第6話
≪……は? イリスが……ホムンクルス?≫
「あぁ。……我々としても非常に疑わしくはあるが、それを裏付ける記録や人体構造、モニタリング記録などの資料が次々と見つかっている。…………彼女は、ヴォルカ特務官は複数名の大賢人の遺伝子を使って生み出された大賢人の複製体及びハイブリット型だ。」
本当に……私も否定したかったのだけれどね。
どういう訳か、イリス達が乗船している《渡し守》はイリスに探知され、より深く超深海へ潜水していても補足から逃れられないとAZOTHから報告があった。それも……記憶を失い、著しく精神が幼児化してしまっているイリスに。
そこから皮切りに、《黑閃》やヨハンの探知魔法でも本当にぎりぎりだが一端を探知されてしまう事態に発展し、《渡し守》がより深く潜水。その影響で《渡し守》に怯えていた非敵性海洋生物達が《黑閃》周辺に集まり、かと言って《渡し守》を警戒して敵性海洋生物が近付けず……となかなかのサイクルを発生させてしまっている。
その影響により、視界の端で酷くAZOTHが頭を抱えているのだが。
全く、彼の演算が追い着かないからこその君達なんだろうけど。
「……ヴィクトル。他でもない君の事だ、私と戦場を共にしていたあの頃のように、わざわざ言わずとも分かるとは思うが……。」
≪あいつらには内密に、だろ。分かってる。≫
「結構。では引き続き、幾つか情報共有をしたいが……先に共有しておきたい事はあるかい?」
≪……そう、だな。……イリスの記憶喪失の件も謎の生物の話もしたし……。……あ、そうだ。アルドリック、少し寄り道をする。≫
寄り道? あのヴィクトルが?
「……行先は?」
≪蒼海の丘。……イリスの良い気分転換になるんじゃねぇかと思って。俺達も殆ど国外には出ねぇし、丁度少しルートをズレるだけだ。……1日ぐらい航行日数が増えたって支障ねぇだろ。≫
「蒼海の丘、か……。良いだろう、行っておいで。美しさに見惚れて離れ離れにならないように。」
≪おう。≫
蒼海の丘……か。
その名を聞いて非常に久しい。数十年前に観測され、今では国際法によって何処の国もその島を保有する事が許可されぬ、中立島。あらゆる国家が国力増強の為、世界の殆どが持ち主の居る土地ばかりなのにその例外であるあの島はかなり稀少だ。
元々、あまり綺麗な物に興味を持たないイリスが何処まで反応を示すかは不明だが、少なくとも聞いている限りだと楽しんではくれるだろう。問題はその後どうするのか、だが。
普段の彼女なら……気に入った者は再現しようとするはず。幾つかサンプルを取るか……?
≪……そういや、聞いときたい事があったな。≫
「何かな。」
≪俺も移動しつつ聞いてたからあれだが……イリスが何か、お前の名前を聞いた途端に大人しくなりやがったな。何か心当たりは?≫
私の名前を聞いて……?
「…………君達が知っている以上の事は何もないはずだが? 少なくとも、私とヴォルカ特務官が2人だけで話をするなんて……任務を与える時か、たまに食事を共にする時ぐらいだね。セヴェリウスと3人で話した事もないし……皇帝陛下と共にの時はヴァルガルト君とアイゼン君が同席するから2人きりでもないね。」
≪……そ。まぁ、ならとりあえず良い。んじゃ、俺からは異常だ。……そんで? わざわざゆっくり頭ん中整理する時間を設ける程の情報共有ってのは? 正直、イリスの出自の件だけでも大分だと思うんだが?≫
「……――ラグナレイズ帝国皇族が既に自害の上、それを贄にして何かを創り出した。又は呼び起こした可能性がある。……この島から脱出している可能性もね。」




