第12話「昇級請負人!タイカ先生、現る!」
皆様。
ベシさんです。
いつも、ありがとうございます!
学校。 テストばかりでしたね。。
勉強する為の学校。。でも、遊びたい。。。。
あぁ。 サウナ行こ。
では!
夏休みが明けた翌朝。
アルカナ学院の掲示板に、一枚の紙が貼られていた。
『期末昇級テスト 三週間後 実施』
『不合格者は、即日退学となります』
「……え?」リリが固まった。
「即日退学? 留年じゃないの?」
「この学院に留年はないのですよ。」
とエーアイが静かに言った。
「進級か、退学か——それだけです」
「そんな制度、知らなかった!!」
「入学式で説明がありましたよ」
「聞いてなかった!!」
テルメが青ざめた顔で言った。
「……ウチ、魔法の成績、めちゃ悪いで。先生の恥部をさらすナビなんてしたらアカンかったんやわ」
「私は、座学はまあまあだけど、魔法実技がなぁ、魔力もほとんどないし、応用魔法も苦手。。」とトントが言った。
「エーアイさんは?」
「……生成魔法しかできないので、試験では——苦労します。。」
「アウト寄りか」
全員が黙った。重い空気が漂う中——
「あ、どうも〜」
廊下から、軽い声がした。全員が振り返った。
そこに——長身の男が立っていた。
銀色の髪がくしゃっとしている。細身。サングラス。
ローブは着ているが、なんとなくだらっとしている。
威圧感は——ゼロだ。
「昇級請負人です。よろしくお願いしますね〜」にこっと笑った。
テルメが小声でトントに言った。
「……この人、誰?」
「わからない」
「なんか、頼りなくない?」
「……ちょっと黙って見とこう」
先生は掲示板をちらっと見た。
「あ、三週間後ですね。じゃあ、時間ないので早速始めましょうか」
「え、もう?」とリリが言った。
「そうじゃないんですよね〜。時間って、あると思ってる間に終わるんで」
「……どういう意味ですか」
「わかります? 三週間って、体感的には一週間くらいなんですよ。人間の時間感覚って、そういうもんで」
「は、はあ」
先生は全員をさらっと見渡した。一秒ずつ。「……じゃあ、行きましょうか」
―――
訓練場に移動した。先生は腕を組んで、全員を見た。
「まず確認なんですけど。あなた達、自分の弱点、わかってます?」
「……なんとなくは」とテルメが言った。
「なんとなく、がダメなんですよね〜。なんとなくわかってる人って、結局わかってないんで。ハッキリ言いますね」
先生はテルメを見た。「テルメさん。ナビゲータースキル、持ってますよね」
「はい」
「でも、情報を掴んでから口に出すまでが、遅い」
テルメがびっくりした。「え? 遅い?」
「0.5秒、遅いんですよ。戦場では、その0.5秒でやられちゃうんで。」
「……そんなに遅いんですか、ウチ。
口から生まれたんか、アンタ。
とオカンには常に言われていました。。。
学校の先生にも、お前はピーチク パーチクうるさいなあと煙たがられて。。。」
「ハイハイ。わかります? ナビゲーターって、情報を掴む能力じゃないんですよ。掴んだ情報を、即座に使う能力なんで。そこが課題です。余計な事を話す前に、的確に、伝える事。わかります?」
テルメは黙った。
先生はリリを見た。「リリさん。スモールファイヤ、弱いって言われてきましたよね」
「……はい」
「言った人、全員間違ってます」リリが目を丸くした。
「え?」
「弱いんじゃなくて、使い方をわかってないだけなんですよね〜。精密な炎って、魔法陣と組み合わせると、大砲より強くなるんで」
「大砲より!?」
「わかります? 火力って、大きさじゃないんですよ。精度なんで」
先生はエーアイを見た。
「エーアイさん。生成魔法、たまにズレますよね」
「……はい、すみません」
「謝らなくていいんですよ〜。ズレる理由、集中の問題だと思ってます?」
「……はい」
「そうじゃないんですよね〜。
イメージの解像度の問題なんで。
頭の中の設計図が、ぼんやりしてるんですよ。鮮明にする訓練をすれば、ズレなくなります」
「……そうだったんですか」
「わかります? エーアイさんの魔法って、実は完璧に近いんですよ。あと少しで、何でも作れるようになるんで。」
エーアイの目が、わずかに輝いた。
先生は最後に、トントを見た。サングラスの奥の目が——少し、変わった。
「トントさん。あなたは——」
「魔力は限りなくゼロだ」
「みたいですね」
「攻撃魔法も使えない」
「ウンウン、そうですねぇ」
先生は少し間を置いた。
「——でも、昇級に一番近いの、あなたですよ」
全員が、トントを見た。
「なぜですか」
「わかります? 昇級テストって、魔法の強さを測るんじゃないんですよ。判断力と、応用力を測るんで。あなた、それが一番高いんですよね〜」
「……買い被りでは。。」
「そうじゃないんですよね〜」
先生はにこっと笑った。
「ただ——一つだけ、課題があります」
「なんだ」
「あの技、アウフグース。ですか、
まだ荒削りです」
トントは動かなかった。
「タオルの回し方。
見てましたけど——蒸気の流れが、まだ均一じゃないんですよ。もったいないんですよね〜。あの技術、完成したら——」
先生は少し間を置いた。
「オーユバーラの封印を、解けるかもしれないんで」
静寂。テルメが「オーユバーラ?」と首を傾げた。
でもトントは——動かなかった。
……知っている。この先生。
俺がこっそり練習してた、アウフグースの事!
