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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~アルヴェルト特務官と新人研修~

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第23話

「ヴィクトル先輩。」

「ん?」

「さっきの……腕の事なんですけど。」

「……何だ、お前も1発入れてぇのか?」

「いえ、そうではなくて。……硬化してた肌が気になって。」

「あぁ……。ほら。」


 リビングから格納庫まで多少距離があるようで、ヴィルヘルムを先頭にノアとヴィクトルが少し離れた後方で続いて歩いていく。それもあって、丁度良いから聞いてみる事にした。

 ヴィクトルも最初こそは警戒したようだったが直ぐに合点が行ったようで……腕が、硬化する。

 最初にイリスの尾を受けた時のように、白銀ともシルバーとも言える肌。光に反射して薄い鉄板のような光沢を見せ、この状態だからと言って決して関節を曲げられないなんて事もないそうで、何度か手を開いたり。閉じたり実演してみせてくれる。


 置き換え……? それとも、そういう膜を生み出してる……?


「これが第1段階。」

「第1段階……? それ以上があるんですか?」

「おう。第2段階がこれ。」


 今度はヴィクトルがヴィルヘルムの蹴りを喰らった時と同じ状態へ変化したようで、さっきまでの鉄板感ではなく、今度は鋼材のような色合いへと変化する。さっきよりも若干の黒錆感があるような……そんな感じだ。

 ヴィクトルの許可を得てちょっと手で掬い上げるように持ってみれば多少の重さもあるらしい。……少なくとも、人体の重さではない。


 置き換え……か。そういう鱗が近いか……?


「今はやらねぇけどもう1段階あってな、そうなると完全に黒になる。」

「え。じゃあ……さっき、ヴィル先輩の蹴りを受けたのは。」

「あれで十分だからだな。」

「ヴィクトル、そこまで話すならいっその事全部話してあげたら良いんじゃないかな。君、ノアの為に敢えて受けただろう。」

「え?」

「俺の戦闘スタイルは基本、屈折。もしも戦場で敵の蹴りを喰らうような場合だったらあんま真正面から受けず、横に流してもう片方の腕で殴ったり、足で蹴ったり、後はまぁ魔法ぶっ放して殴り返すようなカウンター型なんだよ。」

「肉を切らせて骨を断つ。それがヴィクトルの戦闘法なんだけど……彼がカウンターする気じゃなかったのも然り、君にヴィクトルの体質である魔鋼(シュタール)種について教える為でもあったんだよ。」

「お前、教えるというよりは観察して質問して知るタイプだからな。こっちも1やら0から全部説明せずに済んで助かってる。」

「ノア、君は確かにイリスのパートナーとしてこの特務局に来ただろうけど……誰が連れてこようと、全員の後輩である事に間違いはないからね。特に、そういうのを全く選びそうにないイリスが連れてきた以上、皆何だかんだ言いながら君を育てる気で居るんだよ。」

「そだ……てる。」

「特務官ってのは戦い、学び、開発し、そんで以て帝国に更なる繁栄を齎す。……一応、それが帝国の語る特務局だけどよ、特務局当事者の俺らやアルドリックとしては1つのチームって考えてんだ。そんなでかいスケールじゃなくてよ。」

「チーム……ですか?」

「そ、チーム。だから全員協力するし、全員で支える。欠けるとかハブられるとか論外なんだよ。」

「そもそも、特務官である以上で何か欠けてるし、凡人を気取る多数派達に異質だとハブられた身だからね。」

「そんな奴らが俺らに居場所をくれるってんだ、なら何処までもそれを利用して勝手に生存圏作って無視出来ねぇようにしてやろう、ってのが俺ら特務局の考え方。だからここに来た以上、お前もその空気感に慣れてもらわねぇと困る。」

「見た所、これまでの行動や判断的にそこを心配する必要はなさそうだけどね。」

「そだな。気にすんのはチームワークの方だ。」

「良き連携は良き理解から。……得意分野だろう? ノア。」

「ぜ、全力を尽くさせていただきます。」

「期待してるよ。」

「……んで? 確か、今日お前の異種族の体質貰ったんだろ?」

「あ、はい。鮫影(シャークネス)種です。」


 本当に、皇帝陛下も何処からそんな変わった種族達を引っ張り出してくるのか、ノアに与えられたのは鮫影(シャークネス)種と呼ばれる影を泳ぐとされる獣種だ。

 ここでの鮫は鮫の如く速度で動くそのスピードを現した物であって、現存する鮫影(シャークネス)種は決して鮫の形をしていないらしい。どちらかと言えば豹やチーターのような見た目をしているらしく、走っている途中で影に潜って時に戦闘機を超える速度で移動する事もある、非常に厄介な種族なんだとか。

 ノアが暗殺者である事、そして何処までも物事の核心に迫る速度が迅速である事からこの種族をアルヴァリウスはノアに鮫影(シャークネス)の体質を下賜した。


 “僕が君達に与える種は君達の象徴であり体現。これからものびのびと君ららしさを断じて手折られる事なく前へ踏み出す事を恐れないように”……か。まぁ……確かに、特徴は捉えてるけど。


「へぇ。なら俺とはタッグが組めそうだね。」

「そうなんですか?」

「吸血鬼は影の中の移動も出来るし、何ならこいつは自分の体を蝙蝠の大群に変化させて空を飛ぶ事も出来るからな。」

「ちゃんと翼だってあるよ。……まぁ竜人の物には劣るけど、それでも魔導砲程度なら反射させられる。」

「十分過ぎるんですよ。普通にやばいでしょ。」

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