第94話 崩壊
「……来たぞ」
誰かの声。
震えている。
理由は一つ。
「……」
レインが、前にいる。
それだけ。
「……」
敵軍の動きが、鈍る。
わずかに。
だが確実に。
「……何だ、あいつは」
「……」
答えは出ない。
出る前に――
「――」
レインが、踏み出す。
一歩。
それだけで。
「……」
最前列が、消える。
「……は?」
理解が追いつかない。
「……」
もう一歩。
横の列が、崩れる。
まとめて。
「な、何が起きてる!?」
叫び。
だが。
止まらない。
「……」
前に進む。
ただ、それだけ。
その軌道上の敵が――
すべて、消える。
「下がれ!!」
敵指揮官が叫ぶ。
「距離を取れ!!」
遅い。
「……」
レインが、手を上げる。
軽く。
振る。
「――」
衝撃。
目に見えない何かが、広がる。
前方一帯。
敵兵が――
一斉に吹き飛ぶ。
「……っ!?」
地面がえぐれる。
陣形が、消える。
「……」
沈黙。
一瞬で。
戦場の一角が、空白になる。
「……嘘だろ」
誰かが呟く。
「……」
それは、敵だけではない。
王国側も、止まる。
「……何あれ」
カレンが、引いた声で言う。
「今さら?」
「今さらよ!!」
ミアは、完全に目を輝かせている。
「すごいです!!」
「語彙がそれしかないの?」
「すごいです!!」
「まあそうだけど!!」
「……」
リリアは、静かに前を見る。
「……」
戦場。
さっきまで。
押されていた。
崩れかけていた。
それが。
「……」
逆転どころではない。
構造が、壊れている。
「……」
敵が、下がる。
無意識に。
恐怖で。
「……」
レインは、止まらない。
前に進む。
それだけで。
戦線が、後退する。
「……」
誰も、止められない。
「……」
カレンが、小さく笑う。
「……これ」
「戦争じゃないわね」
「はい」
リリアも頷く。
「一方的です」
ミアが元気よく言う。
「勝ちです!」
「気が早いのよ」
だが。
否定はできない。
「……」
戦場は、すでに。
“崩壊”していた。




