第20話
ゆったりと、気だるげな瞼が静かなベッドの上で持ち上がる。その瞳はまだまだ眠そうで、その瞳に限らずに全身に力が入っていない。
それでも、不思議な程に魔力濃度が高く、高いが故に大気中をキラキラとした物が待っているのに気付いて未だ強い睡魔に後ろ髪を引かれる彼女の瞳が細く、長くなって……ふと、近場にあった通信機を掴んだ。
ぴぴ、ぴぴ、ぴぴ、ぴぴ、ぴ
≪……はい。帝国魔導特務局主任、アルドリック……シュタール。……すまないが、急ぎじゃないなら……後にしてくれないかな。…………まだ早朝だよ。≫
「……りっ、く。」
≪ヴォルカ特務官……? これは、驚いたな……。おはよう、ヴォルカ特務官。とんでもなく朝が弱い君が、こんな時間にどうしたんだい? よくよく聞いてみれば声も何処か違和感が≫
「……たす、けて。」
≪直ぐ向かう。安全な所に居なさい。≫
アルドリックの言う通り、こんな日も登らない時間に目を覚まし、通信機に手を伸ばすなどイリスにとってはかなりの重労働だ。
睡魔と言うよりは酷い倦怠感に苛まれ、その何処か違和感のある身がベッドにより沈む。このまま何処までも落ちていきそうで、支えを認知できな
「ヴォルカ特務官。」
「……りっ、く。」
「……魔力の流れが少し速くなってしまってるね。手を。私が補助しよう。」
ふらふらとアルドリックに伸ばされた手は――小さい。本来であれば丁度良い大きさであるはずの服がぶかぶかと余裕があり過ぎる程で、アルドリックの手にはイリスの手というよりは中身の入っていない袖部分の方が大半を占めている。
そこからイリスを手を見つけ出し、両手でそっと包まれて……魔力を、流し込まれる。本来イリスが体内に保有している魔力とは少し違い、硬く思い魔力。それが、少し呼吸が浅くなりつつも速くなっているイリスの体を巡って魔力と脈拍、呼吸を落ち着かせていく。
「……ヴォルカ特務官。本日よりしばらく、“黑棺”からの外出を君の安全の為、全面禁止とする。――せめて、その幼児化が改善されるまでは。」




