第131話 暴走
レインの一言。
それは。
終わりの合図――
のはずだった。
「――――」
その瞬間。
“魔王”が、震える。
「……?」
ミアが、顔を上げる。
「何か……」
違う。
さっきまでの。
収まっていく流れとは。
明らかに。
違う。
「……!」
アルヴェルトが、叫ぶ。
「待て――!」
だが。
遅い。
「――――――!!」
“魔王”が、崩れる。
いや。
広がる。
「……っ!?」
空間が、裂ける。
固定されたはずの法則が。
再び。
壊れる。
「何これ!?」
カレンが叫ぶ。
「……」
上下が消える。
距離が狂う。
時間が、跳ねる。
「……!」
ミアの安定領域が、一瞬で崩壊する。
「支えきれません……!」
「……」
リリアが、低く言う。
「……抵抗ではない」
「……?」
「“過剰反応”です」
「……」
アルヴェルトが、歯を食いしばる。
「維持機構が……暴走している……!」
「……」
“修正”。
それが。
限界を超えている。
「……」
整えられるほど。
正されるほど。
「――――」
“魔王”は。
それを拒否するのではなく。
「……」
“増幅”する。
「……っ」
空間が、裂ける。
歪みが、拡散する。
今までの比ではない。
「……!」
ミアが、震える。
「広がってます……!」
「外にも……!」
「……」
その言葉の意味。
それは。
ここだけではない。
「……」
現実世界。
王都。
大地。
空。
「……」
すべてに。
影響が出始めている。
「……」
カレンが、低く呟く。
「最悪ね」
「止まりかけてたのに」
「……」
リリアが、静かに言う。
「均衡が崩れました」
「……」
「修正と歪み」
「その拮抗が」
一拍。
「“破綻”しました」
「……」
つまり。
「……暴走……」
ミアが、呟く。
「はい」
「……」
“魔王”が、膨れ上がる。
存在が、拡張する。
「……」
定義されたはずの輪郭。
それすら。
飲み込んでいく。
「……!」
アルヴェルトが、叫ぶ。
「このままでは――」
「世界そのものが!」
「……」
崩壊する。
完全に。
不可逆に。
「……」
だが。
その中心で。
「……」
レインは、変わらない。
触れたまま。
動かない。
「……」
カレンが、叫ぶ。
「何とかしなさいよ!」
「今ヤバいでしょこれ!」
「……」
レインは。
少しだけ考えて。
「そうですね」
と、言う。
「軽いのよ!!」
だが。
その目は。
“魔王”を、見ている。
正確に。
「……」
暴走。
拡張。
崩壊。
すべて。
理解している。
「……」
そして。
ぽつりと。
「やりすぎですね」
「誰がよ!?」
「……」
レインは。
“魔王”に向かって。
静かに言う。
「そこまでいらないです」
「……」
その瞬間。
「――――?」
“魔王”が、止まる。
ほんの一瞬。
だが。
確実に。
「……!」
リリアが、目を見開く。
「……今のは……」
「……」
アルヴェルトが、震える。
「“制限”を……かけた……?」
「……」
カレンが、呟く。
「……マジで何なのよあんた」
「……」
だが。
暴走は、止まっていない。
むしろ。
さらに。
膨れ上がる。
「……!」
ミアが叫ぶ。
「まだ止まってません!」
「……」
レインは、頷く。
「ですね」
「軽いのよ!!」
だが。
次の一手を。
すでに決めていた。




