第16話
「だから、協力出来ないなら……帰れ。正直、時間……ない。神代の神様、夜になると強くなる。だから、夜までに皆殺しにして起こして、弱いうちに殺さないと。」
「……とりあえず、分かった。ヴォルカ、とりあえず現状、私と共にここへ上陸した暗務局及び異端審問教会の局員と信者達がこうして話している間にも敵の殲滅に励んでいる。だからまだお主から説明を聞くだけの時間はあるはずだ。」
……。
「…………え、どうやって来たの。」
「この状況で気になるのがそれか?」
≪もっと言ってやっておくれ。≫
「シュタール卿!?」
…………いやほんと、どうやって来たの。
何となく、ぼんやりと。正直否定したいぐらいの可能性として……少し視線を左側に移して見える夥しい数のミサイルの残骸。何となく見覚えがあるなぁなんて遠く考えながら眺めていれば……やっぱり、ヴィクトルが作ったミサイルにかなり酷似している。
その数は100や200では済まず、1000に届くか届かないかぐらいの数だろう。あれぐらいの規模であれば確かに来れなくもなさそうだが……そもそもあれを使ってどうやって来たのかという別問題が発生する。
もっと気になるのは、それが剣山のように間を数cmだけ残して見事に衝突せずぎりぎりの距離で全弾まともに地面に、綺麗な角度で突き刺さっている異形よりも異様な光景についても正直直ぐ、説明してほしい。
……………………やっぱり、神様より宗教の方が怖い。
「……さっきも説明したけど、既に始まってしまってる儀式を止める事はもう、出来ない。今からこの空やこの海、この大地の汚染を巻き戻す魔法なんて私にない。」
「うむ、それは私にもないな。」
≪……そもそもアルレリウス帝国の何処を探しても、たった数時間で環境汚染を改善出来るような物は存在しないね。規模を世界に引き上げてもないんじゃないかな。≫
「だから、儀式を完遂させて根源を断つしかない。」
「そこだ。何故、その為にこの国の人間を全て殺さねばならんのだ?」
「死のエネルギーを、死体を使って力を得る神様だから。顕現させる為に必要な魔力の性質が死のエネルギーで、その必要量が丁度この国の人間の住人の数と合致する。」
「……なかなかに腐っておるな。」
≪ヴォルカ特務官、もし仮に神殺しに失敗した場合……どうなる?≫
「ここを離れて近場の国々から命を絶やして回る。……神様が討たれるか、命が絶えるまでサイクルが止まらない。」
≪……なかなか“大した妄想だ”と言って蹴り飛ばしたい内容だね。しかし……あのエスメラルダ、か……。……………………誰もが不可能だと考えた魔導文明を定着させた人物の放棄された理論。なかなか……ん”ん”。……なかなか絶望的じゃないか。≫
「では、このまま順調にこの国の民を皆殺しにした場合……その後は?」
「……あそこ。あそこが、裂ける。」
イリスが指差したのは……この国の皇城。今さっき、イリスが玄関ホールまで突き破ったあの城を指差し、あのセヴェリウスですらも固まる。
誰も想像しやしないだろう、あれだけ立派で不気味な皇城が裂けるなど。その裂けるという表現すら、正直なかなか理解が難しい。
「……皇城が、建造物が裂ける? 何かが地の底から割って這い上がってくるとでも? それとも、空から何かが墜ちてくるのか?」
「ううん、あれは……外殻。あの城は飾り城、内側の大部分が立ち入れない。あの城その物が……神代の神様の、死体。」
「神の死体……!!?」
≪……成程。少し分かってきた。つまり……神を召喚するのではなく、仮死状態又は既に死んでいる神を復活させる。その後、何らかの理由でその死体では生命を存続出来ないから君のような依り代を必要にする、と。≫
「そう。……神様の死体には頭と左半身の本来心臓があるべき場所が大きな風穴になってる。生命活動を維持出来ないどころか、そもそも生命として生きる事が出来ない。…………でも、そんな物を野晒しにする訳にはいかないから、あれを隠す為にあの城が建造された。だから、あの皇城が裂けてこの国中の死のエネルギーが吸収されて……死体から魂が出てくる。」
「そして、それが依り代であるお主……又は、依り代になり得る何かの中に入り込む。」
「そう。魂の状態では殺せない。だから、殺せる器を用意する。」
だから
≪……待ちなさい。それで行くのであれば君が≫
「そう、私は絶対に死ぬ。死なないと駄目。」
≪――セヴェリウス、抑え付けろ。≫
「ヴォルカ、大人しく」
「もう1つ、手段。」
「……。」
≪……。≫
≪……その別の手段というのは?≫
「あの城の地下深く、神様の魂を閉じ込める為の箱が……炉がある。多分、神様を洗脳する為に私みたいな《神ノ箱》が何らかの事情で死亡。又は耐えられずに失敗した場合に備えて、無機物の器がある。あれを起動して……閉じ込めて、毒を流し込んで殺す。」
「……成程。その方が良いだろうな。それで、そこへ向かうルートや起動させる方法は分かっておるのだろうな。」
「《神ノ箱》の生き血。」
「……………………つくづく気味の悪い国だ。」
「でも、そっちも人体の8割近くの血が必要になる。……それを捧げる事で私は依り代の条件を満たせなくなって、必然的に神様はあそこに入るしかなくなる。……………………一応、他の特務官達も魔力保有量的には依り代の条件、満たしてるけど未成年である事が条件だから……大丈夫な、はず。」
「未成年……? 待て、ヴォルカ。お主、歳は。」
……?
「……ノアが特務官になった日で、16。」
「16!!? お主、その見た目で……その身長と精神成熟度合いで16!?」
≪………………………………………………?≫
「しゅ、シュタール卿、シュタール卿!? 思考を放棄せんでくれ、シュタール卿!」
神様と言い、彼らと言い、そんなにイリスの年齢が重要らしい。依然として目の前に居るセヴェリウスも、通信機の先に居るアルドリックも動揺するのに忙しいらしい。
……説明放棄して儀式に戻って良いかな。




