第18話
「みゃー。な”ぁ~~~!」
「喚くなぁ……逃げようとするお主が悪いんだろう。」
「な”ぁ~~~!」
どうしても特務局を待ちきれず、セヴェリウスの一瞬の隙を探して逃げようとして……失敗した。結果、再発防止を狙ったセヴェリウスの所為でしっかりと四肢をそれぞれ別の腕で掴まれてしまい、その場に座る事を強要されているイリスの表情は分かり易く不満が描かれている。
そこでイリスに同情して解放してやる程に優しくないのもこのセヴェリウスだ。たんたんたんと尾が地面を殴りまくっており、たまに直接セヴェリウスを殴ろうとしては空いている手でそっとガードされて終わる。……その癖、決して尾を掴もうとはしないのは返って不気味だ。
ひーまーぁあ~~~!!
「イリス……!! 無事でよ、……。……え? ま、待って待って、どういう状況?」
「……おい、セヴェリウス。イリスに何してやがる。」
「ようやっと来たか、特務局。ほれ、其方のお嬢さんが大層物騒でなぁ。放っておくと命を捨てそうだから保護しとっただけだ。」
「「「「え”。」」」」
「フシャーー!!」
「ほれ、お友達が来たぞ。遊んでもらってこい。」
子供扱いの次は猫扱いらしい。イリスの腕を掴んでいた手が肩を掴み、足を掴んでいた手が胴体を掴んだのが……まずかった。丁度、セヴェリウスの腕が掴んでいた所が先の空母から脱出する際に折った肋骨をダイレクトに触れてしまったようで、激痛でイリスが呻き。自然と鈍い悲鳴が零れる。
それでもセヴェリウスは敢えてイリスを解放せず、そのままの状態でぽんっ、とヴィルヘルムへと明け渡す。それでも未だ、傷の痛みは楽にならないようでそのままその懐に沈む事になる。
「い”……!!」
「全く、何が軽くだ。しっかり圧し折れておるではないか。ヴォルカ、せめてその手当てが済むまで大人しく休んでおくんだな。そう心配せずとも虐殺は元より我々の領分だ、たまには甘やかされる事も素直に覚えるんだな。」
「し、しっかり折れてるって……え、何ですかあの空母。とんでもない接岸の仕方してません?」
「……いや、接岸どころか普通にミサイル並みに突っ込んでんだろ。」
「……俺としてはあそこにある夥しい数のミサイルも気になるんやけどなぁ。」
「と、とりあえず……肋骨か肩かな。折れてるのは。1回船に戻ろうか、イリス。」
え、
「だ、駄目。まだ、まだ帰っちゃ」
「特務局、どうやらここで色々と用事があるそうでな。我々の方で色々と準備はするが……それが終わるまで、船から決して出さぬように。油断すると直ぐに逃げようとするからな。」
「……。」
「むくれるな。ほれ、行った行った。詳しい事は全部ヴォルカから直接聞きなさい。」
「……分かりました。」
「……まぁ、色々思う事はあるけど分かったよ。連れてってまだ船を着岸させたままにしときゃあ良いんだろ。」
「ちょっとごめんね、イリス。」
相変わらずヴィルヘルムの抱え方は優しく、ちゃんとイリスが痛がっていたのが右半身だと見抜いていたらしい。痛くないように、左半身を委ねるように抱き上げられる。
ぱっと見であればそちらの方が痛そうではあるが、体を支える為に手を回されるよりはまだましだ。むしろ、この状態で暴れた方が痛いのを分かっている影響から動く事も出来ず、何とも言えない表情で我慢するしかないイリスは……どうにも、何かとやりにくくして仕方なさそうだ。
「ヴォルカ。」
「……?」
「年齢の件も必ず伝えるように。」
「……チッ。」
「舌打ちをするんじゃない。はしたないぞ。」




