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第14話「期末昇級テスト。全員合格への道」

皆様。

ベシさんです。

いつも、誠にありがとうございます。


さて。

試験。 なんでも試験があります。

私もサウナの資格試験。受けました。。。 結果は。。 


ふう。実地試験代わりにサウナでも行ってこよ。


では!


テスト当日の朝。


アルカナ魔法学校の大訓練場に、全生徒が集まっていた。

タイカが全員の前に立った。

「じゃあ、テストの説明をしますね〜」

「今日の試験は——単体での擬似戦闘形式です」

「単体、ですか」とレンが聞いた。

「そうです〜。一人ずつ、学院が用意した魔法演習体と戦ってもらいます。合格ラインに達したと審判が判断したら終了です」

「相手の強さは?」

「わかります?各自の実力に合わせて調整されてるんで、ちょうどいいくらいの強さです〜」タイカはにこっとした。

「では——始めましょうか〜」

最初はリリだった。訓練場の中央に、一人で立つ。

演習体が現れた。黒い霧のような体。

ノイズ系の魔法——不快な振動と騒音を放つタイプだ。

「っ……うるさい」リリは耳を塞いだ。

頭の中に、不快な音が響く。スモールファイヤが——乱れた。

「炎が……まとまらない」演習体が近づいてくる。

ノイズ——第一不快。集中力を奪う。魔法の制御を乱す。

「……リリちゃん、頑張れ」テルメが外から叫んだ。

リリは歯を食いしばった。


*だめだ。音がうるさくて、炎に集中できない。

*その瞬間。リリの手のひらに——温かさが宿った。

肩の上で、ファビラが——ぽっ、と光った。

スモールファイヤが——金色に変わった。三週間前、整いの夜に覚醒したあの色だ。

*そうだ。整った時の感覚を思い出せ。サウナの中で、全てが静かになった、あの感覚。

*リリは深呼吸した。鼻から吸って、ゆっくり吐く。ノイズが——遠くなった。

「……できる」金色の炎が、大きく広がった。演習体を包んだ。

「合格——」審判が旗を上げた。

リリはへたり込んだ。

「……つかれた」

「よくやった」とトントが言った。

ファビラが、リリの肩でぽっと光った。


次はエーアイの番。

演習体が現れた。バーンアウト系——燃え尽き、無気力を植え付ける第五不快のタイプだ。

エーアイは目を閉じた。生成魔法を発動する。

……頭の中が、ぼんやりする。

何を作ればいいか——わからない。

どうせ、ズレる。どうせ、うまくいかない。

「……っ」生成魔法が——発動しなかった。

バーンアウトの毒が、心に忍び込んでいた。

演習体が、じわりと近づいてくる。

エーアイは膝をついた。

「エーアイさん!」リリが叫んだ。

どうせ無理だ。私には——


「……違います」自分の声が、聞こえた。

*タイカ先生が言っていた。集中の問題じゃない。イメージの解像度の問題だ。

*エーアイは目を開けた。足元に——緑色の光が集まっていた。シルヴァだった。

木の精霊が、エーアイの足元でふわりと揺れた。

「……来てくれたんですね」シルヴァが葉を揺らした。

エーアイは立ち上がった。

「——盾。硬さ:最大。厚さ:五センチ。素材:鉄」

ぼわっ——。完璧な盾が現れた。

ズレなし。


「——剣。刀身:六十センチ。」ぼわっ——。

完璧な剣が現れた。

エーアイは剣で演習体を切った。

「合格——」審判が旗を上げた。

エーアイはシルヴァを見た。

「……ありがとうございます」シルヴァが、ふわりと葉を揺らした。




次はレンの番だ。


演習体が現れた。ソリテュード系——孤独と断絶を植え付ける第四不快のタイプだ。

