第111話 中心
「――結論から言おう」
アルヴェルトが、静かに口を開く。
「歪みには“中心”がある」
「……」
全員が、言葉を待つ。
「そして」
一拍。
「それは既に、仮説として存在している」
「……?」
カレンが眉をひそめる。
「何よそれ」
「……“魔王”だ」
「……」
沈黙。
一瞬だけ。
そして。
「……は?」
カレンが、素で聞き返す。
「いやいやいや」
「急にファンタジー来たわね」
「元からファンタジーよ」
リリアが冷静に返す。
「……」
ミアが、小さく言う。
「でも……魔王って」
「もっとこう……」
「強い敵、みたいな?」
「その認識で間違ってはいない」
アルヴェルトが頷く。
「だが今回の“魔王”は違う」
「……」
空気が、再び引き締まる。
「通常の魔王は」
「強大な力を持つ“個体”だ」
「だが」
資料を指で叩く。
「今回の存在は」
「“現象そのもの”に近い」
「……?」
カレンが顔をしかめる。
「分かりにくいのよ」
「簡単に言えば」
アルヴェルトは言い直す。
「これは“生物”ではない」
「……」
ミアが、息を呑む。
「じゃあ……何なんですか?」
「……」
一拍。
そして。
「“歪みの核”だ」
「……」
沈黙。
「……それ」
カレンが低く言う。
「倒せるの?」
「分からない」
即答。
「でしょーね」
「……」
アルヴェルトは続ける。
「この存在は」
「世界の法則そのものに干渉している」
「つまり」
「“世界の一部”だ」
「……」
リリアが、小さく呟く。
「……切り離せない」
「その可能性が高い」
「……」
ミアが、不安げに言う。
「それって……」
「倒したら世界も……」
「影響を受けるだろう」
「……」
空気が、重く沈む。
「……最悪ね」
カレンが吐き捨てる。
「敵倒したら世界壊れるとか」
「ゲームバランスおかしいでしょ」
「……」
その時。
「そうなんですね」
「軽いのよ」
即ツッコミ。
「今めちゃくちゃヤバい話してるのよ!?」
「はい」
レインは普通に頷く。
「歪みの中心ですよね」
「そうよ!」
「じゃあ、そこ直せばいいですね」
「だからそれが問題なのよ!!」
「……」
レインは、少し考える。
そして。
「壊れてるなら」
「直せばいいだけです」
「だからそれをどうやって!!」
「……」
沈黙。
だが。
アルヴェルトが、ゆっくりと言う。
「……理論上」
「唯一干渉できる可能性があるのは」
「……」
視線が、集まる。
レインへ。
「君だけだ」
「……」
ミアが、こくりと頷く。
「レインさんなら……」
「できます」
「根拠がふわふわすぎるのよ」
カレンが呟く。
だが。
否定はしない。
できない。
「……」
リリアが、静かに言う。
「……行くしかありません」
「中心へ」
「……」
全員が、理解する。
これが。
最終段階への入り口だと。
「……」
レインが、軽く言う。
「じゃあ」
「魔王、見に行きますか」
「観光じゃないのよ!!」
だが。
その一言で。
覚悟は、決まった。




