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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第82話 兆し

「……これは」


リリアの声が、低く落ちた。


王城、内部資料室。


積まれた書類。


密封された報告。


その一つを、開いた瞬間だった。


「……どうしました?」


レインが聞く。


「……」


リリアは答えない。


ただ、視線を落としたまま。


「……カレン」


「何?」


「これを」


書類を渡す。


「……」


カレンが目を通す。


数秒。


そして――


「……は?」


顔が変わる。


「ちょっと待って」


「これ、本気?」


「……可能性は高いです」


「……」


ミアが不安そうに聞く。


「何が書いてあるんですか?」


カレンが、短く答える。


「兵の配置がズレてる」


「……え?」


「しかも意図的に」


「……」


リリアが補足する。


「防衛の要所が、わずかに空いています」


「……」


「通常ではありえません」


「……」


ミアの顔が青くなる。


「それって……」


「攻めるための配置よ」


カレンが言い切る。


「内側からね」


「……」


沈黙。


重い。


「……」


さらに、別の書類。


資金の流れ。


「……これもか」


カレンが舌打ちする。


「不自然な金の動き」


「複数の貴族が絡んでる」


「……」


リリアが静かに言う。


「準備段階は、すでに終わっています」


「……」


「後は“きっかけ”だけ」


「……」


ミアが震える。


「クーデター……ですか?」


「……」


リリアは、否定しない。


「可能性は高いです」


「……」


その時。


遠くで、鐘の音。


「……」


全員が、顔を上げる。


「……今の」


「警戒鐘です」


リリアが即答する。


「通常では鳴りません」


「……」


カレンが小さく笑う。


「タイミング良すぎでしょ」


「ええ」


「もう始まってるわね」


「……」


ミアがぎゅっと拳を握る。


「どうするんですか……?」


視線が、レインへ向く。


「そうですね」


いつも通り。


少し考えて――


「止めますか」


「軽いのよ」


カレンが即ツッコミ。


だが。


その目は、完全に戦闘のもの。


「……でも」


「それしかないわね」


リリアも頷く。


「ええ」


「放置はできません」


鐘の音が、続く。


王城全体に広がる。


ざわめき。


混乱。


そして――


「……」


確実に動き出した“何か”。

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