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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第72話 視線

「……で」


カレンが小さく呟く。


「もう始まってるわね」


「何がですか?」


レインが首を傾げる。


「“視線”よ」


周囲。


ざわめき。


ひそひそとした声。


「……」


王都の通り。


人の流れは多い。


だが――


明らかに、見られている。


「……あれが?」


「噂の拠点の……」


「田舎者だろ?」


小さな声。


だが、隠す気はない。


「……」


ミアが少しだけ不安そうにする。


「なんか、見られてます……」


「そりゃそうよ」


カレンはため息をつく。


「“急に出てきた勢力”なんて」


「目立つに決まってるでしょ」


リリアは静かに周囲を見る。


「……それだけではありません」


「ええ」


カレンも気づいている。


「“値踏み”ね」


視線の質が違う。


好奇心ではない。


評価。


判断。


そして――


軽視。


その時。


「失礼」


声がかかる。


振り向く。


豪奢な服。


整った身なり。


明らかに、貴族。


「あなた方が」


「例の“新興拠点”の方々ですか?」


「はい」


リリアが静かに答える。


「そうです」


「……」


男は、じっと見て――


「……なるほど」


口元が、わずかに歪む。


「噂は聞いております」


「田舎で、少しばかり成功したと」


「……」


カレンの眉が、ぴくりと動く。


「“少しばかり”ね」


「ええ」


男はあっさり頷く。


「王都では、よくある話です」


「地方で力を持ち」


「勘違いして上がってくる者たち」


「……」


ミアが小さく言う。


「勘違いですか?」


「そうだとも」


男は微笑む。


「ここは王都だ」


「本物だけが残る場所」


「……」


視線が、レインへ向く。


「あなたが中心人物ですか?」


「たぶんそうです」


「……たぶん?」


「はい」


「……」


男は一瞬だけ言葉に詰まり――


すぐに立て直す。


「まあ、いい」


「一つ忠告を」


「はい」


「王都では」


「“立場”がすべてです」


「力だけでは通用しない」


「……」


カレンが小さく笑う。


「へえ」


「いいこと言うじゃない」


「ええ」


男は頷く。


「だからこそ」


「身の程を知るべきです」


「……」


静かな空気。


だが。


リリアが、静かに言う。


「忠告、ありがとうございます」


「ですが」


「問題ありません」


「……」


男の目が細くなる。


「……その自信」


「どこから来るのか」


「いずれ分かるでしょう」


「……」


短い沈黙。


「……では」


男は軽く一礼し、去っていく。


その背中を見ながら。


カレンが呟く。


「典型的ね」


「ええ」


リリアも頷く。


「ですが」


「分かりやすいです」


「何が?」


「これからの流れが」


「……」


ミアが首を傾げる。


「どうなるんですか?」


カレンが笑う。


「簡単よ」


「さっきのやつ」


「後で後悔する」


「え?」


「まあ見てなさい」


レインは、いつも通りだった。


「そうなんですね」


「ほんとブレないわね」

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