第92話 劣勢
「押し返せ!!」
怒号。
剣と剣がぶつかる音。
爆発。
悲鳴。
戦場は――
完全に、崩れ始めていた。
「ぐあああ!!」
最前線。
王国兵が、吹き飛ぶ。
「隊列を保て!」
「無理だ、押されてる!!」
敵の圧力。
重い。
速い。
強い。
「……っ」
カレンが舌打ちする。
「予想以上ね……!」
「はい……!」
リリアも、顔を歪める。
「このままでは……」
言葉が続かない。
分かっているから。
「……」
ミアが震える。
「みんな……」
前線。
一歩。
また一歩。
後退している。
「下がるな!!」
「持たないんだよ!!」
「くそっ……!」
盾が割れる。
剣が弾かれる。
「……!」
魔法障壁が、砕ける。
光が散る。
「防げない!」
「数が多すぎる!」
「……」
敵は止まらない。
波のように。
何度でも。
押し寄せる。
「……」
リリアが、静かに言う。
「……三分」
「え?」
カレンが振り向く。
「このままなら」
「前線は三分で崩壊します」
「……」
現実。
冷酷な。
「……」
ミアの顔が青くなる。
「そんな……」
「……」
騎士たちも、焦り始める。
「第二列、前へ!」
「無理です!押し返せません!」
「後退するな!!」
「後ろも詰まってるんだよ!!」
混乱。
崩壊の兆し。
「……」
カレンが、歯を食いしばる。
「……これ、ダメね」
「……」
リリアも、否定しない。
「はい」
「正面では、持ちません」
「……」
ミアが、必死に叫ぶ。
「どうするんですか!?」
「……」
誰も、すぐに答えられない。
その中で。
「そうなんですね」
場違いな声。
「……」
カレンが振り向く。
「今それ言う!?」
「押されてますね」
「見りゃ分かるのよ!!」
「……」
レインは、変わらない。
ただ、前を見る。
崩れていく戦線。
逃げる兵。
押し寄せる敵。
「……」
そして。
一歩。
前に出る。
「じゃあ、止めますね」
「だから軽いのよ!!」
だが――
その声は。
どこか。
救いに聞こえた。




