第16話「オーユバーラ漂流の真実。聖地は、動いていた」
皆様。
ベシさんです。
いつもありがとうございます。
文化祭。いろんな模擬店などやりましたね~
とにかく、楽しかった!
では!
翌朝。
ダッフル校長から呼び出しがあった。
全員が——校長室に集まった。
いつもは温かい目をした老人が、今日は違った。
机の上に——古びた羊皮紙が広げられていた。
「座りなさい」
校長の声が、静かだった。
静かすぎた。
「昨夜——皆さんも感じたと思います。あの気配を」
誰も答えなかった。
「あれは——魔王ストレッシの、意思だけを送ってきたものです。本体ではない。でも——」
校長は羊皮紙に目を落とした。
「五精霊が揃い、ヴァロが覚醒した。それをストレッシが感知した証拠です」
テルメが小声でトントに言った。
「……昨夜のあれ、やっぱりそういうことやったんか」
「黙って聞け」
校長は羊皮紙を全員に見せた。
「オーユバーラについて——話さなければならないことがあります」
全員が、羊皮紙を覗き込んだ。
そこに描かれていたのは——巨大な地図だった。
でも——普通の地図ではない。
雲の上に、巨大な建物が描かれている。
その建物の周囲に、白い蒸気が漂っている。
封印の光が、建物全体を包んでいた。
「……これは」とレンが言った。
「オーユバーラです」
校長は静かに言った。
「百年前に封印された、サウナの聖地」
「知っています」とトントが言った。
「知っている。でも——知らないことがある」
校長は地図を指で叩いた。
「オーユバーラは——動いています」
沈黙。
「……動いている?」エーアイが聞いた。
「一定の場所にあるわけではない。漂流しているんです」
「漂流!?」リリが目を丸くした。
「どこかを移動しながら——この世界を、ずっと漂っています。だから百年間、誰も辿り着けなかった」
全員が黙った。
地図を見た。
雲の上を漂う、オーユバーラ。
白い蒸気が、絶えず溢れている。
その姿は——まるで。
テルメが、ぽつりと言った。
「……なんやジ○リの、天空のナンチャラみたいやんか」
全員がテルメを見た。
トントが静かに言った。
「それ、この世界の人には意味わからないし——そもそも、だめなやつだよね」
「ちゃうちゃう!ウチ、ほんまにそう思っただけで——」
「テルメ」
「なに?」
「許可、おりんだろうよ」
「……せやな」
校長は続けた。
「オーユバーラが漂流し始めたのは——封印と同時です」
「なぜですか」とトントが聞いた。
「封印前のオーユバーラは、この世界の中心にあった。
世界の魔素を整える、文字通りの聖地だったんです。
それが封印されたことで——世界のバランスが崩れた。
オーユバーラが居場所を失って、漂い始めた」
「……魔物がイライラし始めたのも、その頃からか」
「そうです。大湯原がなくなったことで——世界中が、整えられなくなった。
五不快が広がり始めたのも、全部繋がっている」
「……つまり」トントは地図を見た。
「オーユバーラの封印を解けば——世界が整う」
「そうです」
校長は静かに頷いた。
「でも——問題があります」
「見つけられない」
「漂流しているので、どこにいるかわからない。そして——」
「封印を解く条件が、三つある」
全員が、息を飲んだ。
「一つ目——五基本要素の精霊が全員揃っていること」
水・風・火・石・木。
キックル(水)。ザウル(風)。ファビラ(火)。ペトラ(石)。シルヴァ(木)。
「……揃っている」トントは静かに言った。
「五精霊が揃ったのは——百年ぶりのことです」
室内が、静まり返った。
「でも——五精霊だけでは、力が足りない。そこで重要なのが——ヴァロです」
校長はテルメを見た。
テルメの肩の上で、ヴァロが白く輝いた。
「光の精霊ヴァロは——五精霊それぞれの力を増幅させる、特別な存在。
水をより深く。
風をより強く。
火をより熱く。
石をより固く。
木をより深く根を張らせる。ヴァロがいることで——五精霊の力が、何倍にもなる」
「……ウチの精霊が、鍵やったんか」
テルメが呆然と言った。
ヴァロが——ぽわっと、眩しく輝いた。
「二つ目——オーユバーラの鍵を持つ者がいること」
「……俺か」
「そうです。トント——あなたが転生してきたのには、理由がある」
トントは静かに頷いた。
「三つ目は」
校長は——少し間を置いた。
「オーユバーラが、こちらを認めること」
「……認める?」
「オーユバーラはただの場所じゃない。意志を持っています。
整える力を持つ者だけを——受け入れる」
「どうやって認めさせるんですか」とリリが聞いた。
「整え続けること。それだけです」
校長は静かに言った。
「あなたたちが整え続ける限り——オーユバーラは、必ず近づいてくる」
「テルメ」トントが言った。
「なに」
「ヴァロと一緒に——今すぐ、オーユバーラを探せるか」
テルメは立ち上がった。目を閉じた。
ヴァロが——テルメの全身を、白い光で包んだ。
五精霊が——一斉に反応した。
「……っ!!」テルメの顔が、変わった。
「……でかい!!めちゃくちゃでかい蒸気の気配がある!!
