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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第124話 未定義

「じゃあ」


レインが、一歩踏み出す。


「そこ直せば終わりですね」


「軽いのよ!!」


カレンのツッコミが響く。


だが。


止める者はいない。


止められない。


それが唯一の手段だから。


「……」


レインは、“魔王”へと近づく。


近づいている。


はずなのに。


距離が、変わらない。


「……」


次の瞬間。


もう目の前にいる。


「……っ」


ミアが息を呑む。


「今……」


「……」


アルヴェルトが、低く呟く。


「距離の概念が成立していない……」


「……」


だが。


レインは気にしない。


そのまま。


手を伸ばす。


「……」


“それ”が、揺れる。


ぐにゃり、と。


形が崩れる。


「……」


人の形に見えた。


次の瞬間。


獣になる。


さらに。


影になる。


光になる。


「……!」


ミアが、目を見開く。


「形が……!」


「……」


カレンが、歯を食いしばる。


「固定されてない……!」


「……」


リリアが、静かに言う。


「“定義できない存在”です」


「……」


アルヴェルトが、震える声で続ける。


「観測されるたびに」


「状態が変化している……」


「……」


見るたびに違う。


捉えようとするほど。


ズレる。


「……」


それは。


存在しているのに。


確定しない。


「……」


レインの手が。


あと少しで届く。


「……!」


その瞬間。


空間が、歪む。


「――ッ!」


衝撃。


だが。


何も当たっていない。


それでも。


押し返される。


「……?」


レインが、少しだけ首を傾げる。


「……拒否反応」


リリアが言う。


「接触を“異常”として排除しています」


「……」


“魔王”が、揺れる。


まるで。


“防御”しているかのように。


「……」


だが。


形は、定まらない。


盾にも。


壁にも。


ならない。


「……」


カレンが、低く言う。


「殴れない」


「触れない」


「形もない」


「……」


「どうしろってのよこれ」


「……」


ミアが、震える声で言う。


「存在してるのに……」


「いないみたい……」


「……」


アルヴェルトが、呟く。


「“未定義”……」


「……」


リリアが、静かに頷く。


「はい」


「この存在は」


「確定していません」


「……」


一拍。


「だからこそ」


「干渉できない」


「……」


完全な、異質。


敵という概念すら。


成立しない。


「……」


その時。


レインが、もう一歩踏み込む。


「ちょっと!」


カレンが叫ぶ。


「危ないって!」


「大丈夫ですよ」


「だからその根拠!!」


「……」


レインは、“魔王”を見ている。


揺れている。


崩れている。


繰り返している。


「……」


そして。


ぽつりと。


「定まってないだけですね」


「……」


沈黙。


「……は?」


カレンが固まる。


「今なんて?」


「だから」


レインは、普通に言う。


「定義されてないだけです」


「……」


リリアが、目を細める。


「……続けてください」


「はい」


レインは、“それ”を見ながら言う。


「形も」


「性質も」


「全部バラバラですけど」


「……」


一拍。


「“どれか”に決めればいいだけですよね」


「……」


空気が、止まる。


「……」


アルヴェルトが、震える。


「……まさか……」


「……」


リリアが、静かに呟く。


「“定義する”……」


「……」


レインは、手を伸ばす。


今度こそ。


触れる距離。


「じゃあ」


「決めますね」


「軽いのよ!!」


だが。


その言葉は。


“世界のルール”に対する宣言だった。

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