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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第25話 拡散

「――聞いたか?」


ギルドの一角で、低い声が交わされる。


「例のやつだろ」


「ああ、あのパーティ」


ひそひそとした会話。


だが、その数は一つではない。


あちこちで、同じ話題が上がっていた。


「単独で上級魔物を消したらしいぞ」


「いや、それどころじゃねぇ」


別のテーブルから声が飛ぶ。


「複数同時だって話だ」


「は?」


「しかも、動いたの見えなかったってよ」


話はすでに“盛られて”いる。


だが――


誰も完全には否定できない。


「……あいつヤバいぞ」


ぽつりと誰かが言った。


それが、一番しっくりくる表現だった。


「しかもカレンが組んでる」


「マジで?」


「見たやつがいる」


「……終わったな」


何が、とは言わない。


だが、意味は通じている。


「あと一人、魔法使いの子もいるらしいぞ」


「暴走してたの止めたって話」


「それ、もう人間か?」


「知らねぇよ……」


ざわめきは広がる一方だった。


その中心にいるはずの本人たちは――


「これ、全部納品でいいですか?」


カウンターの前で、普通に会話していた。


「はい、問題ありません」


エルナが淡々と対応する。


だが、その目は少しだけ鋭い。


(完全に、流れが変わっている)


提出される素材。


その質と量。


そして頻度。


すべてが異常だ。


「また増えてますね」


エルナが書類を見ながら言う。


「そうですか?」


レインは首を傾げる。


「普通だと思いますけど」


「普通ではありません」


即答だった。


「えっと……すみません?」


なぜか謝るレイン。


「いえ、責めているわけではありません」


エルナは軽く首を振る。


「むしろ、その逆です」


一瞬だけ視線を上げる。


「評価が、追いついていません」


「またですか?」


カレンが横から口を挟む。


「はい」


エルナは頷く。


「すでに上級相当として扱っていますが――」


「それでも足りません」


周囲の空気が、少しだけ張り詰める。


「どういうことですか?」


リリアが静かに聞く。


「他地域のギルドから、問い合わせが来ています」


「……もう?」


カレンが眉をひそめる。


「はい」


エルナは淡々と続ける。


「“その冒険者は何者か”と」


「広まってるってことですか?」


ミアが小さく聞く。


「ええ」


エルナははっきりと言った。


「すでに、この街の中だけの話ではありません」


その言葉に、少しだけ空気が変わる。


外へ。


広がっている。


「……面倒ね」


カレンが小さく呟く。


「ええ」


リリアも同意する。


「ですが、避けられない流れかと」


「でも、特に困ることはないですよね?」


レインが言う。


本気でそう思っている。


「今のところは、ですが」


リリアが答える。


「注目が集まるほど、干渉も増えます」


「干渉……」


ミアが少しだけ不安そうな顔をする。


「大丈夫ですよ」


レインが軽く言う。


「何かあっても、どうにかなると思います」


根拠はない。


だが、不思議と安心できる。


「……まあ、そうね」


カレンがため息混じりに言う。


「実際、どうにかしてきたし」


否定できない。


そのやり取りを、周囲が聞いていた。


「……余裕だな」


「そりゃそうだろ」


「だってあいつ――」


誰かが言いかけて、少しだけ間を置く。


そして。


「規格外だろ」


と、はっきり言った。


ギルドの外。


荷車を引く商人たちの間でも。


「最近、この街の素材、質が上がってないか?」


「ああ、聞いたぞ」


「あのパーティの影響らしい」


「……マジかよ」


噂は、もう止まらない。


さらに遠く。


別の街。


「妙な報告が来てる」


ギルド職員が書類を見ながら言う。


「一人で上級を処理する冒険者?」


「しかも複数同時」


「……ありえんな」


「だが、報告は複数ある」


沈黙。


そして。


「調べる必要があるな」


再び、この街。


「次、どうします?」


レインがいつも通り聞く。


何も変わらない。


「そうですね」


リリアが少し考える。


「少し依頼の幅を広げてもいいかもしれません」


「いいわね」


カレンも頷く。


「どうせ隠せないなら、やるだけやる」


「私はついていきます!」


ミアが元気よく言う。


完全に定着している。


四人が歩き出す。


その背中を、無数の視線が追う。

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