第102話 ズレ
「……あれ?」
ミアが空を見上げる。
「……?」
昼。
のはずだった。
だが。
空が、暗い。
「……雲?」
カレンも見上げる。
「いや……違うわね」
重い。
ただの曇りではない。
「……」
リリアが、静かに呟く。
「時間です」
「え?」
「今は、昼のはずです」
「でも」
空は――
夕方のように、赤い。
「……は?」
カレンが眉をひそめる。
「いやいや、さっきまで普通に昼だったでしょ」
「はい」
ミアも頷く。
「太陽、真上にありました」
「……」
その時。
すっと。
光が戻る。
「……え?」
一瞬で。
空が、昼に戻る。
「……」
沈黙。
「……今の、何?」
カレンの声が低い。
「……」
リリアも、すぐには答えない。
「……」
ただ。
空を見る。
そして。
「……説明できません」
「でしょーね」
「……」
ミアが、不安げに言う。
「さっきの……夢じゃないですよね」
「現実よ」
カレンが即答。
「最悪ね」
「……」
その時。
風が、止まる。
ぴたりと。
「……?」
次の瞬間。
ドン、と。
空気が変わる。
「――っ!」
豪雨。
一気に、叩きつけるような雨。
「ちょっ!?」
「急すぎでしょ!!」
数秒前まで、晴天。
それが。
一瞬で。
嵐。
「……」
さらに。
ぴたり。
止む。
「……」
そして。
何事もなかったかのように。
晴れる。
「……」
誰も、動かない。
「……」
カレンが、ゆっくり口を開く。
「……これ」
「完全にアウトでしょ」
「はい」
リリアも即答。
「自然現象ではありません」
「ですよねー」
ミアが、小さく呟く。
「なんだか……怖いです」
「……」
静かに。
不安が、広がる。
「……」
その中で。
「変ですね」
いつもの声。
「変どころじゃないのよ」
カレンがツッコむ。
「世界がバグってるのよこれ」
「そうですね」
「軽いのよ!!」
「……」
レインは、空を見上げる。
昼。
晴天。
何も、異常はない。
今は。
「……」
ぽつりと。
「直せそうですね」
「何を!?」
「この感じ」
「いや分かんないのよ!!」
「……」
リリアが、静かに言う。
「……“ズレています”」
「何がよ」
「すべてです」
「……」
短い言葉。
だが。
重い。
「時間」
「天候」
「出現現象」
「すべてが」
「“本来の流れから外れている”」
「……」
ミアが、息を呑む。
「……じゃあ」
「世界が……」
リリアは、静かに言う。
「おかしい」
「……」
その一言で。
すべてが、繋がる。
「……」
空は、青い。
何も問題ないように見える。
だが。
確実に。
どこかが。
壊れている。
「……」
レインが、一歩前に出る。
「とりあえず」
「原因、見に行きますか」
「軽いのよほんとに!!」
だが。
誰も、止めない。
止められない。




