表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と違法種族転化~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/36

第20話

「イリスさん、これどうぞ。」


 ……?


 さぁ、この通路の奥へとイリスが体を向け直そうとした所でノアから差し出される、つい先程そこに転がっているハイス種の首を弾き飛ばした、非常に切れ味の良いスラッシャー。その、左手に持っていた方を差し出される。

 あまりの脈略のない行動にこてん、と首が傾げられ。またしばらくして、今度は柔軟に反対側へと首を傾げ直す。


「……行動の意図が分からない。何を求めてる?」

「これ、この武器使ってください。敵は魔力に関連する武器を弾くと、先程仰ってましたよね。イリスさんの……平常時は指輪になってるその武器、構造的に魔導武器だと思うんで俺のレッ君使ってください。」


 ……。


「レ……?」

「はいっ! レッ君です!」

「……何故レッ君。音階?」

「いえ、レフトのレッ君です! こっちは右手用なのでライトのラッ君です!」


 やはり、何かしらの突出した能力を持つ者は壊滅的に頭のねじがごっそり抜けるように能力積載可能限界が定められているらしい。これはまた、随分なイカレ具合だ。

 しかし、言っている事自体は間違っていない。……選択した事は間違っているが。

 イリスの性格的、そして習慣的にそのつもりがなくてもうっかり《ノクス》を起動してしまい、先のハイス種のように魔力を含有している武器ではまともに戦えない可能性がある。それで命に関わるなんて、あまりにも笑えない。


 ……とりあえず。


「……要らない。」

「え。でも、それだと」

「そんなかっこよくない名前の武器、持ちたくない。」

「ひ、酷い……。別に武器はかっこいい名前だからって良い訳じゃないですよ? やっぱり呼び易い名前じゃないと!」

「《ノクス》と《アステリオン》で良い。」

【お呼びでしょうか、管理者イリス・ヴォルカ。】

「呼んでない、待機。」

【プロトコル、承認。待機モード及び周囲警戒モードへ移行……完了。】

「レッ君とラッ君も良いですよ?」

「……勘弁して。」

「呼び易いのに……。」


 ふと持ち上げられたイリスの腕が何もない虚空へと伸ばされ、――水面に触れる。

 本来であれば何もないはずの虚空に現れた空間の水面に指が触れ、そのまま水の中に触れるようにイリスの指が、手が、手首が呑まれる。だからと言ってそこから血が流れるような事はなく、何かを掴んだような動作の後に少しずつ虚空の水面から腕が引き抜かれる。

 その手に握られていたのは……軍属警備員が持つような太く中身の見えない瓶。深い群青色の、カイロウドウケツ状に加工された切子瓶で蓋の接続部分はゴム製の物で出来ているがそれ以外は硝子で構成された随分とデザインに拘られたそれが握られている。


「それは……?」

「側はただの飾り。必要なのは……中身。」


 ぽんっ、と気持ちの良い音を立てて蓋が開けられるも無臭。大きく開けられた黒い手袋をしたイリスの左手の上に零れるように瓶が傾けられ、銀のような白い光沢を放つ液体のような物が顔を出す。

 イリスの掌へと着地し、次第に収まり切れなくなったそれが手から零れる――事はなかった。

 その掌の上で球体へと形状を変化させ、液体の量が増えたとしてもそれは変わらない。瓶の中身が全て掌に収まる頃にはもう戦車の砲丸並みの大きさを誇る球体へと変わっており、中が空になった瓶はまた虚空の水面の中へと戻された。


「……え。液体が固体になった。」

「水銀性無形兵装 《アイテール》。」

「す、水銀!? いやでも、水銀って別にこんな人体を検知して球体に変化するような機能はなかったような……。」

「そうだけど。」

「へ?」

「《アイテール》は生きてるから。」


 イリスに名前を呼ばれた事を理解しているかのように、球体がくねくねと上に伸び、球体から細長い螺旋状へと変形後……ぽとん、と突然支えを失ったかのように墜落する。

 それでまた液体に戻るような事もなく、先が顔のような物に変形する。本物の蛇のようにしゅるしゅると舌を鳴らし、イリスを視認。その後、ノアも視認した後にまたイリスの方へと向き直る。


 問題なさそうだな。


「《アイテール》、出番だ。超電磁砲(レールガン)拳銃へ変形して。」


 発声機能が存在しない、本来であれば液状であるはずの《アイテール》は無言でイリスの命令を受諾し、一度球体へと戻った後に徐々に形状が変化し、少し長く銃床が広く分厚く、銃身はスマホのような電子端末の1.5倍程を誇る形を取る。

 形状を確定させた《アイテール》はその身に色を宿す。持ち手は黒くなり、その他の場所はほぼ全てが黒錆のような角度によってキラキラと輝く銃へと変化する。先程まではただの水銀だったその銃身にはバチバチとプラズマのような物が常に発生しており、外殻の中で銃身の根元から銃口へと何度もプラズマが移動してはまた発生して移動しを繰り返している。


 久しぶりだな、《アイテール》。あんまり魔法が使えない環境での戦闘が少ない所為で、長く眠らせていてごめん。


「……かっこいい。これもイリスさんが?」

「そう。これと対になってる《エレボス》も居て、あっちは銃身が黒で持ち手が白。あっちも変形させるから移動ちょっと待って。」

「は、はい。それは……あれ、ですか? 魔法じゃなくてプラズマをエネルギー源として機能するんですか?」

「そう。大気中のプラズマを収集して圧縮し、そこから更にプラズマを何度も衝突させて《アステリオン》並みの破壊力を誇る超電磁砲(レールガン)にしてる。でもそれは《アイテール》の話で、《エレボス》に関しては空気を圧縮して更に加圧し、同じく《アステリオン》並みの破壊力を誇る全てを切り裂く黒い風で出来た風烈弾(ふうれつだん)を撃ち出す。本当は……黒い風じゃなくても良いけど、圧縮する過程で黒くなっちゃう。」

「…………大口径どころかビームとかミサイルレベルって事ですか?」

「そう。」

「……やっぱり本人が超兵器過ぎるからその武器も超兵器しかないんですか?」

「……? どういう意味?」

「いえ、別に……。」

「……………………?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