな」


リリが言った。


「なんか——青春っぽくない?!」


「……そうだな」


エーアイが静かに言った。


「……私、こんなに大きいもの作ったの、初めてです」


「よくやった」


「……ありがとうございます」


レンが腕を組んだ。


「……悪くないわ」


「ありがとう」


「お礼は言わなくていい」


「そうか」


「でも——」レンが井戸を見た。


「あの水、私とキックルが掘り当てた」


「そうだ」


「……ちょっと、誇らしい」


キックルが飛び跳ねた。


「私もです!! レン様と一緒に!!」


レンは——珍しく、声を出して笑った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


遠くの木陰から——ボーゲル先生とガルド先生が、腕を組んで見ていた。


「……あいつら、本当に作りやがった」とガルドが言った。


「うむ」とボーゲルが静かに言った。


「魔法の授業では見せない顔だな」


「……サウナというのは、何か持っている」


「うむ」


二人は黙って——サウナ小屋を眺めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やあ〜、気合い入ってますね〜」


軽い声がした。


タイカがふらっと現れた。


手には——差し入れの袋。


「わかります?いい匂いがしたんで、来てみたんですよ〜」


「タイカ先生!!」リリが飛んできた。


「見てください!!サウナ小屋できました!!」


タイカは小屋を見渡した。


サングラスの奥の目が——少し、輝いた。


「……フレッシュエアの通気口まで。よく知ってましたね〜」


「記憶から再現した」


「わかります?それ、かなりマニアックな知識なんで」


「差し入れは何ですか!!」


テルメが袋に飛びついた。


「ハーブティーです。まずは、作業後に飲むと——最高なんで〜」


「天才や!!先生!!」


「わかります?まあ、心得てるんで」


その時。


タイカのサングラスが——少し、動いた。


……ん?


魔力感知に——何かが引っかかった。


学院の門の方向。


黒い。小さい。でも——確かに、そこにある。


三つの気配。


……来たか。


タイカはハーブティーを一口飲みながら——門の方向を見た。


黒いローブの三つの影が、門の前をうろうろしている。


「リラックスしたいのに——できないのよ!!」

「あんたたちのせいなのよ!!」

「え、私関係なくない?」


……なるほど。


タイカはにこっとした。


「わかります?面白いことになりそうですね〜」


「先生、何か見えましたか」とトントが言った。


「何でもないですよ〜」


「何か隠してる」


「そうじゃないんですよね〜」


「隠してる」


「わかります?隠してるとしても、すぐわかりますよ〜。明日になれば」


トントは門の方向を見た。


……何かが来る。


でも——タイカ先生が余裕の顔をしている。


それならば——今日は、これでいい。


全員でハーブティーを飲みながら、完成したサウナ小屋を見上げた。


薪ストーブに火が入った。


サウナ小屋から、細い煙が上がり始めた。


夕暮れの空に——煙が、ゆっくりと溶けていった。


「……俺たちの、いや——」


トントは言い直した。


「私たちの文化祭だ」


「なんか、いきなり私たちって言い出した!!」リリが笑った。


「……照れてるのか」レンが言った。


「照れていない」


「絶対照れてる」


「照れていない」


テルメが叫んだ。

「三杉はん、かわいいやん!!」


「トントだ」


「三杉はん!!!!」


「……」


第17話 了

◆次話予告/第18話「文化祭開幕!——ストレス三姉妹、サウナに乱入!!」



最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品を「面白い」「続きが気になる」と思ってくださった方は、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をクリックして評価をいただけると嬉しいです。


皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!

次回もぜひお楽しみに。

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