第122話 管理者
「……“維持機構”」
カレンが、低く呟く。
「それってさ」
「誰が動かしてるのよ」
「……」
空気が、止まる。
誰も。
すぐには答えない。
「……」
ミアが、小さく言う。
「勝手に……動いてるんじゃないんですか?」
「可能性はあります」
リリアは頷く。
「ですが」
一拍。
「不自然です」
「……?」
アルヴェルトが反応する。
「どこがだ」
「……」
リリアは、“魔王”――歪みの中心を見る。
崩れている。
それでも。
維持されている。
「……これほど精密な維持機構が」
「完全に自律しているとは考えにくい」
「……」
カレンが、眉をひそめる。
「つまり?」
「……」
リリアは、はっきりと言う。
「“管理者”の存在を仮定すべきです」
「……」
沈黙。
「……管理者?」
ミアが、繰り返す。
「はい」
リリアは続ける。
「この世界の法則を定め」
「維持し」
「必要に応じて修正する存在」
「……」
アルヴェルトが、低く言う。
「……それは」
「神ではないのか」
「……」
リリアは、少しだけ考える。
そして。
「呼称としては、近いでしょう」
「……」
カレンが、ため息をつく。
「出たわね」
「ついに“神様”」
「……」
ミアが、不安そうに言う。
「じゃあ……」
「その人が直せばいいんじゃ……」
「……」
リリアは、静かに首を振る。
「それが出来ていないから」
「現状があります」
「……」
沈黙。
「……つまり」
カレンが、ゆっくり言う。
「いないか」
「動いてないか」
「……そのどちらかってことね」
「はい」
「……」
アルヴェルトが、呟く。
「……放棄された世界……?」
「……」
ミアが、小さく震える。
「そんな……」
「……」
リリアは、冷静に続ける。
「あるいは」
「“想定外の事象”で」
「管理が追いついていない可能性もあります」
「……」
カレンが、苦笑する。
「どっちにしても最悪ね」
「……」
その時。
「じゃあ」
レインが、口を開く。
「その人の代わりにやればいいですね」
「軽いのよ!!」
「……」
だが。
誰も、完全には否定できない。
「……」
アルヴェルトが、静かに言う。
「……それは」
「“管理者の代行”だぞ」
「はい」
レインは普通に頷く。
「今壊れてるなら」
「一時的にでも直せばいいです」
「……」
リリアが、じっとレインを見る。
そして。
小さく、呟く。
「……あるいは」
「最初から」
「その役割だったのかもしれません」
「……?」
カレンが振り向く。
「どういう意味よ」
「……」
リリアは、視線を外す。
「いえ」
「仮説です」
「……」
だが。
その言葉は。
妙に。
引っかかった。
「……」
空間が、揺れる。
“魔王”が、歪む。
まるで。
“何か”に気づいたかのように。
「……」
レインが、それを見る。
「……」
少しだけ。
目を細める。
「……」
誰も、まだ知らない。
この先で。
“本当の意味”が明らかになることを。




