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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第44話 静寂

「……おかしくない?」


カレンがぽつりと言った。


「何がですか?」


ミアが首を傾げる。


「人、増えてるでしょ」


「はい!」


「物も増えてる」


「はい!」


「金も動いてる」


「はい!」


「……なのに」


少し間を置いて。


「問題が起きない」


沈黙。


「……確かに」


リリアが静かに頷く。


「通常であれば、この段階で摩擦が発生します」


「盗み、揉め事、詐欺……」


「そういうの、一個もないのよ」


「ゼロですね」


「……ゼロって何よ」


普通はありえない。


人が増えれば、必ず“ズレ”が出る。


価値観。


利害。


欲。


それがぶつかるのが、普通だ。


「でも、ないです!」


ミアが元気に言う。


「みんな普通にいい人です!」


「……それで済む話じゃないのよ」


カレンがため息をつく。


「“たまたま”で説明できる規模じゃない」


「では、理由を考えましょう」


リリアが冷静に言う。


「まず一つ」


「防衛」


「外からの侵入がほぼ不可能です」


「まあ、あれはね……」


カレンが遠い目をする。


「入る前に気づくわね」


「二つ目」


「戦力」


「……ああ」


カレンも納得する。


「全員、装備が強い」


「ええ」


「つまり」


リリアがまとめる。


「“やろうと思えば、全員戦える”状態です」


「……」


その意味。


「犯罪する側が、不利すぎるのよね」


カレンが言う。


「一人で何かやっても、周り全員敵になる」


「しかも強い」


「割に合わないです」


「……そりゃやらないわね」


「三つ目」


リリアが少しだけ視線を動かす。


「環境です」


「環境?」


「満たされている」


「……あ」


ミアが気づく。


「ご飯、美味しいですもん!」


「住む場所もあります」


「仕事もあります」


「……」


カレンが小さく頷く。


「“やる理由がない”ってことね」


「はい」


「満たされている人間は、無理に奪わない」


「……理屈は分かる」


「でも」


カレンは周囲を見る。


笑っている人。


働く人。


話している人。


「ここまで“何も起きない”のは異常よ」


「ええ」


リリアも同意する。


「ですが、結果としては理想です」


「……そうね」


その時。


「おーい!」


遠くから声。


「どうしました?」


「落とし物だ!」


「誰かの財布らしいぞ!」


「……」


「……」


「……」


全員、少しだけ固まる。


「……で?」


カレンが聞く。


「拾ったから、預けに来た!」


「……」


ミアが小さく言う。


「いい人です!」


「……もうそれでいい気がしてきたわ」


カレンが頭を押さえる。


レインは、いつも通りだった。


「いい場所ですね」


「……そうね」


カレンは苦笑する。


「悔しいけど」


「完璧よ、ここ」

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