「……来なさい」レンは魔力を集めた。

水柱が走る。演習体が後退する。

十発。二十発。体が、重くなってきた。体力が——限界に近い。

「……っ」膝が、揺れた。

その瞬間——孤独感が、心に忍び込んできた。

*一人だ。誰も助けてくれない。ラハティ王国でもそうだった。魔力が高いから、孤独だった。

*魔法が、弱くなった。

「レン様!!」キックルが叫んだ。

「——大丈夫よ」

「大丈夫じゃないです!!」レンは笑った。

「……心配しなくていい。私には——」キックルを見た。

「——あなたがいる」キックルの体が——青白い光に包まれた。

水の精霊が——覚醒した。

「レン様!!」キックルが光の中から、レンに向かって何かを送った。

水の魔素が——レンの体に流れ込んだ。体力が、回復した。

「……キックル」

「一人じゃないです!レン様!!」レンは立ち上がった。

魔素が——爆増した。体から、金色の光が溢れた。

水の柱が——演習体を吹き飛ばした。

「合格——」審判が旗を上げた。

「……ありがとう」

「いいえ」キックルが笑った。

「一緒に戦いましょう、レン様」


次はテルメだった。

演習体が現れた。

グルーム系——ネガティブオーラを放つ第二不快のタイプだ。

「……来い」テルメはナビゲーターを発動した。

「右から来る——今!左!」テルメが動く。

 演習体がかすめる。

「次——上から!伏せ!」テルメが伏せる。

オーラが頭上を通る。

「次——」テルメは止まった。

「……あれ?」ナビゲーターが、乱れていた。

グルームのオーラが——魔素の感知を妨害していた。

「……見えへん。どっちから来るか、わからへん」演習体が、じわりと近づいてくる。

「……テルメさん!!」リリが叫んだ。

「うるさい!考えてる!!」テルメは目を閉じた。

*あかん。ナビゲーターが使えへん。

ウチには、これしかスキルがないのに。

精霊もいない。

魔法も使えない。

ウチは——何もできひん。

*グルームの毒が、深く入り込んでいた。

「……テルメ」トントの声がした。

「……なに」「お前のナビゲーターは、魔素だけじゃない。空気の流れも読める。温度も読める」

「……でも、今は乱れて——」

「ならば——体で感じろ」テルメは目を開けた。

ナビゲーターじゃない。

自分の、皮膚で。空気の流れ。温度の微妙な変化。

「……あ」右後ろから——わずかに冷たい空気が来た

。テルメは右後ろに跳んだ。演習体の攻撃が、ぎりぎりかすめた。

「……できた」

「合格——」審判が旗を上げた。

テルメはへたり込んだ。

「……ウチ、精霊なしで合格したわ」

「最高だよ、テルメ!」トントが言った。

「……でもなんで、ウチには精霊おらんのや!!なんでや!!」

「タイカ先生!!!???」

タイカはにこっと微笑みながら。

「そうじゃないんですよね〜。焦ると来ないんで」

「くぅぅーー。じれったい!!」

最後はトントだった。

全員の視線が集まる中、訓練場の中央に立った。

演習体が現れた。

一体。二体。三体。「……三体か」

「わかります?トントさんだけ、三体なんですよ〜」とタイカが遠くから言った。

「なぜですか」

「一番、試す価値があるんで〜」

トントは和紙糸タオルを構えた。

演習体が——それぞれ違う属性だった。

ノイズ。グルーム。ラース。三種の不快が、同時に襲ってくる。


「……面白い」


一体目——ノイズ系。

深呼吸で、不快な音を遠ざける。

ロウリュ——蒸気を放つ。ノイズ系の演習体が、蒸気に包まれた。

整わされて、動きが止まった。

二体目——グルーム系。ネガティブオーラが迫る。

