第23話
「もしかしたらとは思ったけど、まさか本当にご飯食べてないなんて……。駄目でしょ、ちゃんと食べないと。」
「…………何入ってるか、分かんないし。」
「……お前、前に毒の有無が確認出来る魔法開発してなかったか?」
「……………………発想、なかった。」
「おい。」
誰もが何となく感じ取ってはいたが、本当にこの1週間何も飲み食いしていなかったらしい。むしろ、それであれだけ派手な空母で国に突っ込むなんて芸当が出来た事に驚きを隠せないのだが。
ただ、基本的にイリスの食は……まぁまぁ細い。大人しく食べてはいるが、ポトフの減り具合はあまり早くない。少なくとも嫌いという訳でもなく、相変わらず若干の猫舌ではあるようだが……それにしても
「……イリス先輩、どうかされましたか?」
「…………ぅうん。」
「嘘吐け、何かあんだろ。」
「イリス、怒んないから教えて?」
「イリス……俺達はただ、君の力になりたいだけだよ。」
「……。」
「……言い辛い事なんか?」
「……………………追い駆けてくると、思わなかった。」
「俺は君が居る場所なら何処にでも行くよ。」
「……まぁ、俺も。俺にだって、出来る事ぐらい……たまにはあるだろうし。」
「まぁ、仲間だからなぁ」
「……………………セヴェリウスが先に来てて、アルドリックも通信飛ばして来て……びっくりした。」
「帝国は……我々アウレリウス帝国は特務官イリス・ヴォルカを。君を実験体とは断じて見ていない。何より、君は私達にとって家族のような物。特務局とはそういう物だ。」
「……………………アル殺そうとしたり、誘拐しようとしたり。……………………15年前、アルのお母さんを殺した国の人間なのに?」
「その国の出自だからと言って恨んでいたらきりがないだろう。……まぁ、もしもそういう民族性と言うのであれば話は別かもしれないが、君はそうではない。誰が何と言おうと、我々は君の素晴らしさを知っているからね。」
「……………………裏切るかもよ、その内。私は」
「イリス先輩。」
「……。」
「嫌われようとしなくて大丈夫です。遠ざけようとする必要もないです。……イリス先輩。俺達は決して、イリス先輩を害したりしませんよ。」
長く大人を信じられなかったのもそうだが、これまで助けてくれる大人が居なかったのもあって、イリスは好かれる事よりも嫌われる事の方が癖になってしまっているのだろう。これも、これから少しずつ覚えていってもらわなければならない。
イリス的には未だ受け入れるのが難しいようで、少しの沈黙の後にスプーンでポトフの中の食材を刺して砕いたり。ジャガイモを平面で押して潰したりと、どうやら判断に困っているらしい。
……まぁ、仕方ないですよね。
「イリス先輩。ちょっとずつで良いです、今全部分からなくたって良いんです。少しずつ、分かろうとしていただければ。今までよりもう少し、興味を持っていただければそれだけで十分なんですよ。」
「…………難しい。」
「なら、今はそれで良いんじゃないかな。少なくともイリス、君はノアの言葉を受けて拒否する事を辞めた。それもある意味、理解しようと努めているに入ると思うよ。」
「……………………分かんない。」
「イリス。……イリスは私達と居て、しんどい?」
「……………………別に。」
「ったく、相変わらず素直じゃねぇなぁお前は。」
「そこもまた可愛いんだけどね~。」
「ほんならイリス嬢、これからは楽しい事や嬉しい事があったら俺らにも教えてくれへんか。」
「……? …………まぁ、分かった。……それぐらいなら。」




