第114話 無力
「――報告、以上です」
静まり返る王城。
重い空気。
誰も、すぐに口を開けない。
「……」
玉座の間。
王。
重臣。
騎士団長。
すべてが揃っている。
それでも。
「……手が出せない、か」
王の低い声が、響く。
「はい」
アルヴェルトが、静かに答える。
「現象は“物理的干渉を受け付けません”」
「いかなる攻撃も」
「無効です」
「……」
沈黙。
「……」
騎士団長が、拳を握る。
「我々の力では……届かないと?」
「残念ながら」
アルヴェルトは、はっきりと言う。
「“戦う”という前提が成立しません」
「……」
ざわめき。
抑えきれない。
「……では」
一人の貴族が、声を震わせる。
「軍を動かす意味は……?」
「ありません」
即答。
「……」
絶句。
「……」
別の貴族が、立ち上がる。
「ふざけるな!」
「王国全軍だぞ!?」
「それが何もできないだと!?」
「……」
アルヴェルトは、視線を逸らさない。
「事実です」
「剣も」
「魔法も」
「戦術も」
「すべて通用しません」
「……」
言葉が、突き刺さる。
「……」
王が、静かに問う。
「では」
「我が国は」
「ただ見ていることしか出来ぬのか?」
「……」
一拍。
そして。
「はい」
「……」
完全な沈黙。
誰も、否定できない。
「……」
騎士団長が、歯を食いしばる。
「……無力……か」
「……」
誇り。
それが、崩れる。
「……」
その時。
リリアが、一歩前に出る。
「……一つだけ」
「手があります」
「……」
全員の視線が集まる。
「申してみよ」
王が言う。
「……」
リリアは、静かに答える。
「レインです」
「……」
ざわめき。
「……誰だ」
「ただの冒険者ではないのか?」
「……」
アルヴェルトが、低く言う。
「唯一」
「“歪み”に干渉できる存在です」
「……」
空気が、変わる。
「……一人、だと?」
「はい」
リリアは頷く。
「彼だけが」
「この現象に触れ」
「修正可能です」
「……」
信じられない。
だが。
否定できない。
「……」
王が、ゆっくりと目を閉じる。
そして。
「……皮肉なものだ」
「……」
誰も、言葉を挟まない。
「国家が」
「一人の人間に頼るしかないとは」
「……」
重い現実。
「……」
騎士団長が、低く言う。
「……その男に」
「すべてを託すしかないのか」
「……」
アルヴェルトが、静かに頷く。
「現状は」
「それ以外に手はありません」
「……」
沈黙。
そして。
王が、決断する。
「……よい」
「その者に」
「すべてを委ねる」
「……」
誰も、反対しない。
できない。
それが。
唯一の選択だから。
「……」
その頃。
「じゃあ次どこ行きます?」
「軽いのよ!!」
当人は、いつも通りだった。