*整った体は、グルームに強い。

*アウフグース——タオルを回す。

風が、ネガティブオーラを散らした。

「……残り一体」ラース系——怒りの衝動を植え付けるタイプだ。トントは冷静に観察した。

*俺は怒らない。整っているから。

*ロウリュを放った。

ラース系が——蒸気に包まれた。怒りの衝動が、すうっと消えた。


「合格——」審判が旗を上げかけた。




その瞬間。

「……?」四体目が現れた。



「……これは、演習体ではない」

黒い。深い。重い。演習体とは、全く違う魔素だった。



「この魔素は——テルメ??」

「……やばい。めちゃくちゃ濃い。黒い。今まで感じたことない種類や」

「全員、後退しろ!!」トントが叫んだ瞬間



ドォン!!黒い魔法が炸裂した。



煙が晴れた。トントは立ち上がった。

周囲を見渡した。

「……」透明な壁に囲まれていた。


六面体の、完全な結界。

外に——テルメとリリとエーアイとレンが、必死に叫んでいる。声が、聞こえない。完全な無音。

いつの間に。模擬戦の中に——本物が紛れていた。

結界の中。薄暗い影の中に、一人の人物が立っていた。

女性だった。黒いローブ。無表情。冷たい目。

見たことがある顔だった。……クラスにいた生徒だ。

いつの間にいたのか、顔も名前も記憶に薄い——

「あなたが——スパイだったのか」


低い声が、聞こえた。

「……ようやく気づきましたか。メランと申します。ずっと、生徒に化けていました」

「第二不快——グルーム・シェードの使い手。か?」

「そうです。あなたに——用があります」

「オーユバーラの事か」

「……察しがいいですね」メランが手を上げた。

結界の内側に——黒いオーラが満ちてきた。

「ネガティブオーラの中では——どんな魔法も、力を失います。あなたのロウリュも、アウフグースも」トントは和紙糸タオルを構えた。

「やってみなければわからない」


「……無駄ですよ」



結界の外。テルメが壁を叩いていた。

「トント!!トント!!!」声が届かない。

「どうすんの!!どうやって助けるの!!」レンが結界を調べた。

「……グルームの結界。かなり高度な術式だ。私の魔力では、時間がかかる」

「ウチのナビゲーターで弱点を探す!」テルメは目を閉じた。

「……読んでる——あ、ここに——いや、違う——」テルメの顔が、歪んだ。

「……ウチ、精霊がおらんから、魔素が足りひん!!なんでワシには精霊おらんのや!!なんでや!!」

「トントが危ないのに、ウチ何もできひんやんか!!」テルメの目に——涙が滲んだ。

結界の中。

黒いオーラが、トントに迫っていた。

「……これが、グルームです。あなたの心に、諦めと絶望を植え付ける」

「……効かない」

「なぜ」

「仲間がいるからね」

「……それでも、限界があります」黒いオーラが、さらに濃くなった。トントは和紙糸タオルを構えた。

*熱源がない。蒸気が出せない。

ロウリュができない。アウフグースができない。

……どうする。

*グルームのオーラが——トントの体に触れた。重い。暗い。孤独だ。また一人だ。手術室でも、一人だった。




「……違う」トントは目を閉じた。



*整った夜を思い出せ。星空の下で、全員が笑っていた。テルメが泣きながら笑っていた。レンが、初めて本当に笑っていた。俺は——孤独じゃない。

*その瞬間。トントの右手に——何かが触れた。風だった。結界の中に——風が吹いていた。小さな、でも確かな風。「……ザウル?」風が、形を持った。半透明の、小さな生き物。羽のような形。風の流れそのものが、体になっているような。

