第69話 同盟
「――それでは」
使者の男が、静かに言った。
応接室。
空気は、すでに決まっている。
「最終確認に入ります」
「はい」
レインは軽く頷く。
「……」
カレンは腕を組んだまま。
リリアは書面を見ている。
ミアは少しだけ眠そうだ。
「第一条」
「本拠点は、王国に対して従属しない」
「……」
「独立性を完全に認める」
カレンが小さく笑う。
「ずいぶん踏み込んだわね」
「必要な判断です」
男は即答する。
「第二条」
「王国は、本拠点に対して強制的命令を行わない」
「……」
「要請は可能だが、拒否権は常に本拠点側にある」
「……」
リリアが静かに言う。
「かなり明確ですね」
「はい」
「曖昧さは、後の問題になりますので」
「……賢明ね」
「第三条」
「本拠点は、可能な範囲で王国に協力する」
「ただし」
「その判断は、完全に本拠点側に委ねる」
沈黙。
「……」
カレンがぽつりと呟く。
「これ」
「完全に“お願いする側”じゃない」
「……はい」
男は否定しなかった。
「現状、そうなります」
「……」
ミアが小さく手を挙げる。
「いいんですか?」
「いいんです」
男は静かに答える。
「それが、最も利益が大きい」
「……」
リリアが最後の書面を閉じる。
「問題ありません」
「こちらも同意します」
「……」
視線が、レインへ向く。
「どうしますか?」
「そうですね」
少し考えて――
「大丈夫そうですね」
「……軽いのよ」
カレンがため息をつく。
「国家レベルの話なのよ、これ」
「そうなんですね」
「そうなのよ」
ミアが嬉しそうに言う。
「すごいです!」
「すごいけど、それで済ませる話じゃないのよ」
使者の男が、深く頭を下げる。
「では」
「本日をもって」
「同盟を正式に締結いたします」
静かな言葉。
だが――
重い。
「……」
空気が変わる。
ただの拠点ではない。
ただの都市でもない。
“国家と並ぶ存在”へ。
「……」
カレンが小さく呟く。
「始まったわね」
「ええ」
リリアも頷く。
「ここからです」
ミアは笑う。
「楽しいです!」
レインは、いつも通りだった。
「よろしくお願いします」