恥ずかしい。。。。 テルメを練習相手に、熱波師を気取っていた俺。。。
オーユバーラよりも、アウフグースの事で頭がいっぱいだ!
「……先生」
「はい」
「あなたは何者ですか」
先生はサングラスをくいっと上げた。
「昇級請負人ですよ〜。言いましたよね、最初に」
「それだけですか」
「わかります? 肩書きって、一つじゃないんですよ〜」
にこっと笑って、それ以上は言わなかった。
テルメが追いかけた。「先生! 名前、聞いてないんですけど」
「あ、言ってなかったですね〜」先生は振り返った。
「タイカです。タイカ・パラス」
「タイカ先生!」
「まあ、先生でいいですよ〜。じゃあ、明日から本格的に始めましょう」
ふらっと歩いていった。
テルメがトントに言った。
「……なんなん、あの人」
「わからない」
「でもなんか——」リリが言った。
「すごい人な気がする」
「そうだな」とトントは静かに言った。
*タイカ・パラス。*
……フィンランド語で、魔法・最強。だよな。。
この世界最強の魔法使い。なのか?
オーユバーラの封印を解けるかもしれない——何のことなんだ........。
そして、なぜ俺に言った。
―――
その夜。優等生寮の一室。レンが一人、机に向かっていた。
手元には——成績表。
魔力実技:最高評価。
魔法理論:優秀。
魔法史:優秀。
そして——
感情制御:不合格。
魔法応用実技:不合格。
緊急時魔法制御:危険レベル。
総合評価:要観察。
「……」
レンは成績表を裏返した。誰にも、見せたくなかった。
ラハティ王国では、魔力さえあれば全てが許された。
私の魔力は——誰にも負けない。それだけで、十分だと思っていた。
でも——ここでは違う。
キックルが、机の上でそっとレンの手に触れた。
「……レン様........。また見てるんですか?」
「……見てない」
「成績表。見てましたよね。」
レンは黙った。
「感情制御が不合格なのは——レン様が感情を持っているからだと思います」
「……慰めないで」
「慰めてません。本当のことを言ってます」
キックルの水色の光が、静かに揺れた。
「水魔法は——感情と連動します。レン様の魔力が大きいほど、感情が激しいほど——制御は難しくなる。でも——」
「でも?」
「それは同時に——誰より深く、誰より強く、相手の心に届く力でもあります」
レンは成績表を見た。
要観察。
私が——要観察。
屈辱だった。
でも——キックルの言葉が、頭から離れなかった。
窓の外に、風が吹いた。
……トントは、なんと言うだろう。
レンは成績表を引き出しの奥に押し込んだ。
誰にも——まだ、言えない。
そのとき。コンコン。扉がノックされた。
「はい」
「タイカです〜」
レンが固まった。「……なぜここに」
扉が開いた。タイカがふらっと入ってきた。
「久しぶりですね、レンさん。生まれた時から知ってますけど、こんなに大きくなって」
「……どうされたのですか?。あなたが来るような場所じゃ——」
「そうじゃないんですよね〜」
タイカはにこっとした。
「目的があったんで」
「目的?」
「わかります? 落ちこぼれ寮に、面白い子がいるんですよ〜。魔力ゼロなのに、あの技術を持ってる子が」
レンの目が、細くなった。
「……トントのことですか」
「知ってたんですね〜。さすがです」
「……あの子に、何をするつもりですか」
「試すだけですよ〜」タイカは立ち上がった。
「レンさんも——昇級テスト、ちゃんと通りましょうね。退学になったら困るんで」
「なぜあなたが知って——」
「わかります? 成績って、関係者には筒抜けなんですよ〜」
タイカはふらっと出ていった。
レンはしばらく、閉まった扉を見ていた。
キックルが小声で言った。
「……タイカ様、相変わらずですね」
「……そうね」
「でも——レン様のことを、心配しているんだと思いますよ」
レンは黙った。
「……サウナ、続けます」「はい」とキックルは微笑んだ。
―――
翌朝。タイカが訓練場に向かっていると、廊下で待っている人物がいた。
レンだった。「……昇級の、相談があります」
タイカはにこっとした。
「やはり、来ましたね。」
「え?」
「もうそろそろ来るだろうなと思ってたんで」
「……落ちこぼれ寮と一緒に特訓、ということですか」
「そうじゃないんですよね〜。落ちこぼれ寮って、あなたにないものを全部持ってるんで。あなたは彼女たちにないものを持ってる。お互いに、ちょうどいいんですよ」
レンはしばらく黙った。
「……わかりました」
タイカは歩き始めた。そして——ふと振り返った。
「レンさん」「なんですか」
「サウナ、続けてください。あれで乗り越えられますよ〜」
レンの目が、わずかに丸くなった。
「……なに、なんで??」
「わかります? 整った体って、持久力が全然違うんで」
にこっと笑って、歩いていった。
レンはしばらく、その背中を見ていた。
キックルが小声で言った。
「……すごい先生ですね」
「……色々あの人はあるのよ。。」
*タイカ・パラス。魔法・最強。*
*……この人は、何を知っているのか。*
【次話予告】第13話「三週間の特訓——アウフグース覚醒!」
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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次回もぜひお楽しみに。




