第71話 王都
「――準備、できました」
リリアが静かに言った。
拠点の門前。
荷は最小限。
「ほんとに行くのね」
カレンが腕を組む。
「ええ」
「王国からの正式招待です」
「断る理由もないわね」
ミアが楽しそうに言う。
「楽しみです!」
「観光じゃないのよ」
「でも、楽しみです!」
「……まあ、そうね」
カレンはため息をついた。
「で」
「当の本人は?」
視線が向く。
レイン。
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「王都ですけど」
「そうなんですね」
「……そこからなのよ」
カレンは額を押さえる。
「これから行くの、“国の中心”だからね?」
「はい」
「貴族もいる」
「はい」
「面倒ごともある」
「はい」
「……」
「分かってる?」
「たぶん大丈夫です」
「根拠は?」
「なんとかなりそうなので」
「……」
カレンは空を見上げた。
「……ほんと、この人」
リリアが小さく笑う。
「まあ、いつも通りですね」
「ええ」
「それで何とかなってきましたし」
「それが一番怖いのよ」
その時。
「準備が整いました」
使者の男が現れる。
「転移の準備も完了しています」
「もう使うのね」
「距離がありますので」
「……まあ、そうよね」
ミアが目を輝かせる。
「転移です!」
「初めてかしら」
「はい!」
「じゃあ、驚くわよ」
「楽しみです!」
レインは、いつも通り。
「では、行きましょうか」
「はい」
男が手を上げる。
魔法陣が展開される。
光。
空気が揺れる。
「……」
カレンが小さく呟く。
「ここからが本番ね」
「ええ」
リリアも頷く。
「舞台が変わります」
光が、強くなる。
「――転移」
視界が白に染まる。
次の瞬間。
「……」
広がる景色。
石畳。
巨大な建造物。
人の波。
「……でかい」
カレンが素直に呟く。
「ここが……王都」
ミアが見渡す。
「すごいです!」
「……」
リリアは静かに前を見る。
懐かしさと、緊張。
そして――
「……」
レイン。
「人、多いですね」
「そこ!?」
カレンのツッコミが響く。
周囲の視線が集まる。
「……」
その中で。
誰かが、小さく呟いた。
「……あいつが?」
「噂の……?」
空気が、少しずつ変わる。
ここは、王都。
すべてが見られる場所。
そして――
試される場所。




