第27話 限界
「……これで、四回目だ」
誰かがぽつりと呟いた。
重い空気。
誰も反応しない。
いや――できない。
「なあ」
別のメンバーが口を開く。
「もう無理だろ、これ」
その一言で、空気が一気に崩れた。
「……何が言いたい」
ガルドが低く返す。
「そのまんまだよ」
苛立ちを隠さない声。
「依頼失敗、連続」
「回復足りない、連携ズレてる」
「正直、戦えてねぇ」
淡々と並べられる現実。
どれも否定できない。
「……立て直せばいいだけだ」
ガルドが言う。
「一時的に崩れてるだけだ」
「一時的?」
笑いが漏れる。
乾いた、嫌な笑い。
「じゃあいつ戻るんだよ」
「……」
言葉が詰まる。
「もう気づいてるだろ」
別のメンバーが続ける。
「俺たち、前と違う」
「……違わねぇよ」
反射的に否定する。
だが、その声に力はない。
「違うよ」
はっきりと言われる。
「前は、もっと余裕あった」
「判断も早かったし、無駄な消耗もなかった」
「今は全部逆だ」
ひとつひとつが刺さる。
「……だから何だって言うんだよ」
ガルドが吐き捨てる。
「たまたま調子悪いだけだろ」
「まだ言うのかよ」
呆れた声。
「原因、分かってるだろ」
静かに言われる。
その場の全員が、一瞬だけ黙る。
触れたくない話題。
だが――
避けられない。
「……言えよ」
ガルドが睨む。
「どうせ同じこと考えてんだろ」
「……レインだよ」
誰かが言った。
その瞬間、空気が完全に止まる。
「……」
ガルドは何も言わない。
否定もしない。
できない。
「正直、あいつが抜けてから全部おかしい」
「回復のタイミング、ズレるようになった」
「敵の動きも、読みづらくなった」
「無駄なダメージ増えた」
次々に出てくる。
止まらない。
「……あいつ、何してたんだよ」
ぽつりと呟く。
今さらの疑問。
だが――
重い。
「分かんねぇよ」
即答だった。
「でも、いなくなって分かるってことは」
少し間を置いて。
「必要だったんだろ」
「……っ」
ガルドの表情が歪む。
認めたくない。
だが、現実がある。
「じゃあ、どうすんだよ」
別のメンバーが言う。
「このまま続けんのか?」
「依頼も制限されて、評価も落ちて」
「このままズルズル行くのか?」
沈黙。
誰も答えない。
「……俺は嫌だ」
一人が立ち上がる。
「このまま沈むのはごめんだ」
「おい、待てよ」
ガルドが声をかける。
「正直に言う」
振り返る。
「今のパーティ、信用できない」
その一言は、致命的だった。
「回復足りない」
「連携合わない」
「判断遅い」
「全部ストレスだ」
言い切る。
「……抜けるのか」
ガルドが低く聞く。
「考えてる」
即答だった。
空気が凍る。
一人が動けば、崩壊は早い。
「……ふざけんなよ」
ガルドが一歩踏み出す。
「こんなとこで逃げんのか?」
「逃げてるのはどっちだよ」
返される。
「現実見てないのは、お前だろ」
「……っ」
言葉が出ない。
完全に、詰まっている。
「……もういい」
別のメンバーも口を開く。
「俺も限界だ」
「は?」
ガルドが振り向く。
「お前もかよ」
「悪いな」
目を逸らす。
「このまま続けても、先が見えない」
「……」
ガルドの拳が震える。
何も言えない。
止める言葉が、ない。
「……くそっ」
絞り出すように吐く。
だが――
もう遅い。
「とりあえず今日は解散だ」
誰かが言う。
誰も反論しない。
バラバラに散っていく。
まとまりは、もうない。
ガルドだけが、その場に残る。
「……なんでだよ」
小さく呟く。
答えは、出ている。
だが、認めたくない。
「……くそ……」
拳を壁に打ちつける。
鈍い音。
だが、何も変わらない。




