第74話 影
「――以上で測定は終了です」
評価官の声。
「ご協力ありがとうございました」
「いえ」
レインは軽く頷く。
「……」
周囲の空気は、完全に変わっていた。
「なんだ、普通じゃないか」
「噂は盛られてたな」
「やっぱり地方か」
軽い笑い。
明らかな、油断。
「……」
カレンが小さく呟く。
「見事に下げたわね」
「ええ」
リリアも頷く。
「これで動きやすくなります」
ミアは少しだけ不安そう。
「でも、大丈夫ですか?」
「何が?」
「なんか……嫌な感じがします」
「……」
その言葉で。
空気が、わずかに変わる。
「……鋭いわね」
カレンが目を細める。
「え?」
「確かに」
リリアも静かに言う。
「少し、不自然です」
その時。
「――っ!?」
外から、音。
爆発。
「……」
一瞬、全員が止まる。
「今の……」
「外です!」
誰かが叫ぶ。
次の瞬間。
「魔物だ!!」
「侵入したぞ!」
騒ぎが、一気に広がる。
「……は?」
カレンが眉をひそめる。
「王都で魔物?」
「ありえません」
リリアが即答する。
「結界があります」
「なら何よこれ」
外へ出る。
通り。
混乱。
人が逃げている。
そして――
「……」
異形。
黒い影のような存在。
複数。
「……あれ」
ミアが震える。
「普通の魔物じゃないです」
「ええ」
カレンが剣に手をかける。
「明らかにおかしい」
その時。
「くっ……!」
騎士団が応戦している。
だが。
「速すぎる!」
「攻撃が通らない!」
押されている。
「……」
リリアが低く言う。
「これは――」
言いかけて、止まる。
「……」
「どうしますか?」
視線が、レインへ向く。
「そうですね」
少しだけ考えて――
「片付けますか」
「軽いのよ」
カレンが即ツッコミ。
だが。
その目は、鋭い。
「……でも」
「ちょうどいいわね」
「ええ」
リリアも頷く。
「“誤認”を崩すには」
「最適です」
ミアがぎゅっと拳を握る。
「助けましょう!」
レインは、前に出る。
「はい」
その瞬間。
影が、こちらを向く。
「……」
空気が、変わる。




