第57話 差
「……減ってるな」
男が呟いた。
場所は、近隣の街。
「何がだ?」
「人だよ」
周囲を見る。
空いている席。
動かない店。
少ない往来。
「……言われてみれば」
「前はもっと賑わってたろ」
「……ああ」
沈黙。
「理由、分かるか?」
男は短く言う。
「あそこだ」
――場面転換。
「……また減ってる」
カレンが言った。
「はい」
リリアが頷く。
「外部からの流入が増えています」
「……それはいいことなんだけどね」
「問題は?」
「出ていく人がいない」
「……ああ」
「つまり」
カレンが腕を組む。
「“吸ってる”のよね」
「はい」
「周囲から、人も物も」
「結果として」
リリアが静かに言う。
「他地域が、相対的に衰退します」
「……」
ミアが小さく言う。
「悪いことですか?」
「……難しいところね」
カレンが答える。
「こっちは良くなってる」
「でも」
「周りは苦しくなる」
「……」
その時。
「報告です」
マルクが来る。
「どうしました?」
「外の市場です」
「動きが鈍っています」
「……やっぱりね」
「こちらの影響です」
「……どれくらい?」
「かなりです」
「人が流れ」
「資金が流れ」
「取引が減る」
「典型的な流出ですね」
リリアが補足する。
「……」
カレンは少しだけ考える。
「これ」
「止められる?」
「難しいですね」
マルクが即答する。
「魅力がある限り、流れは止まりません」
「……そうよね」
「むしろ」
マルクは少しだけ視線を上げる。
「さらに加速する可能性があります」
「……」
一方。
外の街。
「仕事、減ったな……」
「客も来ねぇ」
「……あそこに行くか?」
「……」
迷い。
だが。
「……行くか」
決断。
――視点、戻る。
「……止まらないわね」
カレンが呟く。
「はい」
リリアも頷く。
「流れが完全にこちらへ向いています」
「……」
ミアがぽつりと言う。
「人気です!」
「まあ、そうね」
カレンは少しだけ苦笑する。
「分かりやすく言えば、それよ」
レインは、いつも通りだった。
「いいことですね」
「……いいことなんだけどね」
カレンは少しだけ空を見る。
「そろそろ」
小さく言う。
「“誰か”が動くわよ」