普通のサウナの——千倍!!いや、それ以上や!!」
「どの方向だ」
「北北東!!すごく遠い!!でも——確かにある!!動いてる!!ほんまに動いてるで!!」
「距離は」
「……わからへん。でも——近づいてる。こっちに向かって、ゆっくりと」
「……オーユバーラが、こちらを認め始めている」
校長が静かに言った。
全員が——立ち上がった。
その時。
会議室の扉が——ふらっと開いた。
タイカだった。
サングラスをかけ直しながら、のんびり入ってきた。
「あ、もう終わりましたか〜。すみません〜」
「遅刻ですよ!!」とリリが叫んだ。
「そうじゃないんですよね〜。俺なりの時間感覚があるんで〜」
ダッフル校長が——静かに言った。
「……タイカ。あとは、頼みましたよ」
「わかります?お任せください〜」
タイカは全員を見渡した。
サングラスの奥の目が——鋭かった。
「……皆さん、今より強くなる必要があります。わかります?」
「どうすれば」とトントが聞いた。
「次は——文化祭ですよ〜」
「……文化祭と強くなることが、どう繋がるんですか」
「整いを人に伝えることで——自分も深まるんですよ〜。わかります?」
タイカはにこっとした。
「では——頑張ってください〜」
「もっと説明してください!!」とリリが叫んだ。
「そうじゃないんですよね〜。自分で気づいた方が深くなるんで〜」
「じれったい!!」
ダッフル校長が——ふふ、と小さく笑った。
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その夜。
トントは一人、落ちこぼれ寮の屋根に座っていた。
空を見上げた。
星が、輝いていた。
オーユバーラは、あの空のどこかを漂っている。
百年間、一人で。整えてくれる者を、待ちながら。
右手に——ザウルが揺れた。
……お前も、待ってたんだな。俺のことを。
ザウルが、静かに頷いた。
「……行くぞ」
誰もいない夜に、静かに言った。
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翌朝。
「文化祭の出し物、決まりましたよ!!」リリが飛び込んできた。
「サウナ出店、やる事になりましたよ!!」
「ああ、やろう!」
「しかも——今年の文化祭、セルマ国民はもちろん、他国からの商人や旅人も参加できるって!!」
テルメの目が——輝いた。
「……ほんまに?! 他の国の人も来るん?!」
「はい!!毎年恒例の大きなお祭りです!!」
テルメが拳を握った。
「……ウチ、絶対ここで一番人気にしたるで!!」
「頼む」とトントが言った。
「サウナ出店だけじゃなくて——サウナ飯も出そう」
「え!!」リリが目を丸くした。
「マッカラを焼く。酵素ドリンクも作る。
サウナで外から整えて——飲み食いで内側からも整える」
「……完璧やん!!」テルメが叫んだ。
エーアイが静かに言った。
「……看板、作ります」
レンが腕を組んだ。
「……私も、手伝ってあげる」
「ありがとう」
「お礼は言わなくていいわ」
「そうか」
全員が——動き始めた。
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その頃。学院から遠く離れた場所。
黒いローブを纏った三人の影が、歩いていた。
「ねえ、この道で合ってる?」
「合ってるわよ!あなたのせいで遅くなったんじゃない!」
「え、私関係なくない?」
「関係大ありよ!!」
「リラックスしたいのに——できないのよ!!あんたたちのせいなのよ!!」
三人は——アルカナ魔法学校の方向に、歩いていた。
……来る。
誰かが、静かに予感した。
◆次話予告/第17話「文化祭準備——石窯と酵素ドリンクとエーアイの涙」
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!
次回もぜひお楽しみに。




