第67話 差
「――開始!」
その声が、響いた瞬間。
騎士団が動く。
「前衛、突撃!」
重装兵が一斉に踏み込む。
同時に――
「後衛、展開!」
魔法陣が浮かぶ。
完璧な連携。
「……」
それを。
レインは、ただ見ていた。
「……速いですね」
一歩、踏み出す。
それだけ。
「――っ!?」
次の瞬間。
「な――」
前衛が、止まる。
いや。
止められている。
「動け……!?」
剣が振り下ろされる寸前。
そのまま、静止。
「……え?」
後衛が困惑する。
「魔法、撃て!」
詠唱完了。
放たれる。
だが――
「……消えた?」
魔法が、消える。
当たる前に。
跡形もなく。
「……」
レインは、何もしていない。
ただ、立っているだけ。
「……なんだ、これ」
空気が歪む。
「……」
レインが、少しだけ手を動かす。
それだけで――
「……っ!?」
前衛の武器が、落ちる。
同時に。
全員の体勢が崩れる。
「ぐっ……!」
膝が、つく。
「……」
誰も理解できない。
何が起きたのか。
「……まだやりますか?」
レインの声。
静かで、変わらない。
「……」
沈黙。
ディルクが、歯を食いしばる。
「……まだだ」
立ち上がる。
「全員、再編!」
だが。
その瞬間。
「――あ」
レインが、少しだけ動いた。
一歩。
それだけ。
「……っ」
気づいた時には。
剣が、喉元にあった。
ディルクの。
「……」
動けない。
動けば、終わる。
「……降参でいいですか?」
静かな声。
「……」
ディルクは、ゆっくりと息を吐いた。
そして――
「……降参だ」
その言葉が落ちた瞬間。
すべてが、解ける。
拘束が消える。
魔力が消える。
圧が消える。
「……」
誰も、動かない。
ただ――
沈黙だけが残る。
「……」
観測員も、記録を止めている。
「……何を」
「見たんだ、今」
誰かが、呟く。
答えは、ない。
カレンが小さく笑う。
「……だから言ったでしょ」
「問題はあっちって」
リリアも静かに頷く。
「ええ」
「完全に、格が違います」
ミアは目を輝かせる。
「すごいです!」
「……」
レインは、いつも通りだった。
「終わりましたね」
「終わりすぎなのよ」
カレンはため息をついた。




