第5話
「……?」
「どしたんや、お姫さん。」
「……この船、生き物……載せてる?」
「あぁ、リュウセイ種か。」
「リュウセイ……?」
「……ま、あいつらなら大丈夫だろ。」
「一緒に会いに行こっか。」
「うん……!」
やっぱり、イリスの飽き症な所は健在だ。大人しくトウマにおんぶされたまま、尾をゆらゆらと動かしながら運ばれていくイリス。記憶を失ってからのイリスにとって、初めての廊下は十分に面白いようで周りをきょろきょろと確認している。
イリス先輩がアウレリウス帝国に来た当初も……こんな感じだったんだろうか。
「……ねぇ。あのおっきい水溜まり……何?」
「海って言うんだよ。」
「うみ?」
「そう、海。こう書くんだよ。」
指先に魔力を纏わせ、イルメリナが空中に文字を書く。触れられないと分かっているのか、イリスがそれに手を伸ばす事もないが……何処かぼんやりと眺め、一度視線を落としてからもう一度その文字を眺め、顔を背けてトウマにより身を寄せる。
「……海は、怖い所。…………海は、墓場だから。」
「イリス……。」
「ん……? あぁ。悪い。お前ら先に行っててくれ。」
「何かあったのー?」
「アルドリックから連絡。聞いてからそっち行く。」
「はーい!」
「……あまり良いニュースではなさそうだね。」
「まぁ……そうね。私達もイリスの事、報告しないといけないし。」
「アルドリック……?」
「アルドリック・シュタール。お前は……よくリックって呼んでた、俺達帝国魔導特務局の責任者だよ。」
「……リック。……………………リック。」
「……? アルドリックがそんなに引っかかるかい?」
「……………………ぅうん。何も。……何も、ない。」
どうにも言いたくないらしい。あれだけ明るくテンションの高かったイリスはいじけているとも拗ねているとも言えない様子で、どちらかと言えば怖がっている……だろうか。
確かに、アルドリックと言えば日頃から妙に鋭い所や不気味な所は多くある。しかし、だからと言って非道と言う訳ではない。……実際、記憶を失ってしまう前のイリスはアルドリックと仲が良くも悪くもには見えていた。
内心、警戒してた……? それとも、ここに居ないからこそ疑ってる。
「……流石にそれは突拍子過ぎる、か。」
「ノア君、何か言った?」
「いえ、何でもないですよ。それより……早く行っちゃいましょうよ。イリス先輩も、その……尾が特に元気なさそうですし。」
「……まぁ、完全に意気消沈してはいるな。」
「い、イリス! 早くリュウセイ種のとこ行こっか。私の尻尾よりもずっとふわふわしてるよ?」
「……ん。」




