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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と神代の怨嗟~

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第21話

「じゃあ次、神殺しについてだな。」

「そこよ、問題は、人体の8割の血って……。」

「……出血性ショックは勿論の事、生死がかなり危うい量だね。本来であれば間に合うかどうかすらも。」

「……間に、合うんですか?」

「問題ないよ。俺は元々血液学を専攻してる吸血鬼だ、輸血に関しては心配ない。傷の手当手に関しても手はあるけど……問題は、血の魔法っていうのは基本的に繊細な物が多くてね。輸血の仕方も、元々患者の体内を流れる血流の速さとか濃度に合わせないと拒絶反応が出易い。だから、俺が治療しながら運ぶ事は出来ても戦闘は出来ないし、一瞬の邪魔が入れば直ぐに乱れる事になる。」

「なら、死守しないとな。ヴィルヘルム、念の為に防殼結界ジャケットと、後はリストバンドも着けとけ。イリスにも後でバンド足に着けてやる。どーせあいつの事だ、派手に躊躇いなく両腕裂くだろうよ。」

「……全く。自傷に対してまるで抵抗がないのもこの国の影響なんだろうね。」


 今日程この任務……使命、というべきだろうか。これに関わるのがこの特務局で良かったと思った事はない。

 つい先程イルメリナによって強制的に眠りに就いたイリスも……やっぱり、疲れていたんだろう。かなり眠りが深く、今ではかなり脱力した様子で熟睡されている。


 ……大変だっただろうからなぁ、この数日間は特に。


 誘拐され、そしてたった1人であの空母を制圧。殺しに殺して暴れ回って、まだやる事が……イリスにしか出来ない事が待っているなんて、あまりにも惨い。

 せめて、俺達に出来る事は全てやらなければ。これまで全て自分でやらなければならなかったイリスに比べれば、ノア達に出来る事は少ないかもしれない。それでも、零じゃないならやりようは幾らでもあるだろう。


「……。」

「確か……水銀を流し込むのに、アスタロト主教から受け取っとる笛とやらを吹くんやったか。そんな状態のイリス嬢に吹けるんか?」

「……代わりに吹いちゃう? もし、魔力とか吸い上げるタイプだったら危ないし……。」

「まぁ……そうだな。一応、それについては後で確認が必要だろうよ。」

「水銀を注入した後どうなるのかも気になる所だよねぇ……。そんなに素直に死んでくれるかなぁ?」

「……まぁ、普通は抵抗するだろうし、地下のそういう施設って大体落盤すんだろ。」

「島ごと沈んでもうたりしてな。」

「辞めろ馬鹿、割とありえそうじゃねぇか。」

「ノア……? さっきから急に静かになってイリスの事見てるけど……何か気になる事でも?」

「え? あぁ……ヴィル先輩、1個良いヴィル先輩だからこそ出来る甘やかしありましたよ。」

「え、俺だから出来る甘やかし?」

「……おい、ノア。変な事言うんじゃねぇんだろうな。」

「ノア君……まだ何処か動揺してる?」

「変かどうかは割と難しい所だとは思いますけど……子供と言えば、寝る前に額とかにお休みのキスしません?」

「……………………。」

「……ふむ。こっちにはそういう文化があるんか。俺の故郷にはなかった文化やな。」

「……ヴィルヘルムがキャパオーバーしてる?」

「……まぁ、主流ではあるけどそれで恥ずかしがる人も初めて見たし、これまで経験した事がない人も初めて見たわよ。」

「男は割とねぇだろ。」

「まぁ……中流家庭とかなら普通なんじゃねぇか? 昔、黑薙隊(部隊)に居た時にそういう奴は居たぞ。男でも、幼少期の時は~とか。まぁ家族仲も多少関係あるんだろうけどよ。」


 ……変な所で奥手だからなぁ、この人。


「……………………頭を撫でる所から始めようかな。」

「ヘタレ。」

「うん、これはヘタレだと思う。」

「ヴィルヘルム……。心で負けたらあかんやろ。」

「っ……。」

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