第113話 無効
「――結論から言う」
アルヴェルトが、低く告げる。
「通常戦力では」
「一切干渉できない」
「……」
沈黙。
分かっていた。
だが。
改めて言われると。
重い。
「……つまり」
カレンが、ゆっくり聞く。
「剣も魔法も意味なし?」
「その通りだ」
即答。
「……」
ミアが、小さく呟く。
「じゃあ……戦えない……?」
「戦うという概念が成立しない」
アルヴェルトの声は、冷静だった。
「対象は“物質”ではない」
「斬ることも」
「壊すことも」
「封じることも」
「すべて無意味だ」
「……」
空気が、沈む。
「……」
リリアが、静かに言う。
「では」
「王国軍は」
「完全に無力ということですね」
「……」
アルヴェルトは、少しだけ目を伏せる。
「残念だが」
「そうなる」
「……」
カレンが、苦く笑う。
「何のための騎士団よ」
「何のための戦争準備よ」
「……」
誰も、答えられない。
「……」
ミアが、震える声で言う。
「じゃあ……」
「もし広がったら……」
「止められないんですか?」
「……」
アルヴェルトは、はっきりと言う。
「止められない」
「……」
絶望。
それ以外の言葉が、出てこない。
「……」
外では。
既に。
別の地点で。
歪みが広がっている。
誰も。
何もできないまま。
「……」
カレンが、拳を握る。
「……ふざけてるわね」
「戦うことすら出来ないとか」
「……」
リリアも、静かに目を閉じる。
「……これは」
「“災害”です」
「敵ではない」
「……」
ミアが、俯く。
「……怖いです」
「……」
その時。
「大丈夫ですよ」
「どこがよ!!」
即ツッコミ。
「今“何もできない”って話してるのよ!?」
「はい」
レインは普通に頷く。
「でも」
「触れますよね」
「……」
沈黙。
「……」
全員が、理解している。
ただ一人。
例外がいることを。
「……」
アルヴェルトが、ゆっくりと言う。
「……君だけだ」
「干渉できるのは」
「……」
レインは、特に気にせず。
「じゃあやりますね」
「軽いのよ!!」
「……」
だが。
その軽さとは裏腹に。
事実は、重い。
「……」
世界規模の異常。
国家総力。
騎士団。
魔導師。
すべて――
「無意味」
「……」
ただ一人。
例外を除いて。
「……」
ミアが、顔を上げる。
「レインさんなら……」
「できます」
「……」
カレンが、深く息を吐く。
「……ほんと」
「バランス崩壊してるわね」
「……」
リリアが、静かに言う。
「ですが」
「それが唯一の解です」
「……」
アルヴェルトが、小さく呟く。
「……戦争が」
「無意味になる日が来るとはな……」
「……」
剣も。
魔法も。
軍も。
戦術も。
すべて通じない。
それが。
今回の敵。
「……」
レインが、一歩前に出る。
「じゃあ」
「原因、直しに行きますか」
「軽いのよ!!」
だが。
その一歩が。
唯一。
世界を救う手段だった。




