第8話
「ならイリス、少し……俺の我儘に付き合ってもらっても?」
「我儘?」
「今日の朝食中、俺の膝に座ってほしくて。……駄目?」
「……尻尾、邪魔になると思う。」
「君に関する全てが邪魔になるなんて、そんな。」
「……。」
「……。」
「……や。気、散るから。隣なら良い。」
「一度でも考えてくれてありがとう、イリス。じゃあ君の左隣を失礼しても?」
「ん。」
「嬉しいよ。」
「あ、狡い! じゃあ俺、右隣座るから! 良いだろ、イリス!?」
「……? その必死さが若干怖いけど……良いよ。」
「良しっ!」
あれ、もしかして俺と同類……?
口に出せば怒られそうなので決して言語化はしないが、恐らくはヨハンもヴィルヘルムもイリスの何かしらが眩しくて惹かれてる身なんだろう。そうでなければ、ここまであからさまにならない気がする。ヨハンに関しては疑いようもない。
一方、ヴィルヘルムに関しては元よりイリスに膝を貸していたり。イリスを起こした後、さりげなくヨハンの肩から電流を流した右手をイリスの背中に添えて撫でていたのでイリスに対して敬愛しているのは間違いない。
……。
「おはよう、皆。丁度皆揃ってるみたいだね。」
「あ、主任! おはようございます!」
「おはよう~アルドリック! 丁度ね、ノア君にヴィクトルが全員分自己紹介と橋渡ししてくれた所なんだよ!」
「俺の情報は要らねぇだろ。」
「いつもありがとう、ヴィクトル。」
「そう思うならお前が来い。」
「まぁまぁ。代わりに今日は美味しい自家製ビーフシチューを用意してきたから許しておくれ?」
「……。」
「あら可愛い。ヴィクトルぅ~、良かったね。好物でしょ?」
「……うるせぇ。」
「リック、おはよう。」
「おはよう、ヴォルカ特務官。今日は元気そうだね。」
「ん。」
「おはよう、アルドリック。今日だけど俺とイリス、アルヴェルト君の3人でお婆様の街へ行ってくる。」
「幻楼街に? ……まぁ、大丈夫か。うん、楽しんでおいで。」
「おはようございます、シュタール主任。えっと……少し、お伺いしても?」
「おはよう。うん、何かな。」
「今、自家製って……。」
「そうだよ。ここ、特務局では当番制で料理をするからね。今日は私が朝食と夕食の当番なんだ。まぁ、昼食は皆食べる者も居れば食べない者も、仕事の関連でそもそも“黑棺”に居ない者も居るからそこは強制していないんだけれどね。」
……え”。
着任早々、アルドリックの手料理なんてあまりにも贅沢が過ぎる。いや、そうも悠長な事は言っていられない。必然的にノアも何処かのタイミングで調理をしなければならない。
一応、実家で炊事や多忙な両親、兄のカイルに代わって料理をした事はあるが……そんな家庭的な味が爵位持ちの特務官やそれなりに肥えているであろう彼らの舌を満足させられるとは到底思えない。
時間見つけて色々練習しなきゃ……。
「さて、じゃあ何人か配膳を頼めるかな。」
「はいは~い! 僕手伝うよ!」
「エリクスは机拭いとけ。」
「了解っ!」
「じゃあ私は食器運ぼうかなぁ~。」
「お、俺も手伝います……!」




