第101話 違和感
「……またですか?」
報告書を見ながら、ミアが首を傾げる。
「ええ」
リリアが静かに頷く。
「同じ地点で、三度目の発生です」
「三回!?」
カレンが眉をひそめる。
「それ、普通じゃないでしょ」
「はい」
即答。
「通常、魔物は一定期間で分散します」
「同じ場所に連続して出現することは――」
「ありえない?」
「ほぼ、ありません」
「……」
空気が、少しだけ重くなる。
「……偶然じゃないの?」
カレンが腕を組む。
「一回ならそう思うけど」
「三回はさすがにね」
「ええ」
リリアも同意する。
「しかも」
「出現間隔が短すぎます」
「……」
ミアが、小さく呟く。
「なんだか……嫌な感じです」
「……」
その時。
「そうなんですね」
いつもの声。
「軽いのよ」
カレンが即ツッコミ。
「状況分かってる?」
「魔物が増えてるんですよね」
「そうよ!」
「じゃあ倒せばいいですね」
「そういう問題じゃないのよ!!」
「……」
レインは、報告書をちらりと見る。
「……」
少しだけ。
考える。
「……」
だが。
すぐに。
「増えるなら増えるで」
「処理すれば問題ないと思います」
「脳筋!!」
「合理的です」
「認めたくないけど正論なのよ!!」
ミアが、くすっと笑う。
「でも……ちょっと変ですよね」
「……」
リリアが、静かに言う。
「はい」
「“増えている”のではなく」
「“繰り返されている”」
「……?」
カレンが首を傾げる。
「何が違うのよ」
「通常は、移動や分散が発生します」
「ですが今回は」
「同じ場所で、同じような個体が」
「同じように出現している」
「……」
ミアが、小さく言う。
「まるで……」
「やり直してるみたいです」
「……」
その一言で。
空気が、変わる。
「……やり直し?」
カレンが呟く。
「……」
リリアは、わずかに目を細める。
「……可能性としては」
「否定できません」
「何それ、気持ち悪いわね」
「はい」
短い肯定。
「……」
外。
遠く。
問題の地点。
同じ場所。
同じ森。
その奥で――
「……」
影が、揺れる。
そして。
また。
現れる。
同じ。
まるで。
何もなかったかのように。
「……」
誰も、まだ知らない。
これが。
ただの異常ではないことを。
「……」
レインが、ぽつりと呟く。
「ちょっと見に行きますか」
「軽いのよ」
だが。
その一歩が――
世界を変える。




