第91話 開戦
「――進め」
その一言。
それだけで。
世界が、壊れた。
「――ッ!!」
大地が震える。
敵軍が、一斉に動く。
踏み込み。
怒号。
地響き。
「来るぞ!!」
王国側の叫び。
「弓兵、構え!」
「魔法部隊、準備!」
「前衛、耐えろ!!」
指示が飛び交う。
一瞬で。
静寂は消えた。
「……っ」
ミアが息を呑む。
「すごい……」
「これが戦争よ」
カレンの声も、低い。
だが――
震えてはいない。
「……来るわよ!」
次の瞬間。
「撃てぇ!!」
矢が、空を覆う。
無数。
黒い雨のように。
「――防げ!」
魔法障壁。
光が広がる。
衝突。
爆ぜる音。
「……!」
視界が揺れる。
そのまま。
敵前衛が、突っ込む。
「ぶつかるぞ!!」
「受け止めろ!!」
衝突。
金属音。
衝撃。
悲鳴。
「ぐあああ!!」
「押されるな!!」
「くそっ……強い!」
最前線。
すでに。
押されている。
「……!」
カレンが前に出る。
「行くわよ!」
剣が走る。
一閃。
敵兵が吹き飛ぶ。
「次!」
「はい!」
ミアが魔法を放つ。
光弾。
爆発。
敵を巻き込む。
「やりました!」
「まだよ!」
終わらない。
次が来る。
次が。
次が。
「……数が多すぎる!」
騎士が叫ぶ。
「押し切られるぞ!」
「踏ん張れ!!」
だが。
じわじわと。
押されていく。
「……」
リリアが、前線を見る。
冷静に。
状況を読む。
「……想定以上です」
「ええ」
カレンも歯を食いしばる。
「このままだと崩れる」
「……」
ミアが振り向く。
「どうしますか!?」
その時。
「……」
レイン。
一歩も動いていない。
ただ。
前を見ている。
「……」
騒音。
叫び。
爆発。
そのすべての中で。
異様な静けさ。
「……」
そして。
ぽつりと。
「そろそろいいですか?」
「何がよ!!」
カレンが叫ぶ。
「好きにやりましょうか」
「最初からやりなさいよ!!」
レインが、一歩前に出る。
その瞬間。
空気が、変わる。




