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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と違法種族転化~

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5/10

第4話

「……ヴェルカーさん。」

「……死にたくなけりゃ離れるな。」


 アウレリウス帝国、それは機械と魔導の街。何処もかしこも緻密な機械だらけで、見ているだけでわくわくするような何処までも未来的な街。何処に行っても多少のオイルと硝煙の匂いは消えず、人の往来や店のカテゴリがどれで集中しているかで多少雰囲気が変わってくる。

 街頭は全て魔導科学で作られていて、基本的に自動車の類も浮遊している関係から道路も非常に綺麗で。タイヤなんて物は数世紀前に絶滅したような世界だ。

 そんな世界でも、少し街の喧騒から離れるときな臭い場所なんて幾らでもある。

 イリスの記憶では、帝都西部は元々職人の街だった。帝都内でも特に排気ガスの排出が多く、それ故に空気を浄化する結界が複数張られて環境に対する影響を特に気遣われている地域。――そこが腐敗する事など、ないように。

 我々特務局の人間も、よく何かを開発したり。改造したりする時はよくここに訪れて買って帰る事も多かったのに、今日の西部は随分と空気が重い。

 まるで病が蔓延しているようで、路地裏でもないのに何人か路上に座り込んでいるホームレスのような者も確認出来る。あんな者は帝国の法律上、定期的に行われる美化活動でカウンセリングやハローワークなどの専門機関で介助される事が殆どでこうも纏まった数が見られるような存在ではない。


 もしも今回の事件に関連がなかったとしても、何かあるのは間違いないな。


「……。」

「……何をしている。そんなに置いていかれたいのか。」

「いえ、その……。そこに座り込んでいる方、多分もう亡くなってます。」

「何?」


 基本、帝都にはあちこちに巨漢の人型をした警備ドローンが問題を検知次第亜空から現れて対処を開始する。その対処の対象として、死体などの後処理も含まれている事からイリス達が通るまで死体が路上に放置されている事なんてまずありえない。それこそ、偶然このタイミングで死に絶えたとしても直ぐに警備ドローンが飛んでくるはずだ。そう、イリスと同じく特務官のヴィクトル・アイゼンベルクが設定したのだから。

 それもこれも、同じく特務官のヴィルヘルム・ローゼンが感染症の蔓延や深刻化を少しでも防ぐ為にヴィクトルと共同開発した制度で。それを皇帝に進言したからに他ならない。

 それが、この西部では機能していないと言う。


 どういう事だ……?


 状況を見るに、あそこの死体と西部の機能不全。関係がない方が不自然だ。可能であれば自力で調べたい所ではあるが、必要に応じて

 ぴぴ。ぴ


「ヨハン。」

≪……めちゃくちゃ嬉しそうにするじゃん。何、寂しかった? お前が嬉しいと俺も嬉しいんだけど。≫

「丁度お前に頼みたい事が増えたんだ、見てるか?」

≪見てる。死体があんのにヴィクトル達の警備ドローンが機能しねぇんだって? このまま皇帝に通信繋いでやろうか。≫

「いいや、まずはお前の見解と情報も欲しい。報告は後で良い、――いつ警備ドローンに警備除外地域が設定されたのかを調べろ。その指示者も、洗いざらい全部。後、リックに声掛けて西部全域の監視警戒レベルを引き上げてくれ。それで大抵の事は気付くはずだ。」

≪りょーかい。あぁそうそう、先に頼まれた件。多少報告して良いか?≫

「あぁ、構わない。連れは少し離れた所に居るからな。」

≪……何かあいつ、死体触ってね?≫

「意外に鋭いらしいからな、少し様子を見る事にした。」

≪ん、りょーかい。イリスが良いなら良いや。で、報告だけど……まず、あいつの兄貴は機動隊隊長のカイル・アルヴェルトで間違いなさそうだ。結構優秀みたいだぞー。警官として就任してからたった半年で隊長に上り詰めたんだってさ。≫

「なかなか規格外だな。」

≪しかも、身内に政治家やら軍人やら結構大人しくないタイプだな。まぁ、その行動の割には明るくて朗らかな性格の奴ばっかで、割と名門貴族並みの中流家庭。今回の件もあるし、イリスが良いなら貴族に昇格させてやっても良いんじゃねぇか? 大分優秀だぞ、この家紋。≫

「考えとく。」

≪次、今居る西部だけど……イリスが睨んだ通り、変死体の発見率も結構高ぇな。何ならそこから各地に繋がる川の上流にも位置するから、川に投げ込めば割と何処の地域でも死体位置を偽装出来る。実際、これまで他の地域で見つかってる死体は全部その川の近くだ。今は冬だし、川に投げ込みゃあ死亡推定時刻も偽装出来るだろうから、犯人からすれば一石二鳥って訳だ。≫

「頭は回るみたいだな。」

≪まぁ無意識に出来る事ではねぇわな。そこの貴族は……ん?≫

「どうした?」

≪……3家門だけ、だな。いやでも、西部って結構広いし、去年までの記録だと40はくだらない数の貴族連中が居たはず……。あぁでも西部の貴族は軍人系が多かったはずだから、そう簡単にやられるはずも……。まぁでも、しばらく貴族会議に出なくても不思議な連中ではねぇから、もし今回の任務がなけりゃあ怪しまれるのは来月予定されてる帝国会議だな。あれは全ての貴族が招集されて色々話をするタイミングだし、あそこで出席しなかったら反逆罪で奴隷落ちだ。……まぁ、その奴隷落ちさせられるはずの奴がどうなったのかが分かんねぇ訳だが。≫

「一番近い貴族の家の座標を寄越せ。勿論、状態が不明の物を。もし問題がないなら肩書きで押し通す。」

≪了解。俺からシュタール主任経由で訪問連絡入れさせとく、それで拒否るならそれこそ粛清で良いだろ。さて……位置はっと。おっ、ここだ。そこから40mって所だな。アルタル侯爵家だ。相変わらず無駄にでっけぇ敷地だなぁ。≫

「随分大物も、か。面白くなってきた。」

≪気を付けろよ、イリス。≫

「誰の心配をしているんだ、お前は。」


 ……さて。


「……アルヴェルト。お前はその死体で何をしている?」

「あ、その……。はは。実は、解剖をしてまして……。」


 解剖。……かい、ぼう?


「……え、装備は。」

「ここに。とは言っても、別に解剖なんてナイフさえあれば簡単に出来ちゃいますけどね。」


 イリスがヨハンと連絡を取っている間に、ノアは謎の死体の解剖をしていたらしい。

 その手には暗務局であれば誰でも持っているような黒い手袋と。細い必要があれば簡単に圧し折れるナイフ。たったそれだけの装備で、この男は目の前の死体を解剖して見せたと言う。

 その肩口から軽く死体を覗き込めば、いつの間にか綺麗にシャツが開かれて鎖骨からへその辺りまでが綺麗に捌かれ、中にある内臓が綺麗に見えている。それだけに飽き足らず、縫合技術にも優れているのか開いた肉が勝手に閉じないよう、他の場所に縫合して常に手で押さえておく必要がないようにも固定しているらしい。


 全く、知れば知る程に面白いなお前は。


「……それで、解剖(ばら)して何が分かった。」

「はい、ここ……心臓なんですけど、黒く変色してるんですよ。形状その物も歪になってて、本来人体が抱えられる重さじゃなくなってます。」

「……という事は。」

「はい。この死体も今回の事件に関係してます。」


 最高に面白くなってきたじゃないか。

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