第123話 偏重
「……“管理者”がいるとして」
カレンが、腕を組む。
「なんでこんなことになってんのよ」
「……」
誰も、すぐには答えない。
当然だ。
“世界そのもの”の異常。
原因など。
簡単に分かるはずがない。
「……」
だが。
リリアは、目を閉じる。
思考を巡らせる。
これまでの情報。
歪みの挙動。
維持機構。
そして――
“魔王”。
「……」
やがて。
静かに口を開く。
「……均衡が崩れています」
「……?」
ミアが首を傾げる。
「均衡……?」
「はい」
リリアは頷く。
「この世界は」
「“維持”によって成立している」
「……」
アルヴェルトが、ゆっくりと頷く。
「つまり」
「何かが“過剰”になったか」
「“不足”したか」
「はい」
「……」
カレンが、低く言う。
「どっちよ」
「……」
リリアは、“魔王”を見る。
歪み。
崩壊。
繰り返し。
固定。
「……過剰です」
「……」
沈黙。
「……何が?」
カレンが聞く。
「……」
リリアは、はっきりと言う。
「“修正”です」
「……?」
理解が、追いつかない。
「……」
アルヴェルトが、息を呑む。
「……まさか」
「維持機構が……過剰に働いているのか……?」
「はい」
リリアは頷く。
「本来」
「維持は“調整”であるべきです」
「崩れすぎず」
「固まりすぎず」
「……」
「ですが今は違う」
一拍。
「“正そうとしすぎている”」
「……」
ミアが、小さく言う。
「直そうとして……壊してる……?」
「その通りです」
「……」
カレンが、顔をしかめる。
「最悪のバグじゃない」
「修正しすぎて壊れるとか」
「……」
リリアは続ける。
「誤った状態を“正しい”と認識し」
「それを維持し続ける」
「……」
アルヴェルトが、震える声で言う。
「……ならば」
「歪みは……増幅する……?」
「はい」
「……」
空間が、わずかに揺れる。
まるで。
それを証明するように。
「……」
リリアが、静かに言う。
「これが」
「“崩壊の正体”です」
「……」
沈黙。
そして。
カレンが、ぽつりと。
「……じゃあ魔王って」
「……」
リリアは、はっきりと答える。
「“その歪みの核”です」
「……」
“魔王”。
それは。
敵ではない。
存在ですらない。
「……」
世界のバランスが崩れた結果。
生まれた――
「……エラーの中心……」
ミアが、呟く。
「はい」
「……」
アルヴェルトが、目を伏せる。
「……ならば」
「倒すのではなく」
「正すしかない……」
「その通りです」
「……」
カレンが、深く息を吐く。
「全部繋がったわね」
「……」
リリアが、最後に言う。
「まとめます」
「この世界は“維持されている”」
「その維持機構が誤作動を起こし」
「修正を過剰に行った結果」
「歪みが固定された」
「……」
一拍。
「それが“魔王”です」
「……」
完全な理解。
そして。
「……」
レインが、一歩前に出る。
「じゃあ」
「そこ直せば終わりですね」
「軽いのよ!!」
だが。
誰も否定しない。
それが。
唯一の答えだから。