「……お前が、俺の精霊か」ザウルは答えなかった。

でも——確かに、頷いた。

「……熱源はない。でも——風があれば」トントはタオルを構えた。ザウルが、タオルに宿った。

「アウフグース」タオルを、大きく回した。

ブォン——。風だけのアウフグースだった。

蒸気はない。香りもない。

ただ——澄んだ、清らかな風。

その風が、黒いオーラを——押し返した。

「……!!」メランが後退した。

「な……なぜだ、どうして風が...。」

「風は、全てを運ぶ。熱も、香りも、蒸気も

——そして、整いも」

トントはもう一度、タオルを回した。

風がさらに強くなった。

黒いオーラが、散っていく。

でも——「……っ」トントの足が、震えた。

ザウルはまだ覚醒したばかりだ。魔素が、足りない。

「……まだ、壁が崩れない」ビシッ——。

結界に、小さなひびが入った。

でも——それだけだった。「……もう一度」タオルを回した。

足が、さらに震えた。ビシビシッ——。ひびが、広がった。


「……あと、一回」トントは最後の力を振り絞った。ブォォォン——!!結界が——大きく揺れた。

でも。「……っ」トントは膝をついた。限界だった。

ザウルが——心配そうに揺れた。

「……大丈夫だ。ひびは入った」結界の外から——テルメの叫び声が聞こえた。

声が、わずかに通るようになっていた。

「トント!!聞こえる!!??」

「……聞こえる」

「ひびの位置——ウチのナビゲーターで見える!!右上から三番目の角!!今、一番弱くなってる!!」

レンが魔力を集めた。

「……今よ!!」水の柱が、ひびに直撃した。

ガラン——。

結界が、崩れた。全員が、駆け込んできた。

「トント!!」

「……ああ、大丈夫だ。」

「しっかりして!!」とリリが叫んだ。

トントはフラフラしながら立ち上がった。

「……まだ終わっていない」


メランが——結界の崩壊にも動じず、そこに立っていた。冷たい目で、全員を見渡した。

「……なるほど。仲間を信じる力——これが、あなたたちの強さですか」

「そうだ」

メランは静かに、全員を観察した。

……データは揃った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リリ——炎の精霊覚醒。

エーアイ——木の精霊覚醒。

レン——水の精霊覚醒。

テルメ——精霊なし、だがナビゲーターが厄介。

そして——トント。風の精霊の覚醒。ロウリュとアウフグース。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


これが最も危険だ。

メランの目が——トントに止まった。

……今ならば。消耗しきったこの瞬間ならば

トントを、ここで仕留められる。

黒いオーラが、メランの手に集まり始めた。

「……」トントはメランを見た。

体が、まだ震えていた。

ザウルが——トントの肩で、警戒するように揺れた。

「……!」


その瞬間。



「そうじゃないんですよね〜」



静かな声が、響いた。

タイカ・パラスが——いつの間にか、メランとトントの間に立っていた。


サングラスの奥の目が——鋭かった。

お気楽な雰囲気は、完全に消えていた。

「……タイカ・パラス」メランの手のオーラが——止まった。

「国王直属魔法騎士団団長。あなたがここにいるとは——想定外でした」

「そうじゃないんですよね〜。俺がいない場所の方が少ないんで。わかります?」

タイカは静かに右手を上げた。ペトラが——タイカの肩で、重く光った。


「今日のデータは十分集まったでしょう。お引き取りを」



メランは——一瞬だけ、タイカを見た。……戦える。

でも、ここで消耗するのは得策ではない。

トントの始末は。次の機会に。


「……賢明な判断をありがとうございます、団長殿

 いや、タイカ先生。」メランは静かに一礼した。

「また——お会いしましょう」黒い霧に溶けて、消えた。

静寂が戻った。

タイカはサングラスを直した。


「……皆さん、お疲れ様でした〜。」


「全員、合格です〜」



テルメが叫んだ。

「合格より先に、説明することあるやろ!!!」


「そうじゃないんですよね〜。説明は——次の機会に」


「じれったい!!!」


全員が、思わず笑った。トントはタイカ先生を見た。

……あの瞬間、先生が間に入らなければ——俺は、やられていた。

「……タイカ先生」

「なんですか〜」

「ありがとうございました」タイカは——にこっと笑った。

「そうじゃないんですよね〜。俺は何もしてないんで。わかります?」

*わからない。でも——今は、それでいい。

トントはザウルを見た。小さな風の精霊が、トントの肩で静かに揺れていた。


……よろしく、ザウル。

*ザウルが——そっと、頷いた。



—-------------------------------------

その夜。

メランが——闇の中で、静かに報告していた。

「……データは揃いました」

返答は——なかった。

ただ。

低く。冷たく。

「……ご苦労」

その声だけが、闇に響いた。



――つづく――


◆次話予告/第15話「本当の魔法——タイカ先生と、精霊たちの奇跡」




最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


この作品を「面白い」「続きが気になる」と思ってくださった方は、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】をクリックして評価をいただけると嬉しいです。


皆様の応援が、異世界サウナ夢想の最大のモチベーションになります!

次回もぜひお楽しみに。

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