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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第88話 温度差

「……以上です」


報告が終わる。


戦略室。


重い沈黙。


誰も、すぐには動けない。


「……」


三倍の戦力差。


精鋭。


援軍なし。


時間が経てば不利。


「……」


誰がどう見ても。


詰み。


「……」


カレンが、深く息を吐く。


「……最悪ね」


「ええ」


リリアも静かに頷く。


「状況は、かなり厳しいです」


「かなりどころじゃないでしょ」


「……」


ミアが小さく言う。


「怖いです……」


「……」


誰も、否定できない。


その中で。


「何とかなりますよ」


場違いな声。


「……」


全員、止まる。


「……は?」


カレンが振り向く。


「今、何て言った?」


「何とかなりますよ」


「……」


沈黙。


「……」


「何を根拠に?」


「特にないです」


「ないのかよ!!」


即ツッコミ。


「いやいやいや」


カレンが頭を抱える。


「状況理解してる?」


「してますよ」


「三倍よ?」


「はい」


「精鋭よ?」


「そうですね」


「詰んでるのよ普通は!」


「普通なら、ですね」


「……」


また、それ。


「……」


カレンがゆっくりと顔を覆う。


「……ダメだわこの人」


ミアが、おずおずと言う。


「でも……」


「レインさんが言うと」


「大丈夫な気がします」


「……」


カレンがちらりと見る。


「……分かるのが腹立つのよ」


「えへへ……」


リリアは、静かにレインを見る。


「……」


その目。


観察。


理解。


そして――


納得。


「……理由はありますね」


「え?」


カレンが反応する。


「何よ」


「“本人がそう思っている”」


「……」


「それだけで、十分です」


「……」


カレンが、ため息をつく。


「……意味分かんない理屈ね」


「ですが、事実です」


「……」


騎士たちも、ざわつく。


「……確かに」


「先ほどの戦闘を見た限り……」


「……」


完全には否定できない。


理屈ではなく。


経験で。


「……」


レインは、変わらない。


「準備すればいいだけですよ」


「簡単に言うわね……」


「やることは同じです」


「倒すだけなので」


「スケール!!」


カレンが叫ぶ。


「スケールが違うのよ!!」


「そうなんですね」


「だから軽いのよ!!」


ミアが笑う。


「いつも通りです!」


「それが一番怖いのよ」


リリアは、小さく笑った。


「……ええ」


「頼もしいですね」


重い空気の中。


ただ一人。


変わらない存在。


その温度差が――


逆に。


全員の支えになっていた。

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