第120話 構造理解
「……ここから先が中心部です」
リリアの声が、静かに響く。
カレンが切り開いた道の先。
そこには――
“異質”があった。
「……なにこれ……」
ミアが、思わず呟く。
空間が、重なっている。
遠いはずの場所が、すぐそこにあり。
近いはずのものが、手に届かない。
「……距離の概念が壊れてるわね」
カレンが、眉をひそめる。
「……」
アルヴェルトも、慎重に周囲を見る。
「下手に進めば、戻れなくなるぞ」
「……」
実際。
一歩踏み出すだけで。
位置がズレる。
上下も。
前後も。
意味を持たない。
「……」
だが。
リリアは、動じない。
ゆっくりと。
周囲を観察している。
「……分かってきました」
「……?」
ミアが振り向く。
「本当ですか?」
「はい」
リリアは、一歩前に出る。
慎重に。
だが、迷いなく。
「……これは“空間”ではありません」
「……は?」
カレンが、素で聞き返す。
「空間じゃないって、どういうことよ」
「……」
リリアは、指で一点を示す。
「ここを見てください」
「……?」
そこには、何もない。
だが。
「……」
ミアが、目を細める。
「……何か……ズレてる……?」
「はい」
リリアが頷く。
「これは距離ではなく」
一拍。
「“順序”です」
「……?」
沈黙。
理解が追いつかない。
「……つまり」
リリアが、続ける。
「ここでは“どこにあるか”ではなく」
「“どの順番にあるか”で位置が決まっています」
「……」
カレンが、顔をしかめる。
「意味分かんないわね」
「でも」
ミアが、小さく言う。
「なんとなく……分かるかも……」
「……?」
「さっきから」
周囲を見ながら。
「同じ場所にいるはずなのに、見える順番が変わってるんです」




