第132話 波及
「まだ止まってません!」
ミアの叫び。
それは。
この空間の話では、なかった。
「……」
“魔王”の暴走。
その影響は。
すでに。
外へと広がっている。
――王都。
「……?」
空を見上げた兵士が、眉をひそめる。
「なんだ……あれ」
空が。
歪んでいる。
青だったはずの空。
それが。
にじむ。
色が混ざる。
「……」
雲が、止まる。
いや。
動いているのに。
位置が変わらない。
「……は?」
誰かが、呟く。
次の瞬間。
太陽が。
“ずれる”。
「――ッ!?」
昼のはずなのに。
影が消える。
次の瞬間には。
逆方向に伸びる。
「なんだこれ!?」
兵士たちがざわめく。
――街。
「きゃっ!?」
少女が転ぶ。
だが。
地面がない。
「……え?」
浮いている。
落ちない。
そのまま。
横に滑る。
「いやあああ!?」
重力が。
消えている。
――森。
魔物が、現れる。
一体。
二体。
三体。
「……?」
次の瞬間。
同じ場所に。
同じ個体が。
“重なる”。
増えている。
いや。
複製されている。
「……」
森が、歪む。
――王城。
「報告しろ!」
王が、叫ぶ。
「各地で異常が発生しています!」
「空間の歪み!」
「時間のズレ!」
「重力異常!」
「魔物の無限発生!」
「……!」
玉座の間が、騒然となる。
「……どこまで広がっている!」
「……全域です!」
「……」
沈黙。
「……」
アルヴェルトの報告が、重く響く。
「このままでは」
「世界全体が崩壊します」
「……」
誰も、否定できない。
――そして。
再び、“中心”。
「……」
空間が、軋む。
歪みが、拡張する。
止まらない。
止められない。
「……」
ミアが、震える。
「外も……同じ状態に……」
「……」
カレンが、歯を食いしばる。
「冗談じゃないわよ」
「全部巻き込んでるじゃない」
「……」
リリアが、静かに言う。
「維持機構の暴走が」
「全領域に波及しています」
「……」
アルヴェルトが、呟く。
「局所的な問題ではない……」
「完全に“世界規模”だ……」
「……」
ミアが、小さく言う。
「どうすれば……」
「……」
沈黙。
誰も。
答えられない。
ただ一人を除いて。
「……」
レインは、“魔王”に触れたまま。
変わらず。
そこにいる。
「……」
そして。
ぽつりと。
「広がってますね」
「見れば分かるわよ!!」
「……」
だが。
その目は。
焦っていない。
恐れていない。
「……」
すべてを。
“把握している”。
「……」
レインは、少しだけ考えて。
言う。
「まとめて直しますか」
「軽いのよ!!」
だが。
それは。
世界全体に対する。
宣言だった。




