第86話 外側
「――報告いたします」
低い声が、王城に響く。
謁見の間。
先ほどとは違う空気。
重い。
張り詰めている。
「国内の騒動については」
「現在、鎮圧が進んでおります」
騎士が頭を下げる。
「ですが――」
一瞬、言葉が止まる。
「申せ」
王の声。
静かだが、圧がある。
「……隣国の動きが、活発化しています」
「……」
空気が変わる。
「国境付近にて」
「兵の集結を確認」
「規模は……」
「……大軍です」
「……」
ざわめき。
貴族たちの顔色が変わる。
「……偶然ではないな」
誰かが呟く。
「はい」
騎士が頷く。
「国内の混乱と、ほぼ同時です」
「……」
沈黙。
重い。
「……繋がってるわね」
カレンが小さく言う。
「ええ」
リリアも頷く。
「内側を乱し、外から攻める」
「典型的な手です」
「……」
ミアが不安そうにする。
「戦争……ですか?」
「可能性は高いです」
リリアが静かに答える。
「……」
その時。
王が、ゆっくりと口を開く。
「……よい」
ざわめきが止まる。
「備えよ」
短い一言。
だが。
それだけで、全てが決まる。
「防衛線を強化」
「国境に戦力を集めろ」
「……は!」
騎士たちが一斉に動く。
「……」
貴族たちも、顔を引き締める。
先ほどまでの内輪の争いは消えた。
今は――
外。
「……」
その中で。
レインは、いつも通り。
「戦争なんですね」
「軽いのよ」
カレンが即ツッコミ。
「一大事なのよこれ」
「そうなんですね」
「だからその反応!」
ミアは少し震えながらも。
「でも……」
「頑張りましょう!」
「強いわね、あんた」
「みんないますから!」
「……」
リリアが、静かに前を見る。
「……」
王の隣。
その視線は、遠く。
国境の向こうへ。
「……来ますね」
小さく呟く。
「ええ」
カレンも頷く。
「ここからが本番」
「……」
そして。
レイン。
「すぐ終わりますよ」
「何でそうなるのよ」




