第24話
「《アステリオン》、先……帰っといて。」
【プロトコル、承認。自動走行システム及び自動目的地検出システムを起動。目的地……帝国魔導特務局研究所“黑棺”にセット完了。お疲れ様でした。またお呼びいただける時を楽しみにしています。】
「ん。」
「あれ……帰らせちゃうんですか?」
「ぅん。……ノア、中で大事な話がある。」
「は、はい。」
目的地である例の飲食店近辺で《アステリオン》から降り、先に帰らせて自分の足で歩く。正直色々と悩んだが、きっとこの方が良い。幸い、アルドリックはすんなりOKしてくれて、アルヴァリウスもあっけないぐらい簡単にあれを用意してくれた。なら……十分だろう。
イリスが少し焚きつけたのもあり、緊張した様子で無言を貫くノアが着いてきて、それと比例して目的地がどんどん近くなる。……その店の前で、腕を組みながら店の壁に寄りかかってイリス達を待っている男と目が合った。
黒錆と呼ぶに相応しい、何処か特徴的な黒髪に群青色の瞳。街に不釣り合いな程に広い肩幅を有している癖に、街を歩く度の人よりも身長の高い巨漢で相変わらず軍人のようなコートなのか上着なのか分からない服を着た、体格だけでなくてコーディネートまでいかつい男――ヴィクトル・アイゼンベルクだ。
「ヴィク。」
「よぉ、イリス。……正直驚いたぞ。お陰でお前とアルドリックに伝書鳩扱いされてたのが頭に来ないぐらいによ。」
「……? 誤解。別に私はヴィク指定してない。」
「成程……? じゃあ後であいつに文句言ってくるか。」
「でも、ある意味丁度良かった。」
「何でだよ。」
「ここ、ヴィクとリックの馴染みが運営してる店だから。……後で教えようと思ってた。」
「俺とアルドリックの……?」
「……も、もしかして、アイゼンベルク特務官殿、ですか?」
「ん? あぁ、お前か。イリスのバディってのは。そ、ヴィクトル・アイゼンベルク。別に俺はこいつ程非情じゃねぇぞ。」
「ヴィク、あまり生意気言うと奢らせる。」
「残念、アルドリックから幾らか貰ってんだよ。お前の頼まれ事と一緒にな。」
「え。」
「……とりあえず中入んぞ。いつまでも入口でぐだぐだやってたら店に迷惑だ。」
「ん。」
「ほら、お前も。」
「は、はいっ! ……お先に、お邪魔しますっ!」
どうやら先にアルドリックが根回ししていたらしい。またしても店内は貸し切りになってはいるが店主がヴィクトルを見て豆鉄砲を打たれた鳩のような顔をして。ヴィクトルも、店主を見て大きく目を見開いているのでアルドリックはちゃんと説明してなかったらしい。相変わらずだ。
とりあえず、誰も居ない店内の真ん中にある椅子に座り。ヴィクトルと店主を交互に見ながらも恐る恐るノアが椅子に座り、ヴィクトルもイリスの隣に座る。
「……おい。」
「私も今日、朝確信した。……ヴィクと一緒。アルドリックの部下でしょ、あの人。」
「…………副隊長様だよ。」
「……まさかまた君の顔が見れるとは思っていなかったよ、ヴィク坊。」
「それはこっちも一緒だよ、ズィルバー元副隊長。こんなとこで……しかも、まだやっぱり生きてやがったのか。」
「それはお互い様さ、ヴィク坊。しかし……そう、か。ならやはり、此方のお嬢さんはヴォルカ特務官だったんだな。」
「……今度、アルドリックにも来いって言っとく。」
「心から楽しみにしております。それでは……皆様、宜しければオーダーをいただければ。」
「これ。」
「……じゃあ、俺はこれで。」
「お、俺はこれでお願いします!」
「承りました。しばしお待ちくださいませ。」
「……ヴィク。あの人、ズィルバー……何?」
「ズィルバー・シュトゥルム。俺が所属してた黑薙隊がまだ現役だった頃、アルドリックの隣に唯一立てたもう1人のバケモンだよ。」
「……強い?」
「知るのが怖いぐらいにな。」
「そう。」




