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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~アルヴェルト特務官と新人研修~

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第6話

「イルメリナとトウマ、エリクスの話はしたから……後はヨハンとヴィルヘルムか。イリスは分かり切ってるだろうし、アルドリックは後から来る……な。うん、来るから後で良いだろ? 後は……アゾートも居るがあいつはまぁ良いか。居ねぇ奴の話をしてもしゃぁねぇ。」

「アゾートさん……?」

特務局(うち)の副主任。ただ……彼は凄く特殊なのよ、そこのエリクス以上に。」

「シュタール卿と話しとる感じだと……シュタール卿は俺ら特務官を。副主任殿はこの“黑棺(ブラックボックス)”その物を管理しとるらしいんやが、俺らもあんま会うた事もなければ喋った事もそない多ない。」

「基本的には何処かにお出掛けしてるよね~。ほんっと、アルヴァリウス皇帝の魔導機械技術って凄いよね!」

「魔導科学な。魔導機械技術じゃねぇ。ありゃあただの副産物であって、メインじゃねぇよ。」

「……?」

「アゾートはな、皇帝陛下が造ったASIなんだよ。」

「え、ASI!? え、ここに来て完全に生物じゃなくなるんですか!?」

「まぁ、生物でも生物というより自然現象みたいなのも居るけどね~。」

「僕の事?」

「貴方以外に誰が居るのよ……。」

「僕的にはアルドリックもまぁまぁ嵐みたいな存在だなぁとは思うよ? その……君達人型知的生命体の言う性格や展開的な話じゃなくてさ、自然現象みたいな物理的な……感じ?」

「……………………まぁ、あいつは桁外れに強ぇし怖い奴だからな。」


 確かに、このアウレリウス帝国の代表的な国力は魔導科学と軍事力、そして全世界にその隣に立つ事を断じて許さない並外れた電脳技術が占めている。

 アウレリウス帝国のエネルギーは永劫に尽きる事を知らないとか。アウレリウス帝国の軍事力は進路上の全てを踏み砕いて切り開く大洪水のような天災であるとか、世界的に常々その名を轟かせる剛毅な国家だ。

 ASIなんていう、AI技術の中で最上位に位置する存在の開発にも成功し、その下位互換であるAGIに関しては民間でも然程珍しくなくなりつつある。……だが、ASIの開発に成功したという話は聞いてもその実物を見た者は軍か皇城関係者にしか居ない事から本当は存在しないんじゃないか、という話だってある。


 実在……してるんだ。しかも、この“黑棺(ブラックボックス)”で。


 もしや、「黑棺(ブラックボックス)」という名はその全てを冠しているのかもしれない。おいそれと世界に見せてはならない物、見せられない物、そして開けると世界を滅ぼしうる何かを鎮めておく為の――鎮魂の棺。決して中が見えてしまわないように黒く染め、決して外に情報を漏らさない。

 そうでなければこの「黑棺(ブラックボックス)」の存在その物が軍関係者か皇城関係者しか把握していなかったり。「黑棺(ブラックボックス)」に窓1つ存在しない事に対する説明がつかない。


 そこに俺も収められる事になったって事は……俺はこれから、世界の知らない世界を知る事になるんだ。この国だけの、ここだけの当たり前の超常的な世界を。


「んじゃ、ヨハンとヴィル、ヘルム……。」

「ヴィクトル? どうし……あぁ~……。」

「……はぁ。あの3人は狼と言うべきか、それとも蝙蝠と呼ぶべきか悩む所じゃな。」

「ん~……。夜型の皆にはやっぱりこの時間って厳しいのかなぁ?」


 健気にもヴィクトルがノアと他の特務官達との橋渡しを行う中、存在ごとごっそり成りを潜めていたイリス達は……一応、リビングには居る。

 ノア達の居るリビングの入口から対角線上、リビング奥にあるキッチンへと通ずる扉周辺にある大きく広いL字型のソファにて、眠り込む3人が。

 L字型の丁度直角に曲がっている所から真っ直ぐ伸びるエリアでやたらと長い足を延ばし、腕を組んで眠るトレンチコートのような黒い軍服コートに身を包んだ、青白い肌が特徴的な黒髪の男。

 その男の膝に手を掛け、膝も自分の手も枕にして眠っているイリス。そして、その2人の中央を陣取るように、床に座り込んで先の2人が眠るソファにもたれながらも、イリス同様に腕を組んで眠る男の長い足に少し頭を傾けるようにして眠るヨハンが。


 ……熟睡じゃないですか、皆さん。まだ7時ですよ? 寝落ちには早過ぎません?


「……はぁ。ノア、あそこの床で寝てんのがヨハン、ヨハン・リヒターな。この帝国の電脳技術は皇帝陛下が造ったもんを除くと、ほぼ全部あいつが作ってる。」

「は、え、ちょ、ちょっと待ってください?」

「んで、そこのやたらスタイルの良い奴がヴィルヘルム・ローゼン。特務局(うち)でも珍しい爵位持ちで、感染症学を始めとする微生物学、免疫学、疫学と死霊魔導学の第一人者な。特務局(うち)の研究畑筆頭。」

「いやマジでちょっと待ってください……!!?」


 そんな実力者の中の実力者が、リビングの端っこにあるソファで仲良く雑魚寝ですか!!?


 彼らも人だ、それぐらいはしていてもおかしくはないだろう。ただ、そんな人達があんな狭い空間で一塊になっている事がどれだけ以上なのかはわざわざ説明するまでもない。

 それでも当事者達はその眠りを邪魔する物もなく、互いの体温で丁度良い睡眠環境が既に出来上がってしまっているのだろう。誰1人して、起きそうな気配はまるでない。


 マジで普通の人が居ねぇ……!!


「……俺、本当に特務官で良いんですか? 人選間違ってません?」

「歓迎するぜ、ノア。一緒に普通ってのが何なのか研究でもすっかぁ?」

「秒で撃ち落とされて死体撃ちされてもまだ死に落ち続けるような形骸化し過ぎて骨も残らない概念は誕生する事すら出来ないと思いますぅ……!!」

「因みにね、ノア君。この帝国のエネルギーはほぼ全部エリクスが開発した物なんだよ?」

「僕、こう見えて凄いんだからね!」

「いやもうあんたら何取っても凄いでしょうがっ……!!」

「……可哀想に、キャパオーバーしとるな。」

「……ノア。こんなもんで驚いてたら身が保たねぇぞ、さっさと慣れとけ。」

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