第137話 接触
「じゃあ」
「順番直しますね」
レインは、そう言って。
ただ。
手を伸ばす。
「……」
それだけ。
特別な詠唱も。
魔法陣も。
構えもない。
「……」
ミアが、息を呑む。
「それで……いいんですか……?」
「はい」
即答。
「それだけです」
「軽すぎるのよ!!」
カレンのツッコミが飛ぶ。
だが。
その声も。
どこか、震えていた。
「……」
リリアは、黙って見ている。
止めない。
止められない。
「……」
アルヴェルトもまた。
理解している。
「……」
もう。
“技術”ではない。
“力”でもない。
「……」
“在り方”の領域だ。
「……」
レインの手が。
ゆっくりと。
“魔王”へ向かう。
「……」
その途中。
空間が、歪む。
時間が、乱れる。
存在が、拒絶する。
「……!」
ミアが叫ぶ。
「まだ干渉が……!」
「……」
だが。
レインは、止まらない。
そのまま。
進む。
「……」
拒絶が、消える。
歪みが、ほどける。
時間が、整う。
「……?」
カレンが、目を細める。
「……道、できてる?」
「……」
その通りだった。
レインの手が通る場所だけ。
“正しい状態”になる。
「……」
リリアが、静かに言う。
「干渉ではありません」
「……?」
「“優先されている”のです」
「……」
沈黙。
「……何それ」
「……」
「彼の定義が」
一拍。
「この領域より“上位”にある」
「……」
つまり。
拒絶されない。
止められない。
「……」
ミアが、小さく呟く。
「通るのが……当たり前……」
「はい」
「……」
レインの手が。
“魔王”に届く。
「……」
触れる。
静かに。
確実に。
「――――」
その瞬間。
世界が。
“反応”する。
「……!」
アルヴェルトが叫ぶ。
「来るぞ……!」
「……」
“魔王”が、揺れる。
強く。
激しく。
だが。
今までとは違う。
「……」
逃げない。
崩れない。
ただ。
「……」
“抵抗している”。
「……」
『――干渉拒否』
『――排除』
『――維持優先』
「……」
だが。
レインは。
何も気にしない。
「……」
ただ。
触れたまま。
少しだけ。
指を動かす。
「……」
それだけ。
本当に。
それだけだった。
「……?」
ミアが、目を瞬く。
「今……何を……」
「……」
レインは、普通に言う。
「ちょっと順番入れ替えただけです」
「軽いのよ!!」
だが。
その瞬間。
「――――」
世界が、揺れる。
今度は。
崩壊ではない。
「……!」
リリアが、息を呑む。
「……再構成……!」
「……」
空間が。
時間が。
存在が。
すべて。
「……」
“並び替わる”。
「……」
アルヴェルトが、震える。
「……本当に……やっている……」
「……」
カレンが、苦笑する。
「シンプルすぎて笑えないわね」
「……」
ミアが、小さく言う。
「すごい……」
「……」
レインは、変わらず。
「もう少しですね」
「最後までそれなのね……」
だが。
その手は。
確実に。
“世界を書き換えていた”。




